寺に住む盲目の琵琶法師芳一は、とある高貴な人の使いに乞われて出かけ、平家物語を吟じた。 だが後を付けた寺男によって芳一を呼び出したのは平家の亡霊であることが…
第一夜。 ”こんな夢を見た。 女が死ぬ。女は男に百年待っていて下さい、きっと会いに来ますから、と言う。 男は星の破片の墓標の傍で日を勘定しはじめる。 待ち続け、…
「こんな夢を見た」から始まる不思議な夢の世界、その終幕が第十夜である。 第十夜では、健さんが語り手に庄太郎の話を伝えに来る。 庄太郎はパナマ帽がトレードマー…
ヨシノ
2022年7月6日 22:42
寺に住む盲目の琵琶法師芳一は、とある高貴な人の使いに乞われて出かけ、平家物語を吟じた。 だが後を付けた寺男によって芳一を呼び出したのは平家の亡霊であることが明かされ、身を守るために全身に経文を書きつけられたが、書き忘れた耳を亡霊にもぎ取られた。 芳一はなぜ耳を取られたのか。 それはもちろん相手の正体が亡霊であったからではあるのだけれども、相手が亡霊であることを知る以前は芳一は無事に解放
2021年9月9日 23:01
第一夜。 ”こんな夢を見た。 女が死ぬ。女は男に百年待っていて下さい、きっと会いに来ますから、と言う。男は星の破片の墓標の傍で日を勘定しはじめる。待ち続け、やがて女にだまされたのではないかと思いだしたころ、目の前で百合の花が咲いた。百年はもう来ていたのだ、と男は気付いた。” さて、夢十夜は「こんな夢を見た」から始まる十の夢の物語である。 まず『夢十夜』を読むうえで、「夢」の構造を意
2021年9月8日 23:08
「こんな夢を見た」から始まる不思議な夢の世界、その終幕が第十夜である。 第十夜では、健さんが語り手に庄太郎の話を伝えに来る。 庄太郎はパナマ帽がトレードマークの、というからにはおそらくそれなりに裕福な、町内一の好男子で、至極善良な正直者だという。 ただ水菓子屋の店先で女の顔を眺めるのが趣味なのだから、少々軽薄な印象の人物ではある。 その庄太郎が「女に攫われてから七日目の晩にふらりと帰って