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紫の少女

⚠︎殺人等の話になります。苦手な方、18歳未満の方は読まないことをお勧めします。故に有料とさせていただきます。
また、このストーリー、並びに人物はフィクションです。実際の事件や人物とは関係ありません。


 あたり一面に花が咲き乱れる。

 秋桜が咲くこの庭は、この邸宅に住む女性が趣味で植えた花がたくさん植えられている。
 秋桜の他にも別の種類も植えているようだ。
 だが、私はふと疑問に思う。
「とても綺麗だけど……紫色だらけ……」
 花なんていろいろな色があるはずだ。赤や白、ピンクやオレンジ。だが、庭一面が紫で覆われている。とても幻想的で美しい。きっと庭の所有者は紫が好きなのだろう。
「不満でしたら、白もありますよ?」
 いつから居たのだろう。後ろから声がかかる。突然のことに驚き、振り返ると、邸宅の主人バイオレットさんが佇んでいた。
「い、いえ! 不満というわけではありません。ただ不思議に思いまして。紫がお好きなんですね?」
「ふふっ、いいえ。私は赤が好きなんです」
「え、ではどうして……」
「紫にもいろんな紫があるんですよ。青みがかったもの、赤みがかったもの……。純粋な赤というよりは……そう、ワインレッドのような色……その方が美しくて綺麗だと思うんです」
 そう言われてみれば、どの花も赤みが強い紫だ。こういう色をする秋桜はあるのだろうか。
「品種改良でもしているんですか?」
「いえ? そのままの状態で、そのまま植えております。でも、確かに……人の手が加わらなくとも自然と新種が生まれるかもしれませんね」
「自然の力はすごいですしね。……他にも植えていますね。紫陽花と……これはよく知りませんね……」
「ええ、トリカブトというんです。花言葉は騎士道」
「へえ、かっこいいですね」
「花言葉は人が勝手につけたものに過ぎません。名前もそうですが……。それがその花の印象に繋がるんです。ただ、それだけです」
 バイオレットさんの表情が固くなる。トリカブトを見る目が険しい。
「ああ、すみません。少し疲れてしまったようです。お茶にしませんか?」
 言われた通り、バイオレットさんの表情は固く、それは疲れから来たものだと悟った。すぐに返事をする。
「ええ、そうしましょう」

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