マガジンのカバー画像

大臺 序乃壱

83
此のお話は日本が嫌いな日本人へ…。  日本を愚かと思う日本人へ…。  日本が貧しい国であったと思う日本人へ…。  日本人として誇りを持てぬ日本人へ届ける物語。  此れは我等が…
運営しているクリエイター

2022年10月の記事一覧

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 1

大壹神楽闇夜 2章 卑 3賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ) 1

 周国が衰退し既に二百年が経とうとしていた。名も無き島には大きな国、小さな国が点在する様に迄発展していた。其の中でマカラの作り上げた集落も例に漏れる事無く国に迄成長していた。
 国の名はハナ。意味は無い。ただ何と無くでつけた名前である。国となり長の呼び方も変わった。今では長を主と呼んでいる。賈具矢羅乃姫(かぐやらのひ)はハナ国の主である。後を継ぐ娘を主子(ぬしこ)と呼び主子の名は丕実虖(ひみこ)と

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族7

大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族7

 ヤリスが周国に戻り三日が経った頃、衛峰の使いが白椰との席の日取を伝えに来た。ヤリスは其れを承諾し、イリアの安否を尋ねた。イリアは毎日激しい拷問を受けている様だが、何一つ切り落とされてはいないと聞いて少し安心した。しかし、白椰夫人に会うのは四日後である。其れ迄無事でいてくれるのか…。ヤリスは気が気でならなかった。
 其れから四日経ちヤリスは衛峰の付き添いの下、白椰夫人の家に訪問する事になった。部屋

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族6

大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族6

 長い旅を経て周国に到着したヤリス達は周国の持つ文明に驚かされた。どれだけ聞いても想像すら出来なかった都に自分達がいる事に嬉しさよりも寧ろ不思議でならなかった。
 特使として訪れるヤリス達に取って周国はとても素晴らしい国である事は疑い様の無い事実である。だが、奴婢として来る者達に取っては地獄でしかなかった。寧ろ航海の中で死ねる事がどれだけ幸せだったのかを知る事になるのだ。
 食う物もろくに与えられ

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族5

大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族5

 一年が経ち娘達が帰って来た。其れと入れ替わる様に奴婢とお宝を持った娘達が集落を出発し周国に向かった。長い旅から戻って来た娘達は興奮し乍ヤリスの下に行き色々な話を話し聞かせた。其の中で何よりも大きな収穫は稲作である。稲作とは米を作る方法なのだが、此の地にはまだ其れが無かったのだ。
 ヤリスは米が何なのかサッパリ分からなかったのだが娘達が米を大量に持って帰って来ていたので、其れを炊いて皆に振る舞った

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族4

大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族4

 周軍を率いる将軍衛峰は何がどうなっているのか分からなかった。朝目が覚めると杭に縛りつけられ惨殺された兵が山の様に積み上げられていたからだ。
 
 どうなっている…。

 此れは一体…。

 衛峰は突きつけられた現実を受け入れる事が出来なかった。何故縛られているのか ? 何故自分の兵が殺され山積みにされているのか ? 理解出来なかった。だから、衛峰は目を閉じてゆっくりと昨日の事を思い出す事にした。

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族3

大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族3

 女達が人体実験を行う様になって二年が経とうとしていた。此の頃になるとマカラ達は他の者達が知る事の無い膨大な知識を手に入れていた。其れでも矢張り戦うと言う事には直結していない様にも思える。知識があっても技が無かったからである。
 だから、女達は実験を続けた。女達が実験を続けられたのは被験者がひっきりなしにやって来たからなのだが、実験を重ねる度に女達は出来るだけ長く生かしながら実験が出来る様になって

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族2

大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族2

マカラとアタカが小さな集落を作り一年が経とうとした頃、三人の女が此の集落にやって来た。女はマカラ達と同じく集落を抜けて来たらしく、共に暮らしたいと言った。マカラとアタカは色々悩んだのだが、矢張り二人では何かと不便である。狩に行けば田畑は放ったらかしになるし田畑を耕せば狩に行けない。川で魚も釣りたいし、服も作りたい。と、なると矢張り人は多い方が良い。だから、マカラとアタカは三人を歓迎し迎えいれた。

