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歌集の棚から

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書店員のみなさんに好きな短歌について書いていただきました。「ほんのひとさじ」からの再掲です。
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記事一覧

第24回 益子陽介さん(TSUTAYA LALAガーデンつくば)

ぼくたちが核ミサイルを見上げる日どうせ死ぬのに後ずさりして 『きみを嫌いな奴はクズだよ』…

第23回 野崎泰弘さん(りんご堂)

これもまた短歌なんです「     」律儀な人にはなんにも見えぬ 『パールグレイの瞑想』岡…

第22回 大友俊さん(乃帆書房)

歩いたらそこまで行けるものとしてたとえば宇宙センターがある 『Bootleg』土岐友浩 歩いて…

第21回 小澤康基さん(紀伊國屋書店徳島店)

アイロンの形に焦げたシャツを見て笑ってくれるあなたがいない 『つむじ風、ここにあります』…

第20回 平野佐保さん(リーディングスタイルあべの)

夕立ちの味がするってきみは言う 異国からきたミネラルウォーター 『コンビニに生まれかわっ…

第19回 大塚真祐子さん(三省堂書店成城店)

水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水 『遠くの敵や硝子を』服部真里子  名…

第18回 渡慶次美帆さん(くじらブックス)

遠い海がわたしの胸のうちにありいつまでもいつまでも飛ぶ鳥 『冒険者たち』ユキノ進  何度読んでも「好きだ」と思う。すっと心に入り込み、時間をかけて染みてくる。こんな歌集には、出会ったことがなかった。  端整なことばで綴られる、労働者の胸中。矛盾を感じて藻搔いても、飛び出せない、動けない。かつて自分も抱えていた苦しみが、歌に結実されている。読んだ瞬間、思わず泣きたくなるほどの共感と「自分だけじゃなかった」という安堵を感じた。そんな人は、きっと大勢いるはずだ。  魅力は他にもある

第17回 佐藤直子さん(東京大学生協本郷書籍部)

夕映えのせかいでひとりぽっちでもうどんをいとおしくゆがくんだ 『永遠でないほうの火』井上…

第16回 花田菜々子さん(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

ひとりでも生きていけるという旨のツイートをしてリプを待つ顔 『サイレンと犀』岡野大嗣  …

第15回 波多野つくしさん(オリオン書房ノルテ店)

最初から靴紐がほどけていたし君なら大丈夫だと思った 『アーのようなカー』寺井奈緒美  き…

第14回 樽井将太さん(古本屋 百年)

どちらの言葉も、醜いことがたまらない牛肉石鹼 美しい歌をだれかうたってくれないか 『Conf…

第13回 関口竜平さん(本屋 lighthouse)

泣きながらたこ焼きを焼くきみからの言葉をひとつひとつ丸めて 『ちるとしふと』千原こはぎ …

第12回 三井洋子さん(文教堂書店赤羽店)

アイスティーの上澄みに似た空を見て初めて君に気持ち伝える 『タルト・タタンと炭酸水』竹内…

第11回 砂川昌広さん(とほん)

拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません 『ひとさらい』笹井宏之  僕は眠る前に笹井宏之さんの歌集をパラパラと見ることがあります。  1ページ目から順番に読むのではなく、適当にページを開いて、行ったり来たり。  いつも好きな歌、その夜はやけに気になる歌、見るたびに印象が違う歌。歌集の中では笹井宏之さんのものを一番手に取っています。  そうは言っても、僕はそれほど詩や歌の熱心な読者ではありません。作者の意図を明確に読み取ることも、詩の魅力を十二分に味わっている自