見出し画像

長編小説『くちびるリビドー』第6話/1.もしも求めることなく与えられたなら(6)

「私がウニみたいなギザギザの丸だとしたら、恒士朗は完璧な丸。すべすべで滑らかで、ゴムボールのように柔らかくて軽いの。どんな地面の上でもポンポン弾んで生きていけるし、水の上ではプカプカ浮くことだってできる。それに比べて私は、ところどころ穴だらけで、形も微妙に歪んでて、ギザギザの棘だって見かけだけで実際は簡単にポキっと折れちゃうし。そのくせ『きれいな水の中でしか生きられな~い!』とか言っちゃって、とことん自分が嫌になる」//この“満たされなさ”はどこから来て、どこへ向かっていくのだろう……。あの頃、私の頭の中は「セックス」と「母乳」でいっぱいだった。

第1話は全文無料公開中☺︎/*



くちびるリビドー


湖臣かなた




〜 目  次 〜

1 もしも求めることなく与えられたなら
(1)→(6)

2 トンネルの先が白く光って見えるのは
(1)→(6)

3 まだ見ぬ景色の匂いを運ぶ風
(1)→(8)


1

もしも
求めることなく
与えられたなら


(6)


 目覚めたとき、そこにいたのは普段と何ら変わりのない寧旺だった。
 重い頭をもたげて店内を見回すと(この店に時計がないことをすっかりと忘れていたのだ)、カウンターの向こうで何かを作っている姿が見えた。

ここから先は

2,884字 / 1画像
この記事のみ ¥ 100
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

“はじめまして”のnoteに綴っていたのは「消えない灯火と初夏の風が、私の持ち味、使える魔法のはずだから」という言葉だった。なんだ……私、ちゃんとわかっていたんじゃないか。ここからは完成した『本』を手に、約束の仲間たちに出会いに行きます♪ この地球で、素敵なこと。そして《循環》☆