要 九十九

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『ビジネスという名の勇者』第3話

「あー、どうしてFからA、そしてSの7段階表記だった魔物のクラスが、AからZ表記になったかだと?」  空飛ぶボードに乗った男が苦笑しながら答える。 「そんなの決まってるだろ。魔物1体1体の強さが7段階じゃ分けれないくらい、大きく掛け離れてるからだよ」 ◆  地面から伸びた長方形の鉄の塊。巨木を遥かに超える硬さを持ったそれが大きな音と共に横にひしゃげた。  ここは、第六都市サーナン近隣にある鬱蒼としたオークの森。クラスAの魔物で溢れるこの場所で、唯一Bと認定された化け物

    • 『ビジネスという名の勇者』第2話

       大人すら震え上がるような状況で、まだ実戦経験すらない1人の少女が、震えながら同級生を助ける為に一歩踏み出したのを見た時……。  俺はそこに小さな、ほんの小さな希望の欠片を見た気がした……。 ◆ (……と、思ったんだが)  休憩のチャイムが鳴った瞬間、純白の鎧を着た長い桃髪の少女が、星型のネックレスを揺らしながら教室を出ていく。 (まだまだ掛かりそうだな)  その様子を青色の空飛ぶボードに横向きに寝転がりながら見ている長身顎髭の男。  手袋やトレンチコートなどの厚

      • 『ビジネスという名の勇者』第1話

         あれは私が6歳の頃の話だ。  姉妹で遊びに出掛けていた私達の前に現れたのは、100の魔人と、1人の魔王……。  都市に突然訪れた、大規模な襲撃。  泣きながら怯える妹リリアに自分の感情を悟られないよう、大丈夫だからと彼女を何度も励ました。  たった1人で街へ甚大な被害を与えられる魔王と相対した私達を助けたのは……。  ――たった1人の勇者……。  そんな絶望的な状況でも、少しも怯まず一歩前に踏み出す彼。  両手に星を耀かせながら1人で魔族を退けるその背中に、私

        • 週刊少年マガジン原作大賞結果発表

          本日、マガジン原作大賞の最終結果が出ました。 残念ながら私の作品は入賞ならずでした。 応援して頂いた皆さん、本当にほんとおぉぉにありがとうございました! 私自身としては、凄く悔しい結果でしたが、今後も私の作品を読んで下さる方に、もっと楽しいと、面白いと思って頂ける作品制作が出来るようにこれからも、もっともっと精進していきます! そして、最後に入賞された皆様本当におめでとうございます!

        『ビジネスという名の勇者』第3話

          週刊少年マガジン原作大賞 中間選考通過しました!

          お世話になっております。 要 九十九です。 今回私の書いた「この中には犯人しかいない」が週刊少年マガジン原作大賞の中間選考に選ばれました! これも今まで関わって下さった創作関係の皆様や、実際に作品を読んでくださった方、応援して下さった皆様全てのお陰です! 本当にありがとうございます! そして、選んで下さった週刊少年マガジン編集部とnoteの審査チームの皆様、本当にありがとうございます! noteからの通知メールを見て、店の中で思わず小躍りしてしまったくらい、めちゃく

          週刊少年マガジン原作大賞 中間選考通過しました!

          「Earth Ball」企画書

          キャッチコピー: チップ?金塊?賭けるのはそんなちゃちなもんじゃねぇ!地球全ベットだ! あらすじ: OS、人類から突然生まれ、畏怖される、人から外れた超能力者。 そのOSである主人公、椿焔は自らの力によって仲間を失い、荒んだ生活を送っていた。 そんな彼の前に現れたのは、仮面を付けた監督を名乗る男。 男は、焔をある野球チームに勧誘する。 にべもなく断る彼に、男はある話をし始める。 数年前、突如飛来した宇宙人。彼らは、侵略か反撃かの二択を人類に提示した。反撃の手段は地球

          「Earth Ball」企画書

          「この中には犯人しかいない」第3話

          「また100点!流石私達の娘ね」 「父さんも鼻が高いよ」  私の両親は裕福だった。そんな二人が見るのは私の成績や残した結果のみで、私自身を見た事はない。  自分が恵まれている事には自覚があった。だから、文句なんて絶対に言ってはいけない。  産まれた時から沢山の人にも物にも囲まれていた筈の私の心は空っぽだった。  年齢が上がり周りの人や物の数が増えるに比例して、私の空っぽの心もどんどん大きくなっていく。  それを満たす何かがずっと欲しかった。  ――ドサッ!  ひ

          「この中には犯人しかいない」第3話

          「この中には犯人しかいない」第2話

          「こらひなた!やりすぎじゃ!」 「えー」  聞き慣れた怒鳴り声。目の前にはあたしに伸された年上の男子。 「何度も言っとるじゃろ!正義なき拳はただの暴力じゃ」  じいちゃんのいつものお説教。 「その拳は誰かを守る為のもので、痛め付ける為のものじゃない!ワシはそんな事の為にお前に技を教えてる訳じゃないぞ」 「もー、分かったっす」  幼いあたしには祖父が何を言っているのか分からなかった。格闘技をやっていたのは、じいちゃんが好きで、道場が好きで、そこに通う人が好きだった

          「この中には犯人しかいない」第2話

          「この中には犯人しかいない」あらすじ

          突如、孤島に集められた30人の男女。島内に響き渡ったのは1ヶ月の間、提示される様々な課題にクリア出来なければ死という恐怖の要求だった。 クリア特典は3億の山分け。合わせて告げられたのは、島内で人を殺せば殺した個人に3億が追加で払われるという条件。 混乱する皆に主催者が続けて伝える。 それは……。 集められた30人の内、5人が殺人犯だという恐ろしい事実だった。 30人の内の1人。多感な年頃の主人公、陸は島で偶然出会った清楚な心優と、パワフルなひなたと課題を通じて仲良くな

