短編小説)ぐるぐるマフラー
「人って、一日に十分でも一人になる時間が必要だと思うわけよ」
実家の玄関に仁王立ちする妹の春香が、早口でまくしたててくる。
「だから、年末にお姉ちゃんが帰って来てるってお母さんから聞いて、わたしはもう五ヶ月も美容院に行ってなくて、四歳の男の子ってめちゃくちゃ元気で」
そう言うと春香は隣に立つ息子の公太の手を離し、ぐいっと前に押し出してきた。
「必要なものは、このリュックに入っているから」
青い小さなリュックサックを渡される。
「いいこと、公太。雪子おばちゃんと留守番して