【ワーホリ国際恋愛体験談】 ⑫ その男、獣につき パースの男 (中編)
☆前回までのあらすじ☆
29歳、初ワーホリでオーストラリアへ!
いろんな出会いと別れを経験した後、パースの日本食レストランで働き始めた。
ある日シェアハウスのパーティーで、明らかに体目当てのオージーのベンに言い寄られて…
☆用語解説☆
・ワーホリ: ワーキングホリデービザ(若者の異文化交流を目的とした就労可能なビザ)、またはその保持者。
・バッパー: バックパッカーズホステルの略。安宿。
・パース: 西オーストラリア州の州都の美しい町。
・オージー: オーストラリア人、又はオーストラリアの○○。
※この記事はほぼノンフィクションです。誰かに迷惑が掛からないようちょっとだけフィクションを混ぜてます。
***
(本編ここから)
なんとかして私の体に触りたい獣(ベン)と触らせまいとする私とで攻防を繰り広げていると、彼の友人たちが私たちに気づいた。
「Hey, ベン!何やってんだよ、そんなとこで!
こっち来い!
カナコちゃんそいつのこと放って逃げておいで!」
バーベキューを囲んで友人たちが、バックヤードに面したウッドデッキから口々にベンをからかい笑っている。
助かった!
私の腕を掴もうとするベンを振り切り、冗談めかしながら彼らの後ろに逃げ、みんなからのビールの誘いをかわしつつ流れるように部屋に戻った。
お腹はまだ満たされてなかったけどしょうがない。あそこには獣が居る。
あのままベンと一緒になんて居られなかった。
シェアハウスにはトイレ付きシャワールームが二箇所あった。
私の部屋と同じ中地下にあるシャワールームで汗を流し、ほうっと一息ついてベッドにつく。
私は一日の汚れを落としてキレイな状態でベッドに入りたいタイプなのだ。
ベンに触られた箇所をしっかり清めた。
ベッドの上でいつも通りノートパソコンを開いた。
今日のことをネットに晒してやる!と、キーボードを打つ指に自然と力が入った。
上ではまだパーティーで騒がしかったけど、ひとりの時間は落ち着く。
だんだんと冷静さを取り戻してきた。お腹が鳴り始める前に眠りにつこうか…
そのとき、コンコンッと誰かがドアをノックした。
まさか、というより、やっぱりベン。
部屋の明かりを消しておくべきだったか。
このシェアハウスではシャワールーム以外の部屋のドアに鍵はついていない。開放的なオーストラリアでは一般的だと思う。
ベンは私の了解を待たずに勝手にドアを開けてきた。
「Hiカナコ、今ね、バーベキューしててお肉をたくさん焼いてるんだ。
一緒に食べない?美味しいよ?」
お腹は減っていたけどもう峠は越したし、何よりベンの近くに居ては自分の身が危ない。
「ううん、歯も磨いちゃったしいらない。ありがとう。
私の分もたくさん食べておいでよ。私はもう寝るからさ。」
部屋の中に入って来られて二人きりになるのも恐いので、彼を押し出してドアを閉めようとした。
ベンは軽々とドアを押し開ける。
「でもさっきあんまり食べられなかったでしょ?
持ってきてあげようか?」
お前のせいでな!
内側から力を込めてドアを押す私と、それを開けようとする筋肉の塊。
もちろん私が敵うはずもなく、何でもないようにドアはまた開け放たれた。
開かれたドアの向こうからベンが、私を上から下までまじまじと見ている。
小さめのTシャツにジャージー素材のパンツという私の定番パジャマは、寝てる間に着崩れするのも気持ち悪いので体のラインがよく分かるピッタリした格好。
ブラジャーはもう外していた。
彼の無遠慮な視線に耐えられなくなり、私はさり気に胸を隠すように右手で左腕を引き寄せてちょっと俯いた。
俯いてしまったのだ!
危険が迫ったとき、決して対象物から目を離してはいけないのに!
獣の行動はときに人類の想像を超える。
俯いたその瞬間、奴が私を肩まで持ち上げたのだ。
ベンは体も大きいが身長も高い。180はゆうにあったはずだ。
視点が急に高くなり、何が起こったのか把握するのにちょっと時間が掛かった。
あまりにびっくりすると結構悲鳴は出ないもので、一瞬の間を置いてやっと脳みそが悲鳴を上げろと指令を下した。
「やーおろしてー!!!」
日本語で叫んで手足をバタバタさせた。
が、筋肉の塊はびくともしない。
ベンが私を担いで行く姿を見て、周囲は私たちがふざけていると思ったようで爆笑をかっさらった。
いや、ホントこれ笑いごとじゃないし!
なぜか私は外に連れ出され、誰かの車のボンネットの上にベンと向かい合わせにして降ろされた。
「ここなら誰も居ない。」
満足気に獣は言った。
ああ、本当の馬鹿なんだ、コイツは…。
私の部屋こそ二人きりで居られる絶好の密室だったのに。
彼の頭の中も筋肉が詰まっているようで私は助かった。エナジードリンクに感謝だ。
ベンはその大きな両手で私を支えたまま、彼自身の腰を密着させてきた。
「さっきも言ったけど、首筋だとか腰だとか、ああ、君はなんて美しいんだ。
これはアートだ!
こんな美しい身体、触るなって言う方が無理だよ。」
私のあちこちを舐め回すように見てくるいやらしく輝く青い瞳はまるっきり遠慮が無い。
私の首筋や腰、おしり、太ももを、大きな手で撫でまわし始めた。
私は必至でその肉塊を押しのけようと試みるも、何の効果も得られなかった。
忙しなく服の上を滑らせていたベンの手はガッツリと私のおしりを捕らえ、腰をくねらせながら彼の中心の部分を押し付けてきた。
気持ち悪い以外の何物でもない!
全身に鳥肌が立った。
やばい!今度こそやばい!
この時ばかりは本当に犯されるかもしれないと思った。
やばいという時こそ、私はいつもその後に起こり得る最悪のことを想像する。
この時考えたのは、犯されて、それがベンの彼女さんに変な感じでバレて、恨まれて、変な感じで私の噂が流れる…
いや、これ地獄だわ。
好きでもない男のせいでそんな目に遭うのはごめんだ。
何とかせねば。
考えろ!
今出来ることは何か。
何を守り、何を捨てられるか…。
(続く)
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