          「この中には犯人しかいない」あらすじ

          「この中には犯人しかいない」第1話

          「レディース&ジェントルメーン!」  孤島に電子音で加工された声が響き渡る。その声を聞いて、島に連れてこられた30人が目を覚ました。  ある者は森の中で。又ある者は山の上で。砂漠の中央や、民家のテレビの前で目覚めた者、ビルに取り付けられた大型ビジョンを見上げている者もいる。それら全てが1つの島の中にいた。 「これから1ヶ月、皆さんにはこの島で過ごして貰いまぁす!」  森の中にスピーカーから発せられた声が響く。 「その間、様々な課題があなた達に課されまぁす」  砂漠

          「この中には犯人しかいない」第1話

          「五つの穴と遅刻勇者」第3話

          再生歴315年。 『セントレア貿易の町 トレーディア』 「鋼鉄姉妹が帰ってきたぞ」  その言葉を皮切りに町全体が歓声に包まれる。 「今日はアナザーを10体だって」 「流石鋼鉄姉妹!」 「鋼鉄姉妹万歳!」  町の人々が褒めている二人組。背の高い女性と小さな女性。姉妹と呼ばれていた2人は全身を銀色の鎧で覆っている為、どんな人物なのかはパッと見では分からない。 「ほら行きなさい」 「うん!」  その鎧の2人に子どもが花を持っていく。 「あのね、いつもありが……っ

          「五つの穴と遅刻勇者」第3話

          「五つの穴と遅刻勇者」第2話

          再生歴316年。 『セントレア辺境の村 ホープ』 「母ちゃん!!」 「ノノア!」  地面に倒れた大魔道士から反応はない。 「何で」  ――その時、空から何かがホープ達の目の前に降りてくる。現れたのは……。  白いアナザーだった。  村を襲っていた黒色とは別の、白い鎧のような表皮を纏った化物。その右手には白い剣が握られていた。 「お前が母ちゃんを?」 「ホープ!」  遅れて、ホープの祖父や他の村人達も合流してくる。傷を負ってはいるが、村の中にいた全員が無事だ

          「五つの穴と遅刻勇者」第2話

          「五つの穴と遅刻勇者」あらすじ

          人類と魔族との戦い。それは勇者一行の登場によって終わりを迎えた。人々に訪れた束の間の平和……。 しかし、空中に突如出現した大きな穴によって1000万人以上が帰らぬ人になる。 同時に穴の先から現れたのは人類でも魔族でもない第三の存在アナザー。新たな戦いが平和を奪い、15年近くが経った。 辺境の村に住む臆病な少年ホープは、元勇者一行であり、世界で4人の大魔道士である母に憧れていた。普段はだらしない母に首を傾げながらも、母や頑固な祖父、優しい祖母に愛される幸せな毎日が続くと思ってい

          「五つの穴と遅刻勇者」あらすじ

          「五つの穴と遅刻勇者」第1話

          再生歴301年。 『王都セントラル 繁華街』  人類と魔族……。その長きに渡る戦いは勇者一行の登場によって終わりを迎えた。人々に訪れた束の間平和。  ――バキッ!  世界で最も大きな国セントレアの王都であるセントラル。その繁華街には沢山の人たちが楽しそうに集まっていた。  魚のサンドを食べる男、鉄の剣を眺める冒険者、袋に詰まった薬草を並べる商人、白い鎧に身を包んだ強そうな金髪の男もいる。  ――バキッバキッ!  その大きな音に数人が反応した。  ――バキッバキッバ

          「五つの穴と遅刻勇者」第1話

          「鍛冶スキルと採掘スキルで掘り当てたのは人間と世界最強の称号でした」第3話

           ――カンッ!カンッ!  寂れた鍛冶工房。少年が宝刀の材料の1つ、程よく熱した玉鋼を傷んだ槌で叩いている。彼の頭に過るのは昨日の会話。 「お前、俺と亡命しないか?」 「……看守の方は?」 「今頃夢の中だよ」  牢屋の窓の前にフードで顔を隠した人物が立つ。 「俺の名前はレッド。お前が大釜才屈だな?」  顔を隠した人物が、フードを外す。レッドと名乗ったのは青い髪の若い女だった。彼女は悪魔のような笑顔を浮かべながら話を続ける。 「ただ武器を直しただけのお前に、いきな

          「鍛冶スキルと採掘スキルで掘り当てたのは人間と世界最強の称号でした」第3話

          「鍛冶スキルと採掘スキルで掘り当てたのは人間と世界最強の称号でした」第2話

          ゴールディア領内 ボックスの町へ向かう馬車の中 「はぁ、はぁ、はぁ!本当にたまらない!」  馬車の中、地味な格好の男と派手な格好の女が乗っている。女は煌びやかな装飾が施された刀の鞘に頬擦りをしていた。 「あのジェリー様?何をしているんですか?」 「刀の味を体に擦り付けてるのよ!」 (この人やべぇ) 「ランもやる?」 「やりません!というかジェリー様も運んでいる最中の宝刀にそんな事しないで下さい!」 「イヤよ!何でこの私が運搬なんて地味な仕事を引き受けたと思う?

          「鍛冶スキルと採掘スキルで掘り当てたのは人間と世界最強の称号でした」第2話