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ヴィンテージマガジンから考えるクリエイティブとサステナブル

水野可奈子

最近の私の遊びは、90年代リバイバルの波を楽しむために、秘蔵の古い雑誌棚から、当時のファッション雑誌を持ち出して(しかも今の季節に合う号をピックアップ)、明日着ていく服のインスピレーションを得ること。あまりにも夢中になってガン見するうちに、もう新しい雑誌を読む気にならなくなる。そして、なんだかタイムスリップしてるみたいな感覚になり、今が何年代か?わからなくなってくる。それぐらい、トレンドはリバイバルして、30年前のスタイルは色褪せない魅力を放つ。それどころか、今年のコレクションよりも輝いて見えるから不思議だ。

●年代ごとのシンボリックなファッションスタイル

90年代と言えば、スーパーモデルブームと、老舗メゾンのデザイナー刷新ブームがファッション業界に吹き荒れていて、つい数年前まで肩パッドをモリモリ両肩に乗せ、ぶっとい眉毛に真っ赤なルージュでボリューミーなアクセサリーやハイウエストのボトムを身につけ、ヒールで闊歩していた人たちも、眉毛を細めにカットし、試着室ではピタピタのローライズデニムと格闘するようになった時代。パンツからはタックが消え、バッグも装飾少なめでシンプルに、まるで80年代の特徴を嫌うかのように、正反対な要素がとてつもなく新しく見えた。トム・フォードがデザインするグッチや、ダナ・キャラン、カルバン・クライン、マルジェラが手掛けるエルメスも、驚くほどシンプルなスタイルを展開していたわけだが、その激変とも言える勢いの新しい波を、2000年代以降の10年ごとで、どれほど感じることがあっただろうか?

40年代ファッション、50年代ファッション、60年代、70年代、80、90と、ファッション好きな人なら、頭になんとなく各時代の特徴的なスタイルが浮かぶだろう。では、2000年、2010年、2020年代はどうだろう?確かに、Y2Kファッションという言葉があるように、2000年スタイルはある種の特徴をイメージさせるようだが、実際は2000年代、ではなく90年代の延長であり、お腹見せ、ボリューミーな厚底シューズ、バケットハットなども、90年代で確立されたトレンドスタイルだ。やはり、2000年代以降、それ以前に見られたような10年ごとの象徴的なファッションスタイルは現れていないように思える。

●トレンドづくりのループの果て

これはどういうことか?と、考えると、デザインとサステナビリティの話しにつながる。
私が美大で影響を受けた、デザインを広義に捉えた教授の言葉にこんな持論がある。

「人間がデザインによって幸福を感じられたのは80年代までであり、それ以降、デザインやデザイナーは、地球環境を破壊する手助けをしてしまった」

とてもショッキングな投げかけであり、講義でこの言葉を聞いたとき、凍りついたことを覚えているが、前述のトレンドの話しと重ね合わせると、とても腹落ちする。

古い雑誌を見ていて思うのは、今の雑誌には無いエネルギーと、誌面からあふれるワクワク。子供がテレビ画面を凝視して動かないときみたいに、今見ても誌面に釘付けにされてしまうような吸引力を放っている。それはたぶん、まだ90年代まではトレンドが本当の意味で新しかったから、毎年代、一番最初に世の中に放たれたクリエイティビティだったからじゃないか?と思う。つまり、人間は2000年までで、新しいトレンドを作りきってしまったんだと思うのだ。トレンド開発の一巡目が完結した、みたいなイメージで、2000年以降は結局過去の遺産を縦横無尽につなぎ合わせたり、アニメやゲームなど異領域とコラボするなどして、目新しさと話題を辛うじて作り出し、消費を煽っているに過ぎない、とさえ思う。そこには、インターネットの誕生が大きく影響していて、マス媒体が発信する号令のような流行の仕方ではなく、消費者が自らの感覚で情報を取得し、好きなところだけ取り入れて楽しむスタイルに変わったことで、トレンドは世界の一大潮流では無くなったという見方もできるだろう。

●作る事だけがクリエイティブではないはず

それにしたって、これまで人間は洋服を作り過ぎた。トレンドを生み出すことに躍起になり過ぎた。

ファッションに限らず、新しい何かを生み出すことで富を得る構造に追い立てられるように、20世紀を過ごしてしまったのだ。でも、そうそう新しいものを生み出し続けられるわけがない。

世の中に全く発想されていないクリエイティブなんて、あるのだろうか?

いやむしろ、常に新しいトレンドを生み出すことだけが、クリエイティブな行為なのだろうか?

あらゆる産業において、人間はちょっと、脅迫的に新しいものを作り出す義務感に苛まれている、そんな気さえする。やや極論的な考えかもしれないが、全ての産業で、新しいものを作ることに一定の規制をし、その分、これまで作ってきたものをいかに活用するか?というビジネスモデルにシフトを促すべきだと思う。リサイクル素材の活用やセカンドハンドショップ、フリマやオークションなどは既に生活に浸透しつつあるが、そういう草の根レベルのスピード感では間に合わない気がするのだ。これまで新しいものをさんざん作り出してきた大手メーカーが、作ることではなく、活用することを生業の中心に据えるような大変革が必要なのではないか?と、古い雑誌を見つめながらため息をついてしまう。

同時に、今の時代に新しい物を作り出す責任みたいな事についても、どうしても考えてしまうのだ。今計画してるそれ、本当にこの世の中に必要ですか?と。

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