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【読書】遠くの未来ではなく、目の前のいまを見てみる。

本日の一冊
「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済
小川さやか 光文社新書

といってもLiving for Todayは、なんら特別な生き方ではない。あらゆる人間はみな、その日その日を生きている。それを想起していないだけだ。



一方で日本やアメリカのような社会では、逆に、明日のため、未来のために、いまを手段化したり、犠牲にしたり、ということを徹底的にやっている。いい学校、いい就職、いい老後のためには、いまを楽しんでいる暇などない、というわけです。(……)効率化を目的化した現代社会は加速し続けるしかない社会です。

 それがいいか悪いかを抜きにして、多くの人が「いい学校、いい就職、いい老後のために」という考えを持っているのではないでしょうか? 

 あまりにも当たり前なことで、改めて考えたこともありませんでした。

 私たちは頭の中で未来を思い描いてしまいます。未来に何が起こるか、なんていくら考えてもわからないのに。それでも良くなる可能性が少しでも上がるように行動せずにはいられないのです。

 この本はさまざまな地域で「その日暮らし」の生活を送る社会やその経済を通じて、私たちの資本主義、成果主義な社会に問いを投げかけます。

 アマゾンで暮らす、現在を大切に直接体験に重きを置く部族ピダハン。「できるだけ少ない努力で暮らしを成り立たせようとしている」トングウェ人。タンザニアのマチンガと呼ばれる零細商人の生計多様化戦略など「Living for Today」の生き方をする人びとが紹介されます。

   *

 そして、この本が書かれたときよりもさらに社会は効率を求め、加速しているように思われます。

「タイパ」という言葉に象徴されるようにいろいろなものが倍速で、ショートで、あっという間に(下手したら記憶に残らないほど速く)流れていきます。

 そんな社会は速すぎて、少なくない人たちを振り落としてしまっているように感じます。一度振り落とされてしまえば、すごいスピードで先を行く社会に追いつくのはなかなか大変なことです。

 私は数時間かけて一冊の本を読み、さらに三十分から一時間かけてnoteを書いているわけなのですが、速い社会に慣れた人からしたらそれも考えられないことなのかもしれません。


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 この中で一冊、面白そうと思ってもらえたら嬉しいです。
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