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新卒採用で”意欲の高い外国人留学生が多い?”の感覚を、事実(データ)で検証してみた

こんにちは、かなけんです。

■冒頭

本日のテーマはこちら。
「新卒採用で”意欲の高い外国人留学生が多い?”の感覚を、事実(データ)で検証してみた」


私の主観的、感覚的な話から入ります。

「日本人より、総じて外国人のほうが”ハングリー”な気がするけど、気のせい?」
「日本人が生ぬるいのか、”外国人が優秀”だからなのか、どっちだろう?」


中途採用も含めての話ですが、一定の採用量(年間50~100名規模)で活動をしていると、当然、”外国人の応募者”との接点も増えます。

自分の会社の場合、2020年1月時点の従業員数が200名弱で、外国人は”10名強”が在籍。外国人比率でいうと”5%”です。(中国人、韓国人、台湾人の方などアジアの方中心。)

中途・新卒と合わせて全体で年間約2500名の応募があるのですが、仮にそのうち外国人比率5%とした場合、「2,500人×5%」で”年間125人”が外国人の応募者となります。(肌感覚はもっと多い。)

「日本語を使って仕事が一定できるか」が前提になりますが、国籍は関係なく、”良い人を採用したい”ので、良い方がいれば外国人の方も採用しています。(裏を返せば、外国人を積極的に採りたいわけでもない。)


■日本人よりも、外国人は〇〇が高い?

外国人を優先して採用したいとは思っていない。

でも、実際に外国人の方と会うと、冒頭の”感覚(日本人より意欲高い??)”を思う時が結構、あるんです。

外国人の方々は”やる気に満ち溢れ、向上心が高く、優秀に映ること”が多い。

あと、”最近、外国人の方が増えた?”という感覚もあります。

以下、Google先生で見つけたQAサイトを見る限りでは、様々なご意見・ご主張があり、”定性的な見解”は理解できたものの、なんかスッキリせず




ということで、このnoteでは私のモヤモヤを、”事実(データ)”を見ることで解消してみたいと思います。

だいぶ長文で、データが並ぶので目がチカチカするかもしれませんが、お付き合いください。

※なお、このnoteの作成にあたっては、文部科学省、法務省、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)、DISCO(キャリタス)のデータを主に活用させてもらいました。


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■国主導で外国人留学生を増やしていた

まず、調べ始めて速攻で分かったのは、2010年から2020年にかけて、”国主導”で外国人留学生をめちゃくちゃ増やそうとしていました。

以下Wikiと文部科学省のページです。

引用:
福田康夫元総理が「日本を世界に開かれた国とし、人の流れを拡大していくために重要である」として、第169回国会(2008年1月)の施策方針演説の中で打ち出したことにより、2008年7月29日文部科学省によって策定された計画の一つ。


引用:2008年7月8日 中央教育審議会大学分科会 留学生特別委員会

現在我が国が受け入れている留学生数は約11万8千人(2007年5月時点)であり、(中略)。これは先進諸国の留学生数及びその割合(例えば、英国35万6千人、24.9%、ドイツ24万8千人、12.3%、フランス26万5千人、11.9%)に比べても低い数字と言わざるを得ない。

(中略)全学生の1割程度に相当する30万人の留学生がキャンパスの中を行き交うような姿にすることにより我が国の高等教育機関は大きく変わることになる。(中略)「グローバル戦略」展開の一環として「留学生30万人計画」を位置づけ、2020年を目途に30万人を目指し、当面今後5年間で大幅な拡大を目指すこととする。


2008年に、「よっしゃ、やるぞー!!」というような声が上がり、2013年”閣議決定”され、その後、本格的に取り組みが始まった、という流れでした。

以下の文部科学省の資料が分かりやすかったので、リンクを貼ります。
※2ページほどスライドも抜粋して掲載します。


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引用:
【KPI】2020年までに留学生交流を倍増させる(2013年閣議決定)
日本人の海外留学:
大学生等 6万人(2010年)→ 12万人
高校生 3万人(2011年)→ 6万人
外国人留学生の受入れ:
14万人(2012年)→ 30万人 ★ココ★

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年間あたりの予算が250億円強となっているので、留学生30万人とした場合、1人あたり”5~10万円”となります。

素人の私には、その数字自体が”どれくらい凄いか”は分かりません。

しかし、国としての”本気度”は感じました。

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↑ 国の人のイメージ(笑)


■外国人留学生の推移(全体)

では、実際の留学生の推移はどうなっているのか。

「法務省のビザ発行データ」からも分かるみたいですが、今回は独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)のデータを見にいきました。


データが各年でバラバラなので、ピックアップが大変でしたが、私の普通のExcelスキルを駆使し、以下のような一覧表にしました。


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図①:外国人留学生の推移(2000~2019年)


おおー、2013年以降、めっちゃ留学生増えてます!

