マガジンのカバー画像

機械仕掛けの街【有料】

8
この街は機械で動いている街。 住んでいる者も機械人間。食べているものや生活も普通の人間とは違う。 その中で唯一の人間である「俺」はそんな機械人間から「人間様」と呼ばれている。 こ…
運営しているクリエイター

#不思議な話

機械仕掛けの街8

機械仕掛けの街8

 デルタは目を開ける。
 しばらくぼーっとしていたが、突然その目から油が流れる。溢れるように。
 止める間もなかった。ただ、何があったのかは知らない自分が止めるのもお門違いだとも思い、そのままにしておくことにした。
 星野瞳とアルファはそっとデルタの部屋から出る。

 突然訪問し、自身の目的のために入ったデルタの家。
 慌てていたということもあり、じっくりと見ていなかった。一旦落ち着いたため、周り

もっとみる
機械仕掛けの街5

機械仕掛けの街5

「あ、アルファ?」
 星野瞳はカゴいっぱいに花を敷き詰めて抱きかかえ、街を歩いている。道は殺風景で、植物一つもなく、金属で作られていて無機質だ。建物は機械仕掛けで歯車が回っている。街の中央には大きな時計塔が聳え立ち、その大きな建物も大小様々な歯車で動いている。
 その時計塔の傍では唯一知っている機械人間。確かアルファと呼ばれていた。その影に気づき、近づいてみる。
 相変わらず、紙が大好物のようで紙

もっとみる
機械仕掛けの街4

機械仕掛けの街4

「いらっしゃいませー!」
 家に帰ると、早速嗅いだことのない芳醇な香りが鼻をくすぐる。と同時に、星野瞳の明るい声が出迎える。
「え?」
 見ると、見慣れているはずの自身の家が、小さな花屋になっていた。殺風景だった壁には華やかな花が鎮座している。大小様々でカラフルになっていた。芳醇な香りはこの花達から香ってきているのだろう。
 おそらく初めての表情をしているだろう。驚きと困惑がないまぜになっている。

もっとみる
機械仕掛けの街2

機械仕掛けの街2

「これでいいだろう。もう一度動いてみて」
 目の前の女性は頷いて、腕を動かす。
「問題ないみたいだね。念のため、あまり動かさないことをお勧めするよ。あと、これを。また不調を感じた時はこのパーツを体に埋め込んでみて。良くなるはずだから。それでもダメなら、また俺のところに来て」
「ありがとう、人間様。では、お礼にこれを」
 女性は自身の腕から紙を数枚出して、俺の目の前に差し出す。
 慣れては来たが、や

もっとみる
機械仕掛けの街1

機械仕掛けの街1

 目の前の男は、必死に自身の手で紙を掴んでは口へ運ぶのを繰り返している。口に紙が入るたびに機械音が響き、紙が取り込まれていく。
「やっぱり無地に限るよ。シンプルでさっぱりしていて美味しい」
「そうか」

もっとみる