見出し画像

大壹神楽闇夜 2章 卑 2三子族2

マカラとアタカが小さな集落を作り一年が経とうとした頃、三人の女が此の集落にやって来た。女はマカラ達と同じく集落を抜けて来たらしく、共に暮らしたいと言った。マカラとアタカは色々悩んだのだが、矢張り二人では何かと不便である。狩に行けば田畑は放ったらかしになるし田畑を耕せば狩に行けない。川で魚も釣りたいし、服も作りたい。と、なると矢張り人は多い方が良い。だから、マカラとアタカは三人を歓迎し迎えいれた。
 其れに伴い竪穴式住居を増やす事にした。二つ作るか三つにするか五人で議論した結果三つ作る事になった。そして新たなる三人に名前を付けた。ハサギ、イマル、ワカタと名付けた。其れから暫く五人での生活が始まった。だが、女しかいないのは何かと不便であるのは間違いない。だから、男を招き入れるか五人は議論した。だが、集落での嫌な経験がある。男を入れれば必ず女は品定めされ男の好みで其の地位が決定される。

 そうなれば…。

 今の生活が無くなり又誰かが奴隷になってしまう。

 だから、マカラ達は男は入れない事に決めた。

 そして、又数年が過ぎようとした頃、此の集落には数十人の女が生活する様になっていた。皆集落を抜け出し彷徨いながら此の集落をみつけたのだ。そして人が増えれば豊かになる。田畑も増え竪穴式住居も増える。狩に行く者、釣りをする者…。山菜を取りに行く者と毎日食べる物も次第に増えていく。何より毎晩火を囲み行う宴も多い方が楽しいのだ。
 だが、そんな幸せな時もそう長くは続かない。この集落の噂を聞いた男達が数人でやって来たのだ。男達は見るからに軟弱である。其れは虐げられ集落を抜け出して来た事はあからさまであった。だが、非力なマカラ達には争う術が無く集落は奪われてしまった。
 男達は自分達が虐げられて来た恨みを晴らす様にマカラ達を奴隷の様に扱い毎日好き放題に暮らし始めた。

 又奴隷か…。

 マカラは思った。
「逃げよう…。」
 アタカが言う。だが、マカラは嫌だった。
 そんな日々が続いたある日、別の男達がやって来た。男達は争い勝った方が新たな主人となった。

 結局誰が来ようとマカラ達は奴隷のままだった。

 イライラと…。

 イライラと苛立ちが募る。

 求めぬ子を産み育てる事も苦痛だった。
 此の時からマカラ達は男を敵として見る様になった。
 女達は皆悔しかった。皆で新たな集落を作るかと話し合ったが、何れ同じ道を歩む事になる。だから、マカラ達は男達を殺す事にした。
 ある晩、男達が寝静まった時を見計らい皆で男を襲った。石槍で何回も何回も男達を突き刺した。そして、マカラ達は男を皆殺しにしたのだ。
 マカラ達は殺した男達の死体を中央の広場に集め火をかけた。返り血を浴びた女達は真っ赤に染まり燃え行く死体を見やる。
「皆よ ! 此処は我等の集落だ。我等の集落は我等で守らねばならぬ。」
 そしてマカラが言った。
「応 !」
 アタカ達が答える。
「我等の集落に男はいらぬ。」
「応 !」
「我等は我等。例え我が子であっても男は殺せ。」
「応 !」
 と、女達は我が子を生きたまま火の中に投げ捨てた。其れを見やりマカラは鬼になった。否、此処にいる女は皆鬼になったのだ。
「今より我等は戦う戦士である。」
 そうして、強い決意の下マカラ達は戦う事を決め、そして厳格な掟を作った。
 
 男を集落に招かない事
 子作りが終わった後は必ず殺す事
 男子が産まれれば殺す事
 皆が戦士である事
 仲間を裏切らない事
 掟を破った者は必ず殺す事
 で、ある。
 そして、次の日からマカラ達は如何に男と戦うのかを考える様になった。だが、戦った事の無い女達にはどうするべきなのかサッパリだった。そもそも戦うと言う概念自体が無かった時代なのだから参考にする戦略や技さへ無かったのだ。
 だが、マカラ達は日々の作業をこなしながら色々考える。考える中で参考となるのは矢張り狩である。狩を主体に如何に戦うかを考えるのだが、獣は力は強いが武器は持たない。だが、男達は武器を持っている。

