【読書】12月に読んだ本 6冊
今年はもう読了できなさそうなので、ちょっと早めですが12月に読んだ本のまとめをやっておきます。
やっぱり高瀬隼子さん大好き、となった12月。
今だけのあの子 / 芦沢央
女同士の友情を描いた短編ミステリ集。親友だと思っていた人から結婚式の招待状が届かない、ママ友とうまくいかない、夢を共有していた友人が冷たくなった…など。世の中の人間関係は、本当のことをちゃんと伝えていればこんなふうに拗れることはなかったのにな…っていうことだらけなんだと思う。わかりあう努力をするか、諦めるか。本当のことを知るには労力がいる。疎遠になってしまった人のことを思い出すような本だった。
火車 / 宮部みゆき
構成がとても緻密で読みながら感心させられるばかりだった。30年前の作品ではあるけれど、没頭し、クライマックスが近づいていくにつれ、ページを捲る手がじんわり汗ばむ感覚。
ほんのわずかな綻びだったはずなのに、気がついて振り返ったときには、もう誰の姿も見えなくなっていたかのような切なさ。人の人生を狂わせるものというのは、いつの時代も何も特別なことじゃないのだと実感する。苦しい現実と向き合うオアシスかのように、謎を解き明かす側の登場人物たちがみんないい人で人間らしくてホッとした。
恋愛の発酵と腐敗について / 錦見映理子
発酵と腐敗は紙一重。パンがちょっとの塩梅でおいしくもまずくもなるように、恋愛もタイミングなのである。一見どろりとした恋愛のお話のようだけど。シスターフッドのお話のようでもあり。虎之介みたいな男と付き合おうとは思わないけど、虎之介が疲れた女を発酵させていく妙な魅力があるのはよく分かった。最後まで読んで思ったのは、女ともだちってやっぱいいなってこと。
ルビンの壺が割れた / 宿野かほる
サクッと読めて嫌な気持ちになる小説(褒めてます)。
水谷と未帆子の間で交わされる、Facebookのメッセージを使った往復書簡のように続いていく会話の中で、少しずつ過去の真実が明らかになっていく。水谷が返事を待ちきれずに追いメッセージをしてしまうのが気持ち悪いし、何より彼の文面がずっと不気味だった。書影もいいし帯もめちゃめちゃ煽ってくるからヒットするのは分かる気がするけど、これが大どんでん返しかと言われたらちょっと疑問ではあるし、解説にもあったけれどジャンルが難しい小説。エンタメとして楽しめた。
許されようとは思いません / 芦沢央
取り返しのつくミスを隠したいがために取り返しのつかないことになっていく「目撃者はいなかった」がいたたまれ無さすぎて、なかなか読む手が進まなかった。そのくらい嫌な冷や汗感がリアルでこちらまで冷や汗が出そうになる描写はさすが。「姉のように」の主人公の苦しみがとてもつらくて、子供に手をあげてしまう人の中にはこんな風に八方塞がりで孤独を抱えている人もいるのかと思ったら、一概に彼らを責められないと思った。最近朝日新聞に寄せられていた金原ひとみさんのエッセイを思い出した。
うるさいこの音の全部 / 高瀬隼子
最初から最後まで息苦しくてさすがとしか言いようがない。最後の最後はもう苦しくて溺れそうだった。朝陽のような人が身近にいたら、わたしも「なんか言ってやりたい」って思うかもしれない。意地悪な気持ちの方で。控えめにしているけど朝陽の中から透けて見える意志みたいなものが、人をイラつかせるのだろうと思った。朝陽の混乱に伴い作中作もいろんな方向へ舵を切っていくという構成が面白く、斬新だった。これほど小説内で小説の中のことは自分じゃないって言ってるのに高瀬さんが兼業小説家で芥川賞作家であるという事実もまたシニカル。
2024年1月に続く。
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