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カンダマサヨシ
2020年4月30日 01:27
「こらぁ、神谷野! 何考えてるんだ?」「えっ……?」不意に教壇からオレを呼ぶ声がする。「何度お前の名前をよばせりゃ気が済むんだ神谷野! 次の問題はお前の番だろうが。月曜だからってぼけっとしてんじゃないぞ」その数学教師が語気を強める。気がつけばクラスの視線がこちらに向いていた。クスクスと嘲笑する声が混じっている、そっか、数学は順番にテキストの問題を解くんだったな。「それともなんだ、優秀なお
2020年4月28日 19:42
気がつけば次のバトル開始時間が迫る。先ほどまでと違い、コンコースに一般客席・関係者席ともに人の数が増していく。「……なんだ?」少し異様な空気を感じ取っていた。増えていると言っても席が埋まる様なものではなかったが、明らかに学校のものであろうブレザータイプの制服を着た集団が観客席に集まってきていた。無論地方のエアリアルソニックと国営である中央のエアリアルソニックとではまったく比べ物にならない差はあ
2020年4月25日 10:37
「姫野先輩だろ? 学園の有名人だぜ」椅子を脚立代わりにしながら、カメは当然といった感じでそう答えた。昼休みの廊下、カメの手伝いで学内の掲示板に彼の部活が作った【桜山学園新聞5月号】を貼っていく。B2サイズの1枚の用紙に、学園の様々な情報が記載されている。各フロアや体育館入口や部活棟にも貼るらしく、絵美里も押しピンやガムテープを必要に応じてカメに手渡していく。「私だって知ってるよ、学園の超問題児
2020年4月20日 13:38
――8歳のオレは、クラスの英雄(ヒーロー)だった。技術者の父とじいちゃんの影響で、特に意識する事もなく機械いじりが得意になっていた。そうやって作ったメカ達はクラスメイトをいつも驚かせる。勉強だって相当できたし、スポーツもそんなに苦手じゃない。中でもGPドライブを使った空を飛ぶ工作は、ひとたび作れば周囲で取り合いが起こるほどの圧倒的人気を誇っていた。――オレは、クラスの英雄(ヒーロー)だった
2020年4月19日 13:10
「――で、試合に来れなかったと。ホントにぃ……? なんかウソ臭い」ブルーマンデーとはこういう事を言うのだろう。早朝、教室の窓際最後尾。オレの席に覆いかぶさるように両手をついて絵美里が眼前に迫る。肩口までで切りそろえられた明るめの茶髪が前のめりになった体制に併せて彼女の体の手前に落ちる。昨日体験した一部始終を言い訳として提示するも、絵美里は一向に納得してくれる様子がない。赤いフレームのメガネの奥
2020年4月18日 15:02
市街地へ向けて急勾配の登りとなっている坂、必死に両足のペダルを踏み込む。――クソッ、なんで自転車でこの坂を……右左、踏み込むたびに自転車も自分も悲鳴を上げる。それは、見るからにオンボロの自転車だった。体重をかけるたびにシャフトがギシギシと軋む。――ただ、音の割に車体の安定感は問題ない。自転車の整備は比較的丁寧にされていたのだろうか、耳障りで大きな音の割に、走行の不快感がなかったのは不思議
2020年4月17日 11:49
食事を済ませると、さっさと着替えを済ませる。別に休日なので、学生証にもなっている先ほどの端末さえ忘れなければ、制服を着用しなければならないなんて規定はなかった――はずだけど、一応白の襟シャツに学校指定のスラックスをチョイス。本来はブレザーの上着があるのだけど、今日は天気も良さそうだし、ネクタイと校章だけ持っていけばいいかな。斜めにかけるタイプのショルダーバックにそれらを入れておく。とりあえずは長袖
2020年4月15日 21:00
これは夢だ、そう自分が自分に告げる。目に映るまるで靄がかかった様に彩度の低い光景も、壁を一枚挟んだように弱く反響しながら聞こえてくる声も、そのどれもがここが現実ではないとオレに告げていた。そう、これは夢だ。オレはこの景色を知っている。16歳のクリスマスイブイブ、雪はない。吐く息をことごとく白く染める。肌を刺すような冷たい季節、だがこの場所だけは季節が入れ替わったような錯覚を覚えた。この会場
2020年4月14日 22:00
それは目標と呼ぶにはあまりにも距離がありすぎて、話せば聞いた人々が皆、嘲笑する誰かが言っていたどんな目標も実現するまでは不可能に見えるものだから、責任のない人の言葉に意味などないとそれでも私は私に迷ういつだって自分を信じていられるような、天下無双の強さなんてもの私、持ち合わせていない私だけじゃないきっとみんなそうなんじゃない?だから人は誰かと夢をみるのかもしれない人