 困った…。

 と、マカラ達は毎晩皆と話し合い、一つの案が提案された。其れは相手を知らなければいけないと言う事である。
「相手を知る ?」
 マカラが問うた。
「うむ。我等は男は知ってはいるが、どうすれば死ぬかを知らぬ。」
 ハサギが言った。
「突き刺せば良い。」
「何処を ?」
 と、ハサギが聞くとマカラ達は首を傾げた。前回は無我夢中で突き刺していたから何処を突き刺して死んだかなど知るはずもない。
「良いか…。男は軟弱な奴でも我等より強い。だから、一撃で殺さねばならない。」
「確かにそうだ。」
「だから、知らねばならないんだ。」
「だが、どうやって ?」
 と、アタカが言うと、皆は首を傾げ乍らも様々な案を出し合った。その中で一番有力となったのが男をさらい実験台にすると言う案である。確かに男をさらい実験台にする事で色々な事を知る事が出来る。だが、問題はどうやって男をさらって来るかだ。
 勿論、集落を離れ放浪している者をさらうのが一番ではあるが、一人で放浪している様なおめでたい男はいない。マカラとアタカの様に二人で集落を抜け出した者もいるが、其れはあくまでも稀であり大抵は五人から十人単位で行動しているのが基本である。と、なるとさらうのは非常に困難な事である。マカラ達は頭をフル回転させながら気がつげばスヤスヤと眠りについていた。
 そして次の日になり、又作業をしながらアレやコレ…。気がつけば時間だけが無駄に過ぎて行った。
 そんなある日、六人の男が此の集落にやって来た。男達は集落を抜けて来たのだと言った。マカラとアタカ達は狩に出かけていたのでイマルはどうするか少し悩んだのだが、天の恵みと男達を心良く迎え入れてやった。暫くしてマカラ達が帰って来るとイマルは男達がやって来た事を告げた。
「イマル…。何故男を入れた。」
 マカラが強い口調で言った。
「何を言うておる。探しに行く手間が省けたではないか。」
 イマルが言う。
「探しに ?」
「そうだ。向こうから態々来てくれたんだ。利用せんでどうする。」
「だが、どうするんだ ? 又支配されてしまうぞ。」
「大丈夫…。我に考えがある。」
 と、イマルはマカラ達を中央広場に案内した。中央広場には大きな木の杭が十本打ち込まれていた。イマルはマカラ達が戻って来るまでにその杭を打ち込んでいたのだ。
「此れは ?」
 アタカが問うた。
「此の杭に男達を縛り付けるんだ。」
 イマルが言った。
「どうやって ?」
「酔わせて眠らせてだ。」
 と、イマルはニヤリと笑みを浮かべた。
 そして、女達は盛大に男達をもてなし、子作りに励んだ。六人の男達は数十人の女の相手をさせられセイモコンモ尽き果てたのか死んだ様に眠りについた。
「寝てしまいよった。」
 ワカタが言った。
「今の内に縛ってしまうか。」
 と、女達は男達を中央広場迄持って行き杭に縛りつけた。そして、スヤスヤと眠りについた。
 翌朝、男達は目を覚まし困惑した。杭に縛り付けられている仲間を見やり、何がどうなっているのか分からず身動きが取れない事に恐怖した。
「お〜。起きよったか。」
 男達を見やりマカラが言った。
「な、何だ。此れは ? 離せ !」
 男達は口々に叫ぶがマカラ達は其れには耳を傾けなかった。
「さて、先ずはどうする ?」
 石槍を握りマカラが皆に問う。
「決まっておる。腹を裂いて中がどうなっておるのか見てみたい。」
 ハサギが言った。
「よし。決まりだ。」
 と、マカラが言うと女達は六の組を作り組ごとに男を解体し始めた。勿論生きたままである。生きたまま腹を裂かれ腸を引きずり出される。男達は断末魔の様な叫び声を上げ、泣きながら許しをこうた。だが、女達は知らぬ顔で引きずり出した腸を石槍で叩いたり踏んづけたりした。その度に男は叫ぶ。意識を失えば楽になれたのだが、残念な事に意識を失う事は無かった。
「体の外に出しよったのに痛がっておるぞ。」
 其れを見やり女達は不思議な表情を浮かべ更に踏んづけた。そして、更に男達は苦しんだ。だが、まだまだこんな事では終わらない。更に体の中に手を突っ込み中に入っている物を力強くで抜き取ろうとする。だが、肉と合体しているので抜き取れない。だから、石包丁で肉と臓器を削ぎ取り始めた。

 そして…。

 男達は苦痛の中絶命した。

 其れでも女達の好奇心は治らず尚も体を切り刻み続けた。耳を削ぎ、目をくり抜き、頭の中には何があるのかと頭を割り、関節をあらぬ方向に動かし骨を折った。やがて、細切れとなった体は山に運ばれて投棄された。投棄された体は綺麗に獣が食べてくれるからだ。
 そして、女達の好奇心は更に肥大して行く。生きた男の耳を削げばどうなるのか ? 生きた男の目をくり抜けばどうなるのか ? 生きた男の骨を折ればどうなるのか ? 体の柔らかい部分に攻撃を加えるとどうなるのか ? 色々な事を試してみたくなったのだ。
 そんな女達の好奇心を満たす機会は意外にも直ぐに訪れた。又男達がやって来たのだ。正に此の集落はゴキブリホイホイである。女の甘い蜜に誘われ探しに行かなくとも男達がやって来る。マカラ達は又同じように男達をもてなした後杭に縛り付けた。
「さて、今度はどうする ?」
 マカラが皆に問うた。
「先ずは目をくり抜いてみるか。」
 イマルが言った。
「其れは良い案だ。目をくり抜いたらどうなるか見てみたい。」
 と、女達は男達の目をくり抜いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?