第18回 渡慶次美帆さん(くじらブックス)
遠い海がわたしの胸のうちにありいつまでもいつまでも飛ぶ鳥 『冒険者たち』ユキノ進
何度読んでも「好きだ」と思う。すっと心に入り込み、時間をかけて染みてくる。こんな歌集には、出会ったことがなかった。
端整なことばで綴られる、労働者の胸中。矛盾を感じて藻搔いても、飛び出せない、動けない。かつて自分も抱えていた苦しみが、歌に結実されている。読んだ瞬間、思わず泣きたくなるほどの共感と「自分だけじゃなかった」という安堵を感じた。そんな人は、きっと大勢いるはずだ。
魅力は他にもある