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Soap Opera-3

あらすじ。34年連れ添った、37歳年上のおじを失い、悲壮にくれる近所のおば。そのおばを守るためにやってきた非常に気性の激しい姉おば3と、実子たちの財産をハゲタカのように狙う発言に怒りの夫アルゴ。

怒りの天魔王どもはハゲタカ実子にがつんと言ってやるためにいざ、突撃!そんな話の続きである。

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怒りの天魔王どもの話の続きを書く前に、一つ、ご紹介しておきたいメッセージがございます。近所のおばは、学校で助手のお仕事をしているのだが、その生徒(12歳)のお一人から心あたたまるメールがきたのです。

「Mrs.◯◯(おばの名前)旦那さんが亡くなったと聞きました。ご愁傷さまです。あなたがきっと悲しみに沈んでいると思うと心が痛いです。あなたのいない学校はとてもつまらないもので、あなたが早くいつもの笑顔で戻って来てくれることを祈っています。クラスのみんなはカードを書いたのだけど、あいにく私、その日、学校、停学をくらって書けなかったからこうしてメールすることにしました。それじゃまた」

近所のおばを想う優しき心と〆の学校、停学をくらっての部分の落差の激しさに、涙を誘いつつも爆笑のオチをつけてくるという素晴らしきメッセージ。あなたのいない学校うんぬん、てか、君、学校、行けてないじゃぁないの!って話。

ともあれ、近所のおばは、困った側面も多々あるものの、本当にたくさんの人から愛されるそんな人物なのだ。

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実子たちによる財産狙い発言に我慢ならなくなったピットブルおば(近所のおばの姉)と夫アルゴ。今はやめときなよ、という姉おば2、近所のおば、私の言葉を無視して、おじの実子のいるリビングへと突撃していった。ちなみにその日もおじの実子(娘)は、傷心の近所のおばに食事なぞの用意をさせ、1階リビングでだらだらとテレビをみていた。

突撃前にちょっと一服。ということで、二人はタバコを吸いに外に出たのだという。それがなんのきっかけだったのかは謎であるが、10分ほどして、二人はすっかり落ち着き、我々のいる2階へと戻ってきた。ものすごく気持ちの悪い笑顔を浮かべて。

よかった……修羅場回避。そうよね、激烈に怒り狂っているとはいえ、大人だし、なんせおじが亡くなったばかりなのだ。ピットブルおばも夫アルゴもすぐに喧嘩とか乱闘とかやるわけないのぅ、と内心、ほっとした私であった。だが、ほっとしたのも束の間であった。

ピットブルおば「完全なる絶望感と後悔を与えたいので、ちょっと作戦を練った方が良い。まず自分たちのガードをがっちり固めてから徹底的に攻撃してやることにした(フンスッ)」

夫アルゴ「言葉でやいやい言う程度で心を改め、協力的になるような輩ではないゆえ、おばの言う通り、事実をきっちり組み上げてからやってやるのが得策であろう(フンスッ)」

怒りの大魔王ども、唐突なる曹操モードである
曹操は危険で、疑わしく、複雑な人で虐殺も粛清も厭わぬ覇業から「乱世の奸雄」と評されました。曹操

完全なる絶望感と後悔。徹底的に攻撃。とても葬儀を控えている家族の言葉とは思えないワードの連続である。

この人たちは良いことも、悪いことも非常に感情の切り替えが迅速。かつ、やるなら徹底的に、の人たちなのだ。厄介なのが、そんなもん自分らだけでやって欲しいんだが、大体の場合において凄まじい勢いで怒りの感情を振りまきまくり、今回のように周りを巻き込み、その途中でスンッと自分たちだけ冷静になるのである。振り回される身にもなっていただきたい(真顔)感情のジェットコースターなのだ。

この二人、その2で触れた『あれはあれでエライことだった義母の葬儀』にて、法的な手続きうんぬんで、いざ、お葬式というときになって、義母の元旦那が保険金すべてをかっさらった挙げ句、1ペニーすら費用を出さなかったことをものすごくちゃんと覚えていたのだ。

正直、二人が激怒している真っ最中にふと足をとめ、考えを改めたことには安心・感心したものの。身内が死んだときにまず心配することが保険金の受け取りだ、なんていう修羅場思想・メロドラマなんて、普通に暮らしていたらそうそう起こることでもないので、なんかもう色々、頭おかしいだろ!今の状況!と、私はそんな風に思った。

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そこからは凄まじかった。

まず、怒りの天魔王どもは二人でホームセンターへと行った。なんでよ!なんで?ホームセンター?!まさか凶器?!

