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コロナ禍と新事業開発(HIBIKUのこと④)

こんにちは、ビジネス書編集者の米津香保里です。

前回の記事では、新規事業に専念するため本づくりから離れたことを書きました。
こうしてやっとHIBIKUの開発に集中する体制が整った矢先に突如襲ってきたのが、新型コロナウイルスです…><

先の見えない自粛生活

2020年春。
ダイヤモンド・プリンセス号から始まったコロナは感染範囲を徐々に拡大させ、瞬く間に日本中をコロナ一色に変えてしまいました。
4月には最初の緊急事態宣言が発表され、スターダイバーもリモートワークに切り替えることに。

ーー新規事業なんてやっている場合か? 
ーーこれまで実績を積み重ねてきた本づくりで、コツコツ売り上げを立てていくべきではないか?

部下・重田の「私がやります!」宣言を聞いて勇気をもらったものの、日増しに緊迫度を増していく世の中に、地面が揺らぐような不安が込み上げてきました。

この頃、新規事業のビジネスモデルは少しずつ固まってきていました。

事業の核となるコンテンツは「メッセージブック」。
ビジネス書編集者のスキルで、中小企業の社長さんの経営理念や会社の軌跡を掘り起こし、ストーリーにする。その象徴的なコンテンツとして、一冊のメッセージブックを作ろうと考えたのです。
知り合いの社長さんたちにもこのアイデアをぶつけ、さまざまな意見をいただいていました。

そんな中でのコロナ禍…。
新規事業で失敗したら、会社として立ち直れないかも……。

この頃の私は、次第に先の見えない世の中で新規事業を始めるなんて失敗するに決まっている、とすら考えるようになっていました。

80歳の大学生の言葉

「新しいことは諦めて、少しずつシフトダウンしていく道もあるかもしれない…」

そんな弱気モードになっている私を、知人がオンライン飲み会に誘ってくれました。

気のおけないその人に、パソコンの画面越しにぼやいていたら、「この間、『80歳で大学に入学したおばあちゃん』の記事を読んだんだけど……」とその人が切り出しました。

「そのおばあちゃん、周囲から『大学を卒業する頃には84歳だよ』と反対されると、『大学に行かなくても84歳だよ』と返したんだって。なんかカッコいいよね」

そうか。
フルパワーで生きても、シフトダウンしながら生きても、同じ歳月が流れるんだ。

当たり前ですが、そのことに気づいたとき、
「やっぱりシフトダウンする方向は違うな」
と思う自分がいました。

これから先、同じ歳月を重ねるなら「大学に行くおばあちゃん」の生き方を選ぶほうが自分らしい、そう感じたのです。

枠あり_おばあちゃん

高齢女性と雑談テレフォン

もうひとつ、自粛期間中に印象的な出来事がありました。
その頃、私は地元の社会福祉協議会を通じて、あるボランティア活動をしていました。独り暮らしの高齢の方と、電話でなにげない雑談をするのです。その名も「雑談テレフォン」(そのまんま)。

実はこの活動は、私から協議会に提案したものでした。
閉塞感が広がる世の中で、私に出来ることって何だろう? と考える中で思いついたのが、他者とのつながりを断たれがちな独り暮らしの方の話を聴くことだったのです。

私がお相手をしたのは、70代の独り暮らしの女性でした。
かつて風俗店で働き、結婚。一子を授かったものの離婚。子どもは慰謝料と引き換えに夫に引き取られ、身一つでひっそりと生きてきた人です。
そんな彼女に毎週1回、決まった曜日・時間に電話をかけます。
最初の電話のとき「何もする気が起きない」と話していた彼女は、雑談テレフォンを続けていくうちに少しずつ打ち解けてくれるようになりました。

雑談テレフォンを始めて2ヶ月くらい経ったころでしょうか。仲介してくれた職員から、人づきあいを避けていたその女性が「今度お茶会に参加してみようかな」と発言してくれるようになったと聞きました。

私がこれまで取材してきたビジネス書の著者は、何かしら成功を収めている人たちが大半です。そのサクセスストーリーももちろん面白いのですが、彼女のような人生もまた、多くの示唆に富んでいました。言葉が適切でないかもしれませんが、彼女とのセッションはすごく楽しい時間だったのです。

やっぱり私は人の話を聞くのが好きなんだ。
話を聴きながら、その人の人生を応援したいんだ。

その女性とのセッションで、私はそのことを再確認できました。


ずっとやってきたし、ずっとやりたいし。

自粛期間中にあった二つの出来事から、私の中にこんなフレーズが浮かんできました。

「ずっとやってきたし、ずっとやりたいし」

80歳で大学に入学したおばあちゃんの話からは、「どんな瞬間も精いっぱい生きたい」という自分の性格を再確認しました。
独り暮らしの女性との電話セッションは、「私は人の話を聴くのが好きだし、その人の人生を応援したいんだ」と再確認する機会になりました。

そういうふうに私は生きてきたし、この先も生きていきたい。

この二つの出来事のおかげで、私の不安はようやく吹き飛ばされました。

思えば、それまでは社長としての責任感やプレッシャーから「やらなきゃ、やらなきゃ」と自分に言い聞かせて煮詰まり続けていた気がします。
それが、この二つの出来事をきっかけに、「やらなきゃ」から「やりたい!」へ、自分をモチベートするエンジンが一新された感覚です。

ずっとやってきたし、ずっとやりたいし。         

出版不況だろうが、コロナだろうが、なんであれ。

すると、不思議なものですね。
その先に、運命のような出会いが待っていたのです。

(次回へつづく)

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