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机上の空論ではない。公立高校における「キャリア教育」

「キャリア教育」はコーディネート次第


2014年より、高校生とともに店舗運営、商品開発を行う中でキャリア教育を実践しています。私が行ってきたような大規模なキャリア教育は、もし本気でやるなら社会経験必須だと思います。ここまでやってこられたのは自分の経験が助けとなった部分が大きかったように感じます。


美容師を目指す高校生とともに美容室を行内にオープンし運営。地域のお客様がご来店してくださる中、アシスタント業務を体験。その後コスメ商品を開発、累計13万本販売できました。文章で書くとシンプルですが、普段の教員の仕事に加え、学校内調整、メーカー、工場、販売店、自治体やメディアとのやりとり、各機関との連携が最も大変なことでした。ここまで本気のキャリア教育は、社会見学やインターンシップ・職場体験内での学びではなかなか実現できない。しかし、社会でしか通常経験できないことをこの企画を通じて体験ができ、とても有意義なキャリア教育のひとつになったと感じています。

こんにちは。この記事に興味をもっていただきありがとうございます。
私は民間企業でサラリーマン、美容師として経験を積み、教諭になったあと退職、公立高校非常勤講師をしながら会社経営・専門学校運営をしています。
プロフィールもよろしければご覧ください。


実際やると大変だけど生徒の将来に直結するほど宝の山であるキャリア教育をいかに進められるかは、推進を目指す先生方にとって大きな課題です。


「キャリア教育」とは、将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するための力をつけるための教育法です。近年強く推進されています。


先日、県教育委員会で新人先生が集まる初任者研修でこのキャリア教育について講演しました。

今回はその内容も踏まえ、私が考えるキャリア教育についてnoteに書いていきます。

先生自身が「内発的動機付け」によって先生の仕事をされているのか?という問いかけから、「人口減少」や「中流層の崩壊」「AI化」を踏まえながらキャリア教育を軸に、今後教育現場で抑えるポイントや人が生きていく上で大事な事をまとめてお話ししました。

(学生さんはこちらのYouTubeどうぞ!↓)

キャリア教育を実践する前にまず教員自身の考え方が最も重要です。
生徒の未来に直結する可能性が高いのがキャリア教育だからです。
教員として日々業務に追われたり慣れてくると忘れがちなのが「生徒一人ひとりの人生の重み」だと思います。

キャリア教育を行わなくても最終的には卒業し、放っておいてもそれなりにそれぞれの道に進む生徒たち。ただ与えられたマニュアル、教科書を読み上げ、校内での安全を守りとにかく卒業させるだけでも私たちの仕事は大成功なのかもしれません。多くの先生方は大成功・・。

しかしこれで本当に良いのでしょうか。

最も大切なのは生徒たちの「卒業後」「10年後」「?年後」を見据える教育だと私は感じています。キャリア教育一番のメリットかもしれません。

日本の社会では多くのお金を稼ぐことはおろか、最低限の生活をすることすら難しい人が急増しています。
現在現役で指導されている先生方は、ご存じの通り、ご自身が就活をされていた頃とは全く社会情勢が変わっています。
私はこの問題を切実に捉え生徒たちへの教育をそれに合わせて臨機応変に変えていく必要性を日に日に強く感じています。終身雇用の時代が終わり、個々の時代となり、人口減少により今後日本は誰もが経験したことのない世界へと移り変わります。
子どもたちの進路は以前にも増してちゃんと考えていく必要があります。


教員である私たちが気づき、いかに後押ししてあげられるかが重要になってきます。
保護者の方の後押しももちろん大切ですが、現代の日本の子育て世代はほとんどが共働きで、シングルや介護問題、副業されている方もめずらしくありません。はっきり言って昔と比べてめちゃくちゃ忙しい方がほとんどです。(教員も忙しいですが 汗)
そもそも日本は社会で子育てする文化がどんどん欠落していっています。世界でもワーストと言われています。
そのことを私たち教員は十分理解したうえで、まずは生徒を取り巻く身近な社会の大切な一員として、生徒と寄り添い関わっていくことが重要です。そのためには、教育機関全般で昔から習慣化されてきた古い価値観や無駄な業務をカットしていく事がとても重要な課題だと感じます。
全世界共通、少子高齢化していく日本は特に、子どもや若者は宝です。多くの教員、多くの大人がそう感じられる社会であることを願います。

今後の若者たちが人生を歩んでいくうえで仕事による収入源の確保をしていくために大切なことはなにか?

多くの成功者には共通して「現状分析」「問題点洗い出し」「解決策」を考える力が備わっています。こちらは教育現場というよりは、企業で勤務していた時期や会社代表・幹部などの方との交流、つまり民間企業との関わりで強く感じたことです。

人生は問題発生→解決の連続です。その基本ができていればあらゆる壁を乗り越えていけます。人生で大切なスキルと言えるでしょう。
そのことを踏まえ、授業や部活で生徒と関わるときには積極的に「現状分析」「問題点洗い出し」「解決策」への学びを提供することを心がけています。いずれ誰もが羽ばたいていくであろう「社会」を常に意識してもらうことが目的です。キャリア教育に力を入れるとそれが可能となります。

「勉強」できることは学校において重要視されて当たり前です。勉強を教えるのが学校ですから当然です。
しかし学校では「仕事の仕方」という教科書はありません。もっと例えると「人との付き合い方」「自分との向き合い方」「子育ての仕方」などという教科書ももちろんありません。
多くの新