帰宅した二人の手には玄関の鍵を替えるためのキットが握られており、二人は迅速に家中の鍵という鍵を交換した。いわく「これでこの家に侵入し、書類や遺言、貴金属などを盗むことができなくなる」

だからさぁ、その発想が!おかしいって!でもありえるのよなぁ。そう、起こり得るの。普通、葬式の前に家の鍵を交換するとか思いつくか?思いつかねぇよ!

近所のおばの家は、1階がリビング、ダイニング、キッチン、シャワーとトイレ。2階にも同じ作りでそこに寝室が3部屋ある。実子(娘)は1階に寝泊まりしていたので、1階と2階をつなぐドアに鍵をつけた。そして近所のおばの寝室にも。「金庫にあるものや貴金属を盗まれないようにするためよ!」ええええ。普通、思いつか・・・(以下、略)

そして金庫をあけた。幸いなことにおじは自分の大事な書類等は金庫にきちんとしまっていた。整理整頓できない妻(近所のおば)をよくわかっていたのだ。遺言、保険の証書、もろもろである。それらの書類を分類している間、ピットブルおばは、近所のおばに、おじの退職金、および年金手続きのための電話をかけさせた。電子的に受け取れる書類などはその場で送付してもらい、郵送が必要なものは、ピットブルおば宅へと発送させる。何故、ピットブルおば宅へ…?

この住所に送ったら、実子たちが盗むかもしれないからね!奴らはあんたら(私達)の家も場所を知っているから危ない」いや、だからそんなことは……めっちゃあり得るね。この場合。

その他、諸々の手続きもものすごいスピードで終わらせた。「こういう場合はね!スピードが命なのよ!」その言葉の通り、じゃんじゃん、じゃんじゃんものすごい勢いで物事をこなしていく。基本的にピットブルおばはとても有能な人なのだ。ガチガチのキャリアウーマンなのである。

次に、お葬式の手配である。翌日、ピットブルおばは実子たちを抜きに、近所のおばを連れ、葬儀社での手配をした。もちろん、死亡保険の受け取り(こちらの葬式は、死亡保険で賄われることが多い)を確実なものにしてからである。葬儀社において、見積もりを出し、その場から保険屋に電話。その場で、保険から葬儀の代金を支払い、近所のおばが受け取る残額の数字もきっちりと把握。

アレな実子たちとは言え、父親の葬儀設定に実の子どもたちの意見を聞かないのはいかがなものであるか、というようなことを近所のおばは言ってみたらしいが「一銭も出さないどころか、あんたの受け取る死亡保険を狙っている奴らに意見を言う資格なんて全然ない。介護や普段の生活への援助も全くしてこなかった子どもたちになんの権利があるというのだ。そもそも彼らからは、父親を亡くした悲しみであるとか、妻であるあんたへのお悔やみとか、そんなものすら一切ないではないか」と一喝したらしい。私は実際にこの実子たちのハゲタカ発言を聞いてしまったので、ピットブルおばの言うことはもっともだと思った。

おそらく、この葬儀のあとは、おじサイドの親戚との付き合いも消滅するのであろうし、後々の親戚づきあいだとか、禍根だとか、そんなことにかまってられるものか。あったとしてそれがなんだというのか!というのがピットブルおばの言葉であった。たしかに。

とはいえ、よ。もうねぇ、びっくりするしかないわけですよ。私的にはさ。葬式の準備でこんなことおこる?普通はおこらないって。泣きながら、悲しみにくれながら、でもなんとか最後の儀式の用意をしてあげる。最後のお別れを良きものにするように、そしてどうしようもない悲しみを、現実的な手続きなどで無理やりにでも忘れようとする。それが一般的な葬式・埋葬のための準備過程ではないかぁ。

