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勝利至上主義の弊害、選手にとっての勝利とは?

女子長距離選手による、レースでのアクシデントがここ数年続いている話をラジオでしたことをきっかけに
「加納、後輩ランナーのために動きます!」と記事を書いて、多くの方からメッセージをいただきました。まず、何からやればいいだろう?と、私の周りで相談に乗ってくれそうな方と話してきました。

まず、「女子スポーツの健康を考える会」を発足し、私のような選手としてやってきた該当者ではなく、周りから見ての話も伺いました。

第1回目は成瀬拓也さんです。成瀬さんは私が競技を引退後、もっとも仕事でお世話になった方です。

成瀬拓也さん

株式会社ウィルフォワード代表。ビジネスプロデューサー。
筑波大学体育学群出身。長距離選手として箱根駅伝を目指す。市民ランナーとしてマスターズ陸上などでも活躍。アスリートのキャリア相談にも乗る。

今回は、インタビュー式ではなく、成瀬さんのお話をまとめました。

「同じエンジンなら軽い方がいい」の誤解

陸上競技(特に長距離走)はスタートからゴールまで自分の体重を運ぶ競技である限り、同じエンジンなら、
重いよりも軽い方が速く走ることができることは理屈としてよくわかると思います。

これまで長距離選手にとって、体重を絞るのは競技力を高める上で逃れられないと考えられてきました。

しかし、体重を絞る過程において、本来健康であるために、身体に必要な栄養素が不足することがあります。

特に、中高生での体重管理は成長期に当たるので、身体は多くの栄養素を求めているのに、過度な体重管理という名の食事制限による栄養素の不足は体への負担が非常に大きくなってきます。

事実、
貧血やオーバートレーニング症候群を引き起こしているケースは少なくなく、 更に、成長期に十分な骨の成長がなされないと十分な骨密度を保つことができず、成長期が過ぎたあとにも低い骨密度であるがゆえに、トレーニング負荷に耐えることができず、疲労骨折などの障害発生という問題がおきています。

勝利至上主義であるならば、勝つための方法が最優先されることはいなめなず、特に、体重管理(食事制限)は短期的な成果という視点で言うと否定はできません。

短期的と表現したのは、貧血や疲労骨折は体重制限している時だけではなく、徐々に蝕まれていくので時間差があるからです。

言い換えるならば、骨をスカスカにして走れる状態を得る、ことをしていると言えます。

長期的な視点に立つと、無理な体重管理がネガティブなのはわかりますが、中高生およびその指導者にとって、目の前のインターハイや駅伝となると、勝利のために「その1秒をけずり出せ」のように、「その1gを絞り出せ」となってしまっているのではないでしょうか。

そこで、体重管理(食事制限)を成長期(特に中高大学生生)と成熟期(身長などの成長を終えた実業団選手など)に分け、成長期の選手の体重管理(食事制限)について考えていきたいですよね。

体重管理(食事制限)しないと結果が出せないのか?


体重管理に限らず、体を絞るよりも「こうした方が結果が出せるよ」というのがあれば良いです。言うまでもないですが、短期的にも長期的にも正しい方法があるといいです。

しかし、現時点では、陸上界(おそらく陸上競技に限った話ではない)において、体重管理ほど容易に結果に直結する方法が見いだせていないとも言えるかもしれないです。

では、選手にとっても
指導者にとっても、「目先の結果を出すことよりも、将来的に優れた選手を輩出すること」が讃えられるようになることはできないのでしょうか。

その背景にどんな犠牲があったとしても、結果良ければすべてよしの目先の「優勝おめでとう」になってしまったら、中高生の内に結果を出した方が良いになってしまいます。

痩せれば走れると思ってしまう選手

学生時代、
自分のことに必死だったから、そこまでちゃんとはみてなかったんですが、中高大を通して、ずっと走れている女子選手は少なかったと思ういます。


中学や高校では爆走していても、大学で一時休憩みたいなケースが多かったような気がします。


同級生ですごく体が細い選手がいて、それでもどんどん痩せていって競技を続けれなかった選手がいましたが、もしかしたら、過去の成功体験で痩せれば走れるのがあったのかもしれません。


もし相談することができる人がいたら変わったかもしれないですよね。

勝利至上主義の弊害

同じエンジンならば、体が軽い方が走れるのかもしれないけど、間違ったやり方で軽くなっても続かないし、
競技寿命が縮まってしまいます。



いつどのタイミングで伸びるかは個人差があるので、「まわりは気にするな、まだまだ未来がある」と言ってあげられる存在が必要なんだと思います。

勝利至上主義は否定しがたいですけど、「選手にとって本当の勝利とは何なのか、そのために今できることをやる」を応援してあげられる環境が重要だと思いますね。


編集後記

自分自身も成長期に無理な減量をしたこと、減量をしたことで貧血になってしまったことを思い出しました。

長期的に考えれば、体の負担が大きいことはわかるのですが、早く結果を残したいという話になると(私自身、インターハイや全日中には憧れたので)今ある方法の中では、減量をという選択は否めません。でも、そうじゃない方法を見つけて目標に向かっていけるやり方が多くなるといいなと思います。

今後もできる限り、たくさんの方の話を聞いていきますので、何かコメントとかいただけると嬉しいです!


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