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族1

大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族1

 卑国に来て三日が経った。王嘉(おうか)は水豆菜(みずな)達と毎日アレやコレと策について語り合い、鄭孫作は日夜鉄を溶かす方法を娘達と試行錯誤を繰り返しているいる。そして麃煎(ひょうせん)は暇であった。暇だから李禹(りう)を誘っては茶屋に行き時間を潰す。だが、李禹(りう)も神楽と時間を共にしているので余り長くは付き合ってはくれない。だから、麃煎(ひょうせん)が卑国に来てした事と言えば娘達の子作りの相

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病6

大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病6

 葦船を波にさらわれた神楽達は運良く沖合を進む葦船に救助して貰う事が出来た。此の葦船は別子(べつこ)の娘が感染者を運んでいる葦船だったので本来なら卑国には行かないのだが特別に行って貰う事が出来た。
「しかし…。柚季生等のお陰で助かりよったじゃかよ」
 波に揺られ乍ら神楽が言った。
「まったくじゃ…。我等が通らねばどうするつもりじゃったんじゃ。」
 柚季生(ゆきお) が言う。
「遭難じゃか…。」

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病5

大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病5

 よくよく考えてみると秦国を出て今の今までまともな食事にありつけていなかった。飯屋に来るのも二年と少し振りである。美味い酒に美味い飯…。と、行きたい所だが掘建小屋の様な店では余り期待は出来ない。しかも、中にはテーブルも椅子もない。地面に座り飯を食う。此れでは外で食べるのと同じだと麃煎(ひょうせん)は思った。だが、上機嫌な神楽達を見やり其れは口が裂けても言えないと思った。其れから直ぐに店の主人がやっ

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病4

大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病4

 奴国の浜に到着した一行は都に向かってテクテク歩む。奴国の都は浜の近くにある。だから、海の幸が美味しく食べられる。
「ほれほれ、皆よ。今日は奴国の都にお泊まりじゃ。」
 神楽は上機嫌で皆を先導するが、既にあらぬ方に進もうとしている。其れを香久耶が正し正しい方向に向けた。
「お姉ちゃん…。先頭は我が務めよる。」
「何を言うておる。星三子を先頭には出来んじゃかよ。」
「じゃよ…。其れに船長は神楽じゃ。

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病3

大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病3

 卑国を出て四日…。神楽達は無事伊国の浜に到着していた。浜から伊国の都迄は遥か彼方である。だから、此処が伊国であると言われて実感出来るのは伊国の民でも漁を主体にしている人達である。そうで無い民の中には海を知らない人もいるのだ。都、集落の基本は川が近くにある…だからである。
 神楽は浜に着くと矢張り都の方を見やっていた。守れなかった悔しさが拭えずにいるのだ。ただ、残念な事に神楽が見やっている方角は一

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病2

大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病2

 項蕉(こうしょう)と三佳貞は伊国の都をブラブラと散策していた。都の中は秦の民と倭の民が多く生活を営み始めている。多くと言っても其の殆どは倭人である。秦兵と秦の民は其の多くが新たな都の建設に駆り出されていたのだ。
 項蕉(こうしょう)は四人での話し合いが終わった後、三佳貞に都の案内を頼んだのだ。三佳貞はナンジャラホイと思いながらも承諾したので、都馬狸(とばり)はもう暫く項雲(こううん)と話をする事

もっとみる
大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病1

大壹神楽闇夜 2章 卑 1疫病1

 倭人が迂駕耶(うがや)を奪い一月が経った。

 長い二年に及ぶ戦が嘘の様に平和である。

 此処に居れば昔の様に笑い楽しく暮らせる様な気になる。

 だが、じゃれ合った友はいない。
 歪み合った友も今はいない。
 多くの家族が命を失い神楽は此処にいる。

 嘘ではないのだ。いつもの様に空は青く、風が木々の匂いを運んで来ても、もぅ元には戻らない。
 国に帰ってから神楽は毎朝社(やしろ)に行き死んだ

もっとみる