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江戸の川柳九篇② 放れ馬大手を広げては逃げる 柄井川柳の誹風柳多留

 馬や牛が日常にいた江戸の町の風景。人と大きな動物が一緒に暮らしていた。
 江戸時代に柄井川柳からいせんりゅう(1718~1790)が選んだ川柳を集めた「誹風柳多留はいふうやなぎたる九篇」の紹介、全5回の②。
 読みやすい表記にし、次に、記載番号と原本の表記、そして七七の前句まえくをつける。自己流の意訳と、七七のコメントをつけているものもある。



放れ馬大手を広げては逃げる


427 はなれ馬大手をひろげてはにげる  本の事なり本の事なり

 暴れ馬に対して闘牛士のように両手を広げて止めようとしたけど、あの巨体を見るとすぐに逃げ出したというのが本当のところだ(本の事なり)。
 昔は馬をいっぱい飼っていたけど、馬の体は大きい。競走馬のサラブレッドほど大きくないのが日本馬だろうが、それでも大きい。熊のような恐怖感はないだろうが、大きいということは恐ろしいもの。
 恐ろしいけど、牛や馬は生活に必要なものだから大切に飼育していた。 



江の島は名残なごりしむ旅でなし


441 江の島はなごりをおしむ旅でなし  本の事なり本の事なり

 お題の七七である前句まえくが「本の事なり」で、「本当のこと」「実はこうなんだよ」というものをさがす。そして、いい川柳ができたら応募する。これが「誹風柳多留はいふうやなぎたる」。
 句のほうは、旅行に行けば名残惜なごりおしいものだが、江ノ島えのしまへの旅は、近いので、「旅」というほどのものではない、と言っている。そんな近場の旅行も江戸の人は多くしていた。 



よる出すとこなたのせいとよめへ言


443 よる出すとこなたのせいと嫁へい  本の事なり本の事なり

 夜に出るのは息子。息子が夜遊びに出る。息子の母親であるしゅうとめが、嫁に対して「あなたのせいで息子が夜遊びに出るのですよ」と言っている。息子が出るのを止めないと言っているのか、あなたとの夜が楽しくないので出るのだと言っているのか、とにかく何でも嫁が憎らしいのがしゅうとめだと、川柳ではパターン化している。

夜遊びに息子出るのは嫁のせい
息子かわいやその嫁にく
 



木の下にむきててあるうりの皮


462 木の下にむきすててあるうりのかわ  とゝのにけりとゝのへにけり

 旅の途中、木の下で休憩し、うりを食べた後に皮を投げ捨てる。一里塚には茶店があり、夏場はスイカ(西瓜)が食べられたが、その皮も、ポイポイ捨てていた。海中のプラスチックごみほど量があるわけでもなく、すぐに分解してなくなってしまうからポイ捨てされた。捨てられた皮というありふれたものに着目した作品。
 ここのうりは、皮をむくからスイカではなく、マクワウリだろう。
 マクワウリは、地域ごとに種類が違い、形も味も微妙に違う。スーパーに行っても売っていないけど、昔田舎で食べた田舎の味のウリがなつかしい。私はあま~いメロンよりもマクワウリが好きだ。 





 タイトル画像は、葛飾北斎かつしかほくさい(1760~1849)の有名な春画「喜能会之故真通きのえのこまつ」から。全体をはっきり描くと「18禁」になってしまいそうなので、たこの部分以外をぼかして模写。
 北斎は、いろいろな絵を描いているが、自然のタコの描写がすばらしい。タコをよく見ると、こんな吸盤をしているんだとか、いろんなことがわかる。
 こんなちょっとした発見が作品となるのが、江戸の芸術の特色だろう。



誹風柳多留はいふうやなぎたる」のまとめは、

 

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