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#全文公開 「はじめに」【サッカー スモールサイドゲーム研究】

年代やレベルを問わずコーチングに
革新をもたらすミニゲーム大全!


サッカー スモールサイドゲーム研究 課題を制約主導アプローチで
解決するためのトレーニングデザイン入門
』が本日、2024年3月14日より書店に並びはじめます!

欧州の先行研究や指導現場の検証から考察するスモールサイドゲームの真価とは
本書の「はじめに」を全文公開です!

はじめに

 私がまだ中学生だった頃のことです。平日の朝はサッカー部の練習が毎日のようにありました。朝練といっても顧問の先生が指導をするわけではなく、職員室から見下ろせるグラウンドにあるミニゲームの2面のコートを使って部員が勝手にゲームをするというものでした。人数の揃った組からゲームをしていくのですが、毎日そんなに都合よく人数が揃うことはなく、4対4や5対5、6対6のように両方の組が同じ人数になればまだしも、人数の足りない組も出てくるわけです。だからといって他の組から助っ人を借りることはせず、たとえ4対5だろうとゲームを始めてしまいます。

 でもそんなときには「人数の多い組はシュートをワンタッチで打たなければならない」というようなルールが取り決めてられていたのです。そうすることで互いの組が自分たちで戦い方(戦術)を考えるようになっていき、人数の多い組は数的優位をいかそうとし、人数の少ない組は相手にワンタッチのシュート制限があるため守り方を工夫するようになっていきました。

 いま振り返ってみると、この朝練のミニゲームこそ、本書の研究テーマである“制約主導アプローチによるスモールサイドゲーム”だったのです。けれども当時は、私をはじめチームメイトの誰もが制約の操作などという理論は知りませんでした。その場の数的な状況にあわせてルール(制約)を設けてゲームをやっていただけなのですが、結果として相手の状況に応じた試合の進め方を自然に身につけていたのです。

 近年では、様々なサッカーの戦術理論やトレーニングの方法論が提唱されていますが、特に小学生のような小さな子どもに対しては、指導者が理論を応用した言語化によるトレーニングをしてゲームに反映するのではなく、まずはゲームをやらせてみて子どもたちのプレーから指導者が分析をし、子どもたちに身につけさせたい、あるいは子どもたちから引き出したいポイントを見つけ出して、その事象が発生するようなルール(本書では制約と呼びます)を設けたゲームに取り組ませてあげたいと私は考えています。

 戦術を言葉で伝えるのではなく、ゲームの中に戦術のエッセンスを入れておくだけでいいのです。すると私の中学生時代のエピソードのように、子どもたちはゲームの中から学んでいくようになるはずです。だから、あまり頭でっかちにならずに、まずはゲームをやってみましょう! なぜならば、子どもたちはサッカーのゲームが大好きだからです。

 もちろん子どもたちはサッカーが上手になりたいわけですから、そのためには練習をするしかありません。ただそれだけではなく「子どもたちが最も楽しいと感じるゲームの中で上手にすることはできないのだろうか?」と考えるのが本書の扱うスモールサイドゲームの重点ポイントです。子どもたちは、ドリブルやパスの練習のように、サッカーのゲームの中から一部分だけを切り取った練習よりもゲームでプレーすることを望んでいるからです。

 さらにいうと、何の工夫もないゲームだけをやらせるよりも、指導者が選手をしっかりと観察し、もっと伸ばしたいプレーが自然と頻発するような条件のゲームにすると、子どもたちはもっともっとサッカーに夢中になるでしょう。具体的に言うと、指導者がコートのサイズを調整したり、ゴールの方法を考えたり、子どもたちの成長に必要な要素を引き出せるような制約をゲームの中に作ってあげるのが理想的です。子どもたちからしたら、ただゲームをやっているだけです。でも、なぜかうまくなっていく。じつはそのゲームには指導者が綿密に計画して作り上げたエッセンスがブレンドされていたというわけです。それこそがスモールサイドゲームによる指導なのです。

 本書は、そんなスモールサイドゲームをデザインする(作る)際のヒントとして指導者の方に活用してもらいたいものです。手引き書として読み進めてみてください。

内藤清志

書誌情報

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