ちなみに遺産については、すでに自宅家屋、貴金属、および貯蓄のすべては妻である近所のおばへと譲渡。という旨の遺言がしたためられており、それはすでに弁護士の手を通して、法的に文章化されている。原本2部のうち、1部は金庫、もう1部は弁護士事務所に保管されているのだ。だが、この遺言ですら何かしらの操作が行われるかもしれぬ、という理由で弁護士への連絡先の書いてあるもの、番号などは再び、金庫へIN。わざわざ、遺言のコピーを2部作り、1部は我が家、1部はピットブルおば宅で保管。

更に付け加えると。おじと近所のおばの入籍前の遺言には、おじの死後は家屋、財産、貴金属を含め車、保険などすべてを実子3人に均等に譲渡すること。近所のおば(当時は内縁の妻みたいなもん)には、2千ドルを譲渡、という内容だったのだという。2千ドルて、約17万。えええええ。それはそれでどうなのであろう、おじ。

なるほど、それでその2に書いた実子・娘のハゲタカ発言の羅列である。実子たちは、遺言の変更があったことを知らないのだ。はいはい、メロドラマ。

開けたおじの金庫。一通りの書類をまとめ終わったあとは、金庫の暗証番号の変更もぬかりない。やるなら徹底的に……

今後の私の人生において、遺産相続騒動に巻き込まれるような案件はないがそれでも、この人(ピットブルおば)を敵に回すような事は決してしない、と私は改めて心に誓った。

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ちなみに、このピットブルおばの徹底的、かつ、入念で迅速な行動。これは11年前の義母の葬儀のことだけでなく、その後に起こった妻の実家での遺産相続騒動。簡単にいうとピットブルおばカップルは、妻の親族により住んでいた家、そして妻の取り分の財産をごっそり乗っ取られている。それどころか借金まで背負わされたのだ。

これらの過去事件でやられたすべてのことに対する防御策をすべて行ったのだという。なんかもうすげぇドラマチック人生やな、この人も……と、やり遂げた感満載のピットブルおばの横顔を見つめ、私は思った。

こうしてすべての法的書類、手続きはおじの死後、2日で終了した。もしも近所のおばだけであったら後手後手であったであろう。まんまと財産などを乗っ取られていたことは確実である

そして、満を持して、ピットブルおばは、実子たち(娘と息子)、近所のおばを招集「今後の話をしておこうじゃないの」と始めた。

ちなみに我々夫婦はこの場所にはいなかった。ピットブルおばの凄まじい行動力に夫アルゴは「ここまでくれば安心だし、万が一ということもなかろう。あとは、おばさんに任せて俺等は葬式の日まで大人しくしつつ、近所のおばをケアしていこう」

と。もっともらしく言っていたが、夫アルゴは、その日、クラスの生徒に椅子で殴られるという事件が起こり、今度はそのことで怒り、悲しみ、てんてこ状態であったのである。ひどい!私の心に平安の文字はない日々である。

かくして、ピットブルおばによる告知の場が、近所のおば宅1階で開催された。傍観者を決め込むことにしたらしい姉おば2の報告によると

Hot as Fish Grease……叫び声、怒号と罵声、大声での言い合いが響いてたわよ。ふふふ、ふふふ」

Hot as Fish Grease(魚の油くらい熱い)とは。To be extremely pissed off. Mad, つまり、大激怒、大憤慨の意味である。なぜ魚の油なのか語源は謎である。

よくよく考えてみると、こんなにも激情な劇場が繰り広げられている環境の中で、傍観者をきめて「ふふふ」なんて言っちゃう冷静なままの姉おば2が一番の大物なのではなかろうか。

というわけで、次回は最終回になる……のかなぁ。この話、ほぼほぼすべてリアルタイムで書いておりますの。近所のおば宅へ行くたびにポチポチとスマホに記録して、そいつを校正しつつ記事にしておるのですわね。なんならもうリアルTVみたいにすべてを撮影しておきたいほどに、毎日、毎日がメロドラマなんすわね。だからおじの葬式ですべてが終わるとは思いたいけど、それまであと3日間もあるからどうなるのでしょうかね。

次回メロドラマ:天魔王、下した怒りの鉄槌とそれから……


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ちなみにこちらが、私が経験した普通じゃない葬式のもろもろ。


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