歌集の棚から_バナーヨコ

第13回 関口竜平さん(本屋 lighthouse)

泣きながらたこ焼きを焼くきみからの言葉をひとつひとつ丸めて 『ちるとしふと』千原こはぎ

 たこの入ってないたこ焼きってなんなの?
 って、いつかのきみが言っていたのを思い出してしまったから。今夜はきみからもらった言葉をひとつずつ、ぜんぶ入れてみる。たこの代わりに。
 たとえば夏。夜の海。あるいは冬。明け方のベッドの上。ふふふ。たくさん入れちゃおう。でも、ついさっき画面越しにもらった四文字は、ちょっとまだ入れたくないな、でもどうしようもなくムカついて仕方がないから、やっぱりちゃんとこの空洞にぶちこんで、わたしの血と肉にしてやるんだ。
 わたしはきみを、たべちゃいたいくらいだいすきだったきみを、いま、やっと、たべる。そしてわたしはつよくなる。きれいになる。夢を叶える。いまにみていろ。倍返しだ。だからわたしからの言葉は、
「こうかいしやがれ」
 味わってたべてね。
(「ほんのひとさじ」vol.12より)

関口竜平(本屋 lighthouse)

39ちるとしふと書影

歌集の棚から 過去の記事

第1回 吉村まどかさん(くまざわ書店サンリブもりつね店)

第2回 竹田信弥さん(双子のライオン堂)

第3回 吉田慎司さん(がたんごとん)

第4回 中村勇亮さん(本屋ルヌガンガ)

第5回 鎌田裕樹さん(恵文社一乗寺店)

第6回 永山裕美さん(梅田 蔦屋書店)

第7回 小谷裕香さん(本の学校今井ブックセンター)

第8回 城下康明さん(ひとやすみ書店)

第9回 新井見枝香さん(HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

第10回 磯上竜也さん(toi books)

第11回 砂川昌広さん(とほん)

第12回 三井洋子さん(文教堂書店赤羽店)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?