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世界写真紀行 vol.11(タイ/ メーソート)

タイ北部ターク県内にある町、メーソート。ミャンマーとの国境沿いのこの町はその地理的条件上、ミャンマーからの人々が往来しており雰囲気が他の地域と全く異なる。異色の文化が入り交ざる国境の町と表現するのが適している。特に観光的に名所という名所はほとんどないが、独特な雰囲気がまさに観光資源なのかもしれない。

そしてもう一つ興味深い場所がここには存在する。内戦などで国内から逃れるた人のためのミャンマー難民キャンプだ。

10年前、ここを訪れたきっかけも友人が移民研究に興味を持っておりタイ最大のミャンマー難民キャンプがこの町にあるという大雑把な情報を基に訪れた。キャンプの正しい場所も全く分からないので、バス乗り場やバイクタクシー乗り場でひたすら聞き込みをしたのをよく覚えている。

そんな時、ある女性に声を掛けられた。

"あなたたちは難民キャンプに行きたいの?私も行くから一緒に行きませんか?その代わり、ちょっと荷物運ぶの手伝ってください。"

そんな運命的なことあるのかと思いながら、二つ返事で

"ぜひ!"

と。

それから、赤い乗り合いタクシーで1時間半ほど峠越えをした。そしたら、いきなり集落のような場所が現れて、ここで降りるわよと言われ一緒に降りた。

アルミの箱に入ったビスケットや乾パンを一緒に運び、明らかに正規の入り口ではないこところから難民キャンプに潜入した。

そこは、いたって普通の集落といった感じ。

(本来であれば、入るには許可がいるそうで彼女は家族が難民キャンプにいるが、タイ国籍を取得していたため比較的自由に出入りできたそうだ。)

キャンプ内を案内してもらったが商店、学校、ラジオスタジオ、お寺、教会など様々な施設が充実していた。そして、ある家に招かれて食事をご一緒させていただいた。

その時、会話をする中で家の主の男性の一言が今でも忘れられない。

"難民キャンプに来てからどれくらいですか?"

"20年以上はここにいるよ。"

"母国に帰りたいですか?"

"そりゃあ帰りたいよ。もう何十年も自分の居場所がわからない状態だからね。早く帰りたい。"

私は、無意識のうちにとんでもないことを聞いてしまっていた。自分の国や居場所に当たり前に生活できることがどれだけ、有難いことなのか、痛感させられた。そんな中でも、生きることをあきらめず、ひたむきに生活する彼らから学ばせてもらったことは言うまでもない。


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