法務省側のデータだとすでに2018年末時点で30万人超えたみたいです。

このnoteを公開するタイミングでは2019年分がなかったですが、JASSOのデータでも、間違いなく30万人は超えているでしょう。


ただ、1点だけ注意が必要です。

勘の良い方は気づくと思いますが、2013年→2014年の初年度だけ、前年比”35%増”って異常値が出ています。

以下をご覧ください。

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引用:JASSO資料


そう、一番右側の数字が2013年(平成25年)から足されている

カラクリとしては、計上の仕方を変えていました。

それまでは含めていなかった「日本語教育機関への留学生」もカウントするようにしたようです。(そりゃ一気に増えますわ。笑)

ただ、仮にその数字を差し引いたとしても、全体として2020年にかけて数字が伸びているのは間違いありません。

率直に、この努力はすごいなと思いました。

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↑ 国の人、頑張ってる!!(笑)


ただ、私が知りたいのは、”大卒の新卒採用”の中での変化について。

ですので、ここから先は、データを加工しながら”大学生(学部生・大学院生)の就職”に焦点を当てさせていただきます。(科目履修生などは除く)


■外国人留学生の推移(大学生・大学院生)

先ほどのJASSOのデータのうち、大学生(学部生)と大学院生(修士、博士)の2つに焦点を当てた数字を可視化してみました。


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図②:外国人留学生の大学生の推移(2000年~2019年)


パイは小さくなりましたが、留学生全体と同じくこの20年間、基本的に右肩上がりで伸びていることが分かりました。


では次に、日本人も含めた「日本の大学の総学生数」を見てみましょう。

データ元は、文部科学省が出している学校基本調査です。


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図③:日本の大学の総学生数(2000年~2019年)


だいたい最近の大学生と大学院生の数は280万人ということが分かりますね。


次に図②と図③のデータをMIXします。

ここから先の数字は、2つの異なるルートから得たデータを加工しますので、事実ではなく、”おおよそ・推定”ですのでご注意ください。


まず、就活の”1世代”のおおよそ人数を算出するため。それぞれ「大学生数÷4(4学年)」と「大学院生数÷2(2学年)」を行い、その数字を足し合わせものを算出します。

その数字を「留学生 ÷ 学生総数 = 外国人比率」で一覧表にしたものが以下です。

※大学と大学院が混在しますが、分かりやすいように「1学年」という言葉を使います。


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図④:就活の1世代(大学生)あたりの外国人比率(2000年~2019年)


1世代あたりの外国人比率が20年前は”2.6%”だったのが、2018年は”6%弱”です。

2000→2020年の20年間で、外国人留学生は人数も全体比率も共に、おおよそ2倍強になった。

ということになります。

少し見やすいようにグラフにしてみました。

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図⑤:大学生1学年の全体数と外国人比率の推移(2000年~2019年)


■外国人留学生の就職状況(大学生・大学院生)

次に、外国人留学生の方の就職状況を可視化します。

データ元は、法務省の「留学生の日本企業等への就職状況」を参照しています。

就職予定の大学生(学部生)と大学院生に対して発行された”年間のビザ発行数”を、「ビザ発行数≒日本での就職数」としてカウントし、データをMIXしてみました。

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図⑥:1学年(就活1世代)のうち、日本での就職率(2000年~2019年)
※2012年と13年はデータが欠損しており、見当たらず。。


大学や大学院に在籍する外国人留学生のうち、30%強(3分の1)の方が日本で就職をしている、という数字が見えてきましたね。

後で掲載しますが、文科省が出している就職状況のレポートも数字は違えど”30%強”という割合は一緒だったので、だいたい合ってそうです。


次に毎年の大卒内定率を「≒就職率」として、その年に就職した大卒・大学院卒の就職者数を算出しました。

その数字と、先ほどの図⑥の数字を掛け合わせたものが以下です。


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図⑦:1学年(就活1世代)の就職者の外国人比率(2008年~2019年)


2010年前後では”1%”という状況だったものが、最近では外国人比率が”2%強”になってきたということなので、「新卒100人に対して、2人が外国人」という時代ということですね。

人によって「10年で2倍になったのは多い。増えたな。」と感じる人と、「まだ、全体の2%程度なんだ。意外と少ないね。」と感じる人と意見が分かれそうな数字ですね。


■外国人留学生にとっての日本の”SHU KA TSU”

ある程度、全体の数や比率が見えてきたので、次は外国人にとっての就活がどうなっているのかを調べてみました。

私の会社でも利用してお世話になっている、キャリタス(DISCO社)のレポートをベースにしています。


いくつか抜粋してご紹介します。

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引用:
卒業後も”日本で働きたい”と思う外国人留学生は”約80%”
(①日系志望-外資系志望比率は、だいだい”3:2”程度)


