Kaoru

会社員の日々の合間、こうありたいと思う存在を小説にしています。

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  • 読書感想文

    印象の良い本は感想を書いています。ここで公開していきます。

  • 消え失せる前に。

  • 小説

    青春もの、オカルティックなもの、山岳ものなどなどの小説を書いています。

最近の記事

「般若心経」佐々木閑

これも「NHK 100分de名著ブックス」シリーズの一冊、再読。 「般若心経」は大乗仏教が広がり始めた最初期(紀元前後)のお経であり、厳密にいうと釈迦の説いた思想の通りの内容ではありません。 というより、釈迦の思想を否定、超越した教えなのです。 筋立ては他の大部分の経典のように物語調となっています。 釈迦十大弟子の一人、舎利弗に「釈迦の教えは違っている」と観自在菩薩が説く内容になっています。 しかも、二人の会話の後ろでは釈迦が瞑想しているらしいという設定。 ポイントは、

    • 「真理の言葉 ブッダ」佐々木閑

      原始経典「クッダカ・ニカーヤ」のひとつ「ダンマパダ(法句経)」を元に大乗仏教以前の仏教についての思想を解説するNHK「100分de名著」シリーズの一冊。ちょっと押さえておこうと思い、さらっと読む。 「一切皆苦」「諸行無常」「諸法無我」「涅槃寂静」や「四諦」「八正道」についての説明。 要するに釈迦の時代、煩悩による自分の苦しみを解くには出家して瞑想する方法しかなかったのである。 これでは出家できない在家の信者は救われない。そのため大乗仏教が生まれることになる。 ……そのこ

      • 小澤征爾×村上春樹「小澤征爾さんと、音楽について話をする」

        2024年2月6日、小澤征爾さんがお亡くなりになられました。 世界のクラシック音楽界に偉大な業績を残された稀代のマエストロ、小澤征爾さん。 僕もこの方の音楽やその生き様、そして人格に大いに魅せられたたくさんの人の一人であり、そのご逝去はとても信じられるものではありません。 訃報のニュースをネットで読み漁り、マエストロの作品を聴き、そして、この本を手にしました。 この本は、小澤さんが食道がんの治療をし、そのリハビリのために仕事をキャンセルしていた時期から始まった村上さんとの対

        • 津原泰水「綺譚集」

          初めて読んだ津原泰水の作品は「五色の舟」(『11eleven』所収)であり、これは漫画(近藤ようこ作画、第18回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門大賞)にもなっており、それも読んでいます。 「五色の舟」を知ったのは、「件」(くだん、人の顔をした牛、予言をする)について調べていた時だと思います(「五色の舟」は見せ物小屋のフリークスたちが件を探すストーリーです)。 読後、その作風に圧倒され、他の作品も読みたくなっていました。 最近、思い出したのでこの初期の短編集を読んでみました

        「般若心経」佐々木閑

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          39本
        • 2本
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          10本

        記事

          中島敦「光と風と夢」

          奇数章が、小説「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」などを著したロバート・ルイス・スティーブンソンと彼にまつわる叙述であり、偶数章がサモア在中のスティーブンソンによる日記となっている。趣向を凝らした構成である。 僕には読み進めるまで、この構成に気が付かなかった。あまつさえ、話が行ったり止まったりするので読みにくいとすら感じでいた、 読む前にはこの作品が、中島敦の南洋時代の生活を素材にした「爽やかな青春物語」を期待していたのだけど、全然違っていた。 おまけに、何を描こうとして

          中島敦「光と風と夢」

          「魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く」奥野修司

          スピリチュアル、オカルト好きの趣味で選んだ本。その趣味を満足させる話が満載しており、やはり霊魂は存在すると信じるに足ると改めて感じ入りました。 ……亡くなってから自宅の写真を撮ったら、ガラス窓にぼんやりと亡くなった息子が写っていた。 ……亡くなった兄からメールが届いた(その後、受信欄から消えてしまう)。 ……見つかっていない、かかるはずのない叔父の携帯に電話したら、死んだはずの叔父の返事が聞こえた。すぐに切ったが、二度目は繋がらなかった。 ……亡くなった長男の好きだっ

          「魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く」奥野修司

          三上延「同潤会代官山アパートメント」

          とても良い小説でした。 作者の優しい文章がとても似つかわしいストーリーでした。 最後にはうるっと来てしまいました。 代官山アパートにおける、八重という女性から始まる四代にわたる一家の物語です。 八重と、関東大震災で亡くした彼女の妹愛子の元フィアンセである竹井光生との新婚生活が新築の代官山アパートで始まります。 それから時系列に代々の家族の姿が描かれていきます。 それぞれの掌編(八編あります)は史実に則って書かれています(巻末に記された参考資料が膨大)が、この史実は背景に

          三上延「同潤会代官山アパートメント」

          MONKEY vol.25「湿地の一ダース」

          日本語では一字で表せても、英語だと何十種類で表さないといけない言葉があります(日本語でも同じですね)。 「馬車」という言葉は英語だと何十種類もあるそうです。 ジェーン・オースティンは小説で「馬車」の表現の使い分けによって人格や貧富の差を表現するということを行なっているようです。 「湿地」も英語には数種類あって同じとのことです(その種類ごとの解説も載ってました)。 ならば、「湿地」についても「馬車」同様に、それらを用いてさまざまな表現をした小説があるのではないかと考え、今

