指導者にも選手にも「心理的柔軟性」が必要になってくる
「女子スポーツの健康を考える会」を発足し、私のような選手としてやってきた該当者ではなく、周りから見ての話を伺っていく第2回。
第2回目は長尾彰さんです。長尾さんはこの2年ほど、主に仕事の悩みにおいて、壁打ちになって下さった方です。
長尾彰さんプロフィール
長尾:加納さんは、心理的柔軟性のことは知っていますか?
加納:知っています。うまく説明はできないですけど、予想外のことが起こっても、言動とか行動に柔軟性を持つことですかね。
長尾:認知治療法のひとつで、物の見方を変えていきましょうってことですね。
心理的柔軟性は、心も体も柔らかくしていこうってことで、硬い人ほどこうでなくてはならないに囚われている感じかな。
加納:私は囚われた人生を送っているような気がします。
長尾:今日みたいに約束の時間に遅れて申し訳ないってすごく焦るとか。(この日、時間を勘違いしていて約束の時間に遅れました💧)
加納:これまでの人生において、約束の時間に遅れるってやったらあかんやつって思ってきているので。
遅れると、相手を怒らせてしまうみたいな。
長尾:遅れたっていいんですよ。そんな日もありますし。
僕は、加納さんから遅れますって連絡が来て、「遅れるんだ、じゃ、別の仕事やっておこうってなる。」これが心理的柔軟性ってやつです。
加納:逆に遅れられるパターンはいいんですけどね。自分が相手に迷惑かけるのが嫌なんですよ。
長尾:遅れられるのがOKなんだったら柔軟性はあるから、逆になっても焦らないようになるといいですね。
あれをしちゃダメ、これをしちゃダメって、枠組みの中で大人になる。
選手の話になるけど、怪我(疲労骨折)する前の兆候って自分でわかるんじゃないのかな?って思うんですよ。
ちょっと、脚の調子がおかしいとか。。
加納:痛いまではいかなくとも、違和感的なものはあると思います。
長尾:痛いまではいかなくとも、違和感はあって、体の異変は感じている。
疲労骨折って、前兆はあるんですか?
加納:ありますね。
でも、それがなんの痛みなのかがわからない感じなんです。
怪我の痛みなのか、一時的な疲労の痛みなのかが分からない。
現役時代、レース数日前に脚がおかしいなと思って、それを言えなくて、レーススタートして途中棄権したことあるんです。
でも、心の中ではなんとか誤魔化せるんじゃないか?っていう心理もありました。
長尾:でも、誤魔化せなかったって感じだったんですか?
加納:レース会場まで行くとやめれないってのもありましたね。
長尾:僕からすると、そこで辞めれるってことが健全なことだと思うんですけどね。
自分でどうするか選ぶことができる。
スタートしてやっぱりダメだったって、すぐ辞めても良い、選手には次があありますしね。加納さんは35歳まで現役続けていたんだから、20歳前後の選手はまだ10年は走れる。加納さんは、引退した今も走ることは続けているわけだし。
なかなか辞めることができない文化が怪我を招いているように見えてしまうんです。
そこは、今後変えていく必要があって、変えれないのは指導者側の心理的柔軟性が欠けているからかな。長い目で見ると無理してやる必要はないと思うんです。
加納:頭ではわかっているんですけどね。
でもそこまで考える余裕がないってのもあって。。
長尾:選手の心理的柔軟性も変えていかなくてはならないと思います。
今日は無理そう、走れないとか、ちゃんと言える。
不安ながら我慢してやっても、周りにも迷惑がかかるしね。
東京オリンピックでのアメリカの体操選手は「今の自分は戦えるメンタルではない」って自分で決めて、周りもそれを受け入れて、あれは見ていてすごく健全だなと思いましたよ。
加納:私も見ていましたが、あの大舞台で辞めれる勇気、すごいと思いました。
長尾:今回のプロジェクトをきっかけに、いろんな人にインタビューしていきたいですね。
加納:肯定する前向きなコメントばかりではなく、今、考えていることとか悩んでいることとかですよね。
成功例を並べるよりも、再現性があると思います。
長尾:大体、メンタルやられる時って、フィジカルがダメな時じゃないんですか?
加納:私の話になるんですけど、結果が出ている時って、「あれどうなんだろう?」と引っかかることも、結果を出すためには我慢することも必要と飲み込んでしっていたところはありますね。
でも、うまくいかなくなった途端、悩みがどんどん大きくなって、何が原因が分からないけど、調子が上がらないってなったことがありました。
長尾:なんで調子が上がらないのか分からない状況を2人で解決していこうっていうのが、選手と指導者の関係性にあることで、言い辛いってのはあるのんですか?
加納:言える人もいるし、言えない人もいると思います。
私は後者の言えない人でした。
長尾:擦り合わせって大事です。皆が皆、同じ方法で強くなれるわけではないから。
加納:ちょっとトレーニング方法とは違うんですけど、私自身が海外レースによく出るようになってから思ったことがあって。
皆が皆「オリンピック目指す」ではなくていいんじゃないか?って。
日本選手権出たいとか、海外のメジャーマラソンに挑戦したいとか、自分がやりたい選択でいいんじゃない?って思いますね。
長尾:そういうのも自分で決めて、選択枠が増えることで、競技へのモチベーションも変わってくると思うんですね。
指導者の人も、あの時、あの頃、どういう思いで指導していて、でも、伝えているつもりでも相手に伝わっていなかったとかの話も聞いてみたいね。
今後、関わり方が変わって、指導法が変わることで、こっちの方が成果出るやんってのが出てくるといいですね。
編集後記
今回、長尾さんとのお話しで、全体を通して感じたことは、人と人との関わり方の中で、お互いに柔軟性を持っていこうと言うことでした。
私もそうなのですが、予想外のことが起きた時、ついついその場をどうにか切り抜けなければと言うところで、先に起こりうることを見落としがちで、慌てて行動することになりがちです。
でも、それが負のスパイラルにハマってしまうこともあるのです。
今後、人と関わっていく中で、なんでも話しやすい、話せる関係性、人としての柔軟性を培うことは大切だなと言うことを改めて確信できた回になりました。
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