第20回 平野佐保さん(リーディングスタイルあべの)
夕立ちの味がするってきみは言う 異国からきたミネラルウォーター 『コンビニに生まれかわってしまっても』西村曜
五感で経験したことは、五感を通してよみがえってくる。思い出すきっかけは様々だ。はじめての街、フラッと入った喫茶店のコーヒー、展覧会で出会った絵画。その瞬間まで忘れてたことでさえ、些細な出来事によって一瞬で思い出される。
“夕立ちの味”とはどんなだろう。それは匂いだろうか。アスファルトから立ち上がる熱の匂いだろうか、それとも雨に紛れて濃くなる青い青い植物の匂いだろうか……。私は匂いに敏感だったから、ふとしたことが匂いと結びつく。その瞬間まで忘れていたことでさえ、匂いとともに鮮やかによみがえるのだ。
無味の水から、夕立ちの“匂い”が想起されたこと。それは思いもかけないことだっただろう。結びつくなんて思っていなかったものが繫がるのは、未知の体験をしているようで楽しい。
(「ほんのひとさじ」vol.13より)
平野佐保(リーディングスタイルあべの)
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