          MONKEY vol.25「湿地の一ダース」

          ポール・オースター「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」

           クリスマスの人情ものが好きで機会があれば読み、良い物は蔵書にしてます。  オー・ヘンリー、ディケンズ、カポーティ、村上春樹などなど。  柴田元幸さん訳のこの作品を「MONKEY」で見つけたので、買ってみました。  短編1作だけの本です。正方形でタダ・ジュン氏の個性的な版画が挿画になっており、クリスマスプレゼントにぴったりな作りになっています。  ストーリーの前半はオースターの作品によくあるように、主人公はNY在住の小説家、その彼がオーギー・レンというタバコ店の販売員と

          ポール・オースター「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」

          トルーマン・カポーティ「ここから世界が始まる トルーマン・カポーティ初期短編集」

          著者の十代後半から二十代前半にかけての掌編集。 習作のアーカイブから良いものを選び出し、2019年にアメリカで出版されている。 巻末の「編集後記」「作品解題」「訳者あとがき」などにも記されているけど、アンファン・テリブル(恐るべき子ども)の誉れの通り、この若さで設定、プロット、テーマのどれをとってもアマチュアとは思えないレベルにある(プロさえ凌ぐほどの出来映えである)。 僕にはバラエティ豊かな設定に驚かされてしまう。 女子学生、黒人メイド、困窮した白人老婆、有閑マダム、脱

          トルーマン・カポーティ「ここから世界が始まる トルーマン・カポーティ初期短編集」

          ダブル

          コーヒーは好き。 深煎りの濃いものを好むので、よくエスプレッソを飲む。 しかも、ダブル。 今朝、駅伝練習の前に時間があったので名古屋駅地下のDOUTORでエスプレッソを飲んだ。 もちろん、ダブル。 ところで、ダブルを飲む時は必ずシュガーを入れる。 すぐには混ぜない。しばらくそのままで飲む。 今日は何キロ走れるだろうか? ペースは遅れずに行けるだろうか? などと考えながら飲む。 スマホなんか見ない。 コーヒータイムは神聖な時間。 エスプレッソがカップの半分以下になったら

          ダブル

          空海「三教指帰」

          空海が初めて著した書。三教、つまり儒教、道教、仏教のどれが一番正しいのかについて、それぞれの教えを説くものを登場させた小説風な書。 結論としては仏教が最も正しい教えであると結論づける。 漢学の素養豊富な空海であるため、そこからの引用が山盛りである。 何故読みたかったかというと、数年前に僕も参加して走った高野山金剛峯寺までのトレイルランニングレースのコースである「Kobo Trail」がまさに空海の歩いた道であり、そのゴールである高野山が彼が教えを説く道場に相応しい場所である

          空海「三教指帰」

          中村天風「盛大な人生」

          昭和30年代〜40年代にかけての天風会会員に対する講演録。上等な紙質、函入布張で90年に出版されているがなんと10,100円。金満会員が多いから吹っかけている。 またしてもきっかけは忘れたが、たまには読んでみるか、と馬鹿にしていた政治家や有名実業家の師である天風の本を選んだ。 講演録で1万円とは恐れ入る。文章は偉そうで自慢めいているし、会員を馬鹿にしている口ぶり。 この著者、実は前半生があやしい。明治9年の生まれ。 頭山満という右翼の親玉に弟子入りし、日露戦争当時は軍事探

          中村天風「盛大な人生」

          シュテファン・ツヴァイク「チェスの話」

          facebookの宣伝で第二次世界大戦中のドイツだかオーストリアを舞台にしたチェスの映画がよく出てきます。ドイツ語圏のファンである私はその宣伝、というかトレーラーをしっかり見てみました。 すると、この映画はツヴァイクの小説を原作にしていると知りました。調べてみるとこれは「チェスの話」という小説でした。 面白そうだったので早速、図書館から借りできました。 『チェスの話』(SCHACHNOVELLE UND ANDERE)という短編集。 早速、表題作を読みます。 ニューヨー

          シュテファン・ツヴァイク「チェスの話」

          ジャック・ケルアック「オン・ザ・ロード」

          第二次大戦後における主人公サル(バドール)・パラダイスによる四度にわたるアメリカ大陸横断・縦断の旅行の記録です。 そして、ビートニクの記念碑ともなる作品です。 本人の体験に基づく作品とのことであるため、出てくる登場人物も実在者だそうです。 記録というのもおこがましくて、旅で起こった出来事の羅列ですね。 でも、それなりに大枠的ストーリーはあって、そもそもはサルの青春時代のドタバタ的通過儀礼の話なのです。 それから、旅行の記録と言うより、サル自身ばかりではなく彼の友人たち

          ジャック・ケルアック「オン・ザ・ロード」

          「今日もコーヒーを淹れて」mocha

          Vlogger mochaさんによるエッセイ。 紹介され、見たVlogがあまりに素敵だったので本も読んでみました。 著者が沖縄に移り住み、パン作りをYouTubeにアップしてます。いくつかは僕もそこから学び(下手なレシピ本よりわかりやすい)、手の内にさせてもらいました。沖縄の風物のことも書かれてあったりして、隠れ家的な喜びを感じました。 さてこの著者、口はばったいのですが、僕と似たような考えを持っていて少し驚きました。 その理由も色々ありますが、とりあえず三つほど記してお

          「今日もコーヒーを淹れて」mocha