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引用:
”出世欲(上を目指したい気持ち)”は、日本人よりも、外国人留学生のほうが高い


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引用:
外国人留学生の就職活動は、日本人よりも開始時期が遅く、内定も遅れ、終わる時期も遅くなりがち
”約80%”の外国人留学生が、”就活は難しい”と感じている。


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引用:
外国人留学生は、総じて就活で困っている
例えば「どこが留学生を積極的に採用しているのか」、「就活のノウハウ全般」、「先輩からの助言」などを欲している。


日本人にとっては”就活”は普通のことですが、外国人留学生の”SHU KA TSU”は大変ということが分かりますね。

そりゃ、学生全体のわずか6%しかおらず、その中で、実際に就職する人は30%強(全体の2%)しかいないわけですから、情報マイノリティになりますよね。

自分自身に置き換え、私たち日本人が「海外の大学に留学し、その国で就職しようとしたら・・・」と考えれば、容易に想像がつきますね。


でも、色々と調べていくと、以下のような”お助け情報”もちゃんとありました。

英語版も覗いてみると面白いです。「日本の就活とは何ぞや」が、真面目に書いてあります。笑)


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★エントリーシートとは?

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★服装のマナーについて

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★お辞儀の角度、座る姿勢について(これ、いる?笑)

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なんか、日本の就活って、堅苦しいですね。。

外国人留学生からすると、ハードルが高くなる気持ちも分かります。

厚切りジェイソンさんの「Why Japanese People!!」が聞こえてきそうです。笑)


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■意欲が高いかは分からない。けど、外国人の”量”は増えている

結局のところ、冒頭で頭出しをした「日本人より外国人はハングリー?優秀?」という部分については、正直、分かりません。

ごめんなさい。

ただ、上記で記載したように”数字”で見る限りは、「外国人留学生は人数が増えている」ということと、「外国人が日本で就職する人数も増えている」ということです。

結論:
外国人のほうが日本人よりも意欲が高い(ハングリー・優秀)は分からないが、母数(量)は確実に増えた。
母数が増えれば、優秀だと感じる人も当然、増える。(その逆も?)


ただ、せっかく外国人留学生の総数が増えている中、就職可能な留学生(毎年4.5万人)のうち、30%強の約1.5万人(年あたり)しか日本で就職してもらっていないのは、ちょっと寂しいですね。

せっかく日本で就職したいという”意欲のある”留学生が”約80%”もいて、外資系希望を除いたとしても、”50%前後”の方は、日系企業で働きたいと、当初は思ってくれているわけです。

仮説:意欲が高いことより、意欲が下がりやすいことのほうが問題

外国人留学生は、日本人と比べて”意欲が高い(ハングリー・優秀)か”どうかより、今の日本の環境のままだと、だんだんと”日本で働きたいという意欲が下がりやすい”というほうが問題では?


せっかく、わざわざ遠い異国に来てくれたわけですから、意欲が下がって、やる気が続かないリスク(他国に出ていってしまうリスク)への対処に目を向けたほうが大事ではないかと思う次第です。


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■今後どうなっていくのか

でも、安心してください。

私ごときが、偉そうにモノを申さなくても、ちゃんと国も動いているようです。

以下のような資料もありました。

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今後の取り組み課題やテーマ
・入学試験の多様化
・大学の受け入れ環境整備
・就活支援
・就職後の定着やキャリアアップ支援
・新たな次世代の留学生のパイプ役となるような先輩外国人労働者の存在を増やす

というような取り組みが検討、実行されているようです。

外国人の方が日本で働き、日本で長期的にキャリアを高められるような環境を全員でつくっていきたいものですね。


一方、綺麗ごとだけではないようです。

例えば以下のように、留学生として呼び寄せながら、学ばせることなく単純労働者として搾取するような悪質なケースも発生しているようです。


外国人留学生の方々に、単純労働をさせるのか。

それとも、高度人材にシフトしてもらい、日本人以上に活躍いただくのか。

日本の人口がダウントレンドで、様々なマーケットが小さくなっていく2020年代、2030年代、2040年代といった近未来を考えれば、あまり選択の余地は無いように思います。

2020年、外国人留学生の総数が30万人突破した後の今後の取り組み、動向に注目してきましょう。


微力ながら、私も1人のキャリアコンサルタントとして、個々人の就職リテラシー向上に貢献したいと思います。(語学力が足りないけど・・・汗

また、1人の企業の人事責任者として、外国人の採用、その後のご活躍も支援していきたいと思います。


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皆さんも、身近なところで、外国人留学生で”SHU KA TSU中”の方を見かけたら、支え合っていきましょう!



1人でも多くの方が、笑顔で働くことを楽しめる世の中を創っていくべく、発信してまいります!!サポートよろしくお願いいたします。