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異世界転生する前に読んでよかった「世界史を動かした思想家たちの格闘」茂木誠 著

奥付を見たら2015年初版とあって、積読もいいところです。
一応読もうとはしていたみたいで、帯とかカバーはスレが目立ちました。9月に引っ越しをしたので、そのおかげで本棚に埋まっていた本が段ボールを経て、新たに本棚に差し込まれた際に古い本が前面に出るみたいな現象が起きためやっと読むことができました。
タイトルには「4日間集中講座」と冒頭につくのですが、本当に4日かかりました。
4講座に分けて1日目は「法と正義」、2日目は「戦争と平和」、3日目は「理性と感情」、4日目は『わたし』と世界」という構成。
世界史を順に網羅しているというよりは、その都度テーマの合わせて通史していくイメージですね。

異世界転生したら勝つる

異世界転生ものは男性がハーレム築く要素が多いので、逆ハー狙いで悪役令嬢ものを読むことが多いのですが、これを読んでおけば男性向け異世界に転生しても大丈夫。
女性向け異世界・ゲーム転生系はどうしても結局可愛げがものを言うので実際に転生するなら男性向けと兼ねてより考えていた私にとってとてもためになる本でした。
いわゆるナーロッパは騎士や勇者とい戦いのプロがいて、君主がいる近世手前の中世と聞いて思い浮かべる世界です。

ここに私は「国民軍」という概念をぶち込んでナポレオンになれるわけです。

フランス革命は身分制を撤廃し、「フランス人」意識を作り上げたのです。そしてこのフランス国民軍を率いたのだ天才ナポレオンでしたから、フランス軍は無敵でした。傭兵に頼り、ゲームのような戦いをしていた絶対君主たちは、次々に敗北していきました。

引用して気がついたけど、天才ではないのでナポレオンになるのは無理か……。
でも国民軍という発想すらない転生先でこの知識は無駄にはならないのですよ。
ナーロッパに革命をもたらせると思うとワクワクしませんか。

戦国時代にタイムスリップしたら

あとよくある転生ないしタイムスリップといえば戦国時代です。
ここでの活躍はかなりハードルが高い。「戦国小町」みたいにうまく立ち回れる気がしない……。
でもいずれ来たる海外勢力に対して日本の文明力とか文化力の高さを歴史上以上に見せつけることで歴史が変わる気がするんですよね。
とはいえ、本書で日本、というかアジア?の弱さに気付かされました。

ただし、キリスト教は理性の発達を妨害しただけではありません。「唯一の神が全宇宙を創った」という信仰から、神が定めた全宇宙を貫く法則を知りたい、という知的欲求が生まれ、近代科学のベースを作ったのです。この点、高度な文明を築いたインドや中国、日本で自然科学上の発見や理論の構築がほとんど見られなかったことと対照的です。自然と共に生きる多神教文明では、自然のベールを暴こうという欲求が生まれないのです。

はっとしました。
ヨーロッパ発達しすぎでは??と兼ねてより思っていましたが、その原動力が信仰心っていうのは現代日本人的信仰しか持っていない私には衝撃的でした。
神が定めた法則を知りたいって発想はすごいわ。
何となくだけど私の祖先は雨が降っても風が吹いても受け入れていそう……。ケセラセラって言ってそう。
戦国時代に転生などした暁には自然科学を発展させる方法を考えないといけませんね。

ていうか宝塚観劇にこの本必須だったのでは?

まだ記憶に新しい望海さん退団公演「fff」はベートーヴェンを主人公にナポレオン、ゲーテとの交流と歴史の渦に飲み込まれ歓喜の歌を作り出すまでを共に寄り添う謎の女が見つめる物語。終盤、ニュータイプが通じ合うようにベートーヴェンとナポレオンがロシアの大地で心を通わせあうシーンがあって、ベートーヴェンが何の本が好きか尋ねるとナポレオンが「カント!」って答えるんです。
それに対してベートーヴェンは「俺も!」って応じるんで、センスまで同じでさぞ嬉しいでしょうね、涙、と泣いてましたけどカントを知ってたらもっと熱い思いでこのシーン見られたのかと思うと悔しくて悔しくて。

一方、各国が条約を結び、国家主権を超えた超国家的な統合を実現すれば、永久平和も可能だ、と考えたのが、プロイセンの哲学者カントでした。

ヨーロッパ連合を作るのだとゲーテに語るシーンは伏線だったのですね……カントのことをカケラでも知っていたらさらにグッときたと思うと悔しい……無知の無知って嫌だわ……。
さすが京大文学部フランス文学専攻の上田先生の演出ですわ。
きっと世界史に明るいともっと面白いんだろうなと歯痒く、読書はこうして私を成長させるんだと噛み締めることになりました。想定外。

宝塚歌劇はフランス革命・古代・世界恐慌らへんをよくやるので自然と身につくかと思いきや受け身のエンタメ享受姿勢では全然だめと思い知らされました。

読書中からずっと

駿台予備校の先生の本を読んでいるという認識のせいかもしれないけれど、1ページ目からずっと高校2年生の移動教室で世界史Aを受けてた自分がオーバーラップしてセンチメンタルな気分でした。
「コモン・ロー」「バラ戦争」「ピューリタン」「ジョン・ロック」「三部会」「モンテスキュー」「ホッブス」「ルソー」「社会契約論」などなど教室で聞いたな(聞いただけ)という単語を目にするたび、受験で使わないからと古文漢文英語その他の内職をしている頭上をこれらの単語が通りすぎていく授業の様を思い出して、桜井先生ごめんなさいという自責の念に苛まれつつ読みました。
勉強に無駄はなかったのに、若いってバカだな……。

10年後か20年後の自分が今の私に本くらい読んでおけばよかったのにと回顧しないで済むように今日も明日も少しずつ読書していきます。

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