【短編小説】ナチョスに魅せられて

皆さんはナチョスという食べ物を知っているだろうか。
トウモロコシが原料であるトルティーヤチップスに様々なソースをかけて楽しむメキシコ料理だ。
僕がこの料理に出会ったのはなんと映画館だった。それまではトルティーヤチップス=ドンタコスくらいの認識だったのだが、ある日僕は映画館でポップコーンの隣に追加された謎のメニューに興味津々だった。
「なるほど。味の無いプレーンなドンタコスにソースをつけて食べるのか」
その時いつも食べるポップコーンLサイズが500円であることに対してナチョスは600円。チーズとサルサのダブルソース付きだ。この100円の差は少しだけ僕の頭を悩ませたが、僕は謎のスナックに挑戦する事にした。
さて、映画がはじまり、ナチョスを食べてみる。これがまた美味しい。まず、素のトルティーヤチップスというものをこれまで食べた事がなかったのだが、焼きトウモロコシの香ばしさが口の中に広がりこれがまた美味い。多少の塩味がアクセントになっていてそのままでも十分に楽しめる味だった。
だが、このままではせっかくのソースを使わずにただプレーンなトルティーヤチップスを楽しんだだけで終わってしまう。僕は慌ててチップスを付属のソースにディップしてみた。こりゃまた美味いぞ!映画の内容そっちのけで思わずニッコリする。濃厚なチーズソースも具だくさんのサルサソースもたまらない。映画館の暗闇に乗じて舐めとりたいくらいには美味しかった。
ナチョスの美味しさに感動し、もくもくと食べながら映画を見ていると映画とナチョスの思わぬ繋がりを見つけた。
それはこのナチョス(というかトルティーヤチップスか?)結構海外の映画だと出てくるのだ。日本ではまだまだポテチ程ではないが、海外映画のパーティーシーンとか陽気なキャラが食べていたりしている。こういう映画に登場する食べ物というのは何故か食べたくなるもの。映画でナチョスを提供するというのは、そうしたニーズに答えたものなのかも知れない。
結局僕は映画館を出るころにはナチョスの虜になってしまっていた。
帰り道で、業務スーパーに立ち寄りトルティーヤチップスとチーズソース、サルサソース、そして映画館では味わえなかったハラペーニョソースを購入し、ルンルン家に帰る。
映画の陽キャのように、盛大にパーティーを開いたりはしないが、この日の夜、僕は一人でまた映画を見ながら少しのお酒を片手にナチョスパーティーと洒落込んだ。

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