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カンダマサヨシ
2020年5月30日 00:38
「……ねぇ、これはなに?」3階の廊下で、佐倉千歳は鋭いまなざしを壁面の掲示板へと向ける。常に背筋をまっすぐ伸ばし、服装にも乱れがまったくないその凛とした姿はまさに生徒会長らしい威厳に満ちている。そんな彼女の視線の先には、まだ貼られて新しいA4サイズの小さなチラシへと向けられている。彼女の後ろを歩いていた副会長・子本が答える。「これは、あれですね……エアリアルソニック部の新規部員募集の張り紙かと
2020年5月28日 02:11
――心を静かにして、自分の心象世界をただひたすらの静寂に包み込む。そして静かに目を開いたら、視線と一直線に手にした剣先を向ける。勝負は一瞬、勝つのは相手が先を焦った時、負けるのは自ら負けを呼びこんだ時。気がついた時には自分の足元には剣の道があった。じいちゃんに連れられて歩き始めたその道は、あの瞬間まで自分が一人で歩む道だと思っていた。その日、桜舞い散る春のあの日まだ堅さの残
2020年5月25日 21:11
昨晩は正直あまり寝られなかった。先輩に対して、自分が一体何を言っていたのか、なんて事を言ってしまったのか、自分が分からなくて、自己嫌悪に陥っていた。自分が発した言葉が間違っているとは思わない、オレは正論で、あの人はめちゃくちゃだ。だけど、あえてそんな事を言う必要なんてなかった。そういう関係を荒立てるような事をしないように上手くやるべきなのに。心がざらついてどうしようもない。机の上には昨日もら
2020年5月23日 12:29
外で話すと人に見つかるかもしれないので部室で、姫野先輩はタンクトップにジーンズという私服で手には大きめのタオル。髪は濡れていて、時折そのバスタオルで頭部をふいていた。「いやー、もう結構暑かったからついね」「それで、ついプールに全裸で入る女の子がどこにいるんですか?」「水着が見当たらなかったんだから、しょうがなくない?」「いや、しょうがなくなくないです。普通諦めるでしょそこは」「いやいや、
2020年5月6日 18:51
地元の最寄り駅まで帰宅した時には随分と日も落ちて、闇色にうっすら赤いラインがひかれているような、そんな景色だった。右手には秋葉原で購入したエースのパーツ群を抱えている。――今日はもう家に帰るだけでもいいのはいいんだけど、でも大会まで時間もないしできる事なら今日中にすべて入れ替えてテストだけでもしておきたい。万が一トラブルがあったとしても今日中にテストが出来れば明日には対応可能だ。一旦家に
2020年5月2日 11:38
「こらぁ、神谷野! 何考えてるんだ?」「えっ……?」不意に教壇からオレを呼ぶ声がする。「何度お前の名前をよばせりゃ気が済むんだ神谷野! 次の問題はお前の番だろうが。ったく、今週はどうなってんだ」その数学教師が語気を強める。気がつけばクラスの視線がこちらに向いていた。クスクスと嘲笑する声が混じっている、そっか、数学は順番にテキストの問題を解くんだったな。なんだろう、ほとんど同じ状況が今週