軍人礼賛映画を鑑賞

TAKING CHANCE/戦場のおくりびと  Filmarks映画 #映画 #TAKINGCHANCE戦場のおくりびと

 イラクで戦死した兵士の遺体を故郷へ運び埋葬まで見届ける映画「戦場のおくりびと」。遺体や遺品がどのように処理され運搬され遺族の元へ送り返されるかを細部に渡り丁寧に描いており、殉死者への敬意が画面から滲み出ている。演出が秀逸なので、厳粛なシーンでは愛国心の崇高さに心揺さぶられ感動する人も少なくないだろう。

 だが残念ながらこの映画は戦争美化に偏り過ぎだ。これを見て咽び泣いて終わる視聴者は平和ボケしている。

 そもそも軍に加入するということは、集団での殺し合い・自殺行為に参加するということ。戦争に至ったいきさつ等を度外視し「自分の指導者の判断は常に正しい」「リーダーの命令には絶対服従」と考える主体性の欠如したその精神構造と暴力肯定主義への無批判さは、世界中のギャング・ヤクザ・暴力団・マフィア・テロリスト・神風特攻隊などと何ら変わりはない。
 「殺せば問題解決」「暴力で解決する事もある」という短絡的な哲学を妄信したまま、己の英雄願望充足のために危険を承知の上で、場合によっては敵を殺し・半殺しにするために向かうのだから、たとえ返り討ちに逢って死んだりPTSDになったり脳挫傷を負ったり半身不随になったとしても因果応報・自分が蒔いた種・自己責任である。
 無論、遺族にも同情は不要だ。戦争を肯定する子供に育てたのも身から出た錆なら、戦地に行くのを止められなかった説得力の無さも自業自得。尤も、暴力肯定主義者やその鉄砲玉となる若者やその親族も含め、等しく低水準教育の犠牲者ではあるのだが。

 と、このように言うと専ら軍需産業に携わる人々から次のような異論・反論・オブジェクションが出てくるのが常だ。
「内紛や暴政に苦しむ人々を放っておけというのか」
「一時的にせよ武力で抑えなければ犠牲者が増える」
これらにはこう答えよう。
「派兵もまた暴政の一種。派兵か放置かの二択しかない、という二元論的な発想(白黒思考)が既に貧弱」
「派兵というその場凌ぎの対症療法以外にも、住人の苦悩や犠牲を低減する手段はゴマンとある。武力は表面的一時的に”収束して見える”だけで、実際には問題がより悪化・複雑化・長期化・泥沼化し、“総“犠牲者はもっと増える。軍事を過大評価する者はこうした長期的視野が欠けている」
 と。尤も言われた方は、更にこう反駁するかも知れない。
「治安悪化を食い止めるのが最優先。各種対策は治安維持しながらでもできるし、寧ろ治安維持されてなければ不可。その為にも派兵は必須」
 と。それについてはこう返す。
「治安維持が目的なら尚更派兵や武器提供は避け、暴力に訴える者への直接的な説得・交渉・問題解決力向上に力を注ぐ事が、最も被害を最小化する。実際には米国が介入する真の目的は傀儡政権の援助・成立即ち自分たちの利益。事実、米国は彼らに忠実な独裁者の圧政は見て見ぬ振りをする」
 ある程度高水準教育を受けた物分かりの良い人なら、上記だけで「武力による解決」がどれほど偽善的理想主義者の絵空事であるかを理解するのだが。

 劇中の「彼(戦死した兵士)のような(立派な)若者が多ければ、軍隊は要らないのだが」という青臭いセリフも、この映画の偽善性をよく象徴している。実際には「彼のようにテロリズムに対する批判的思考力の乏しい愚直な若者がいなければ、如何なる集団においても軍隊は維持されないのだが」が正しい。勿論、まず救うべきは洗脳された若者よりも洗脳したがる大人の側である。
 この映画は建国以来、年に一回の割合で世界のどこかでドンパチを起こしている戦争大好き米国の自己欺瞞・自己満足でもある。超大国であるが故に、彼らがその独善から解脱できるのは世界で最も遅くなるのかも知れない。

 因みに、近年はそんなアメリカでも反軍国主義が台頭しつつあり、焦った軍国主義者らはこんな偽善的な番組も作り出して未だ人々を洗脳しようとしている。

[感動] 脳に障害がある退役軍人に対してウェイトレスが虐待していたら? [海外 ドッキリ] https://www.youtube.com/watch?v=wy87duxw_R8

 勿論、こうした感動ポルノに騙されるのは脳内お花畑の善良な市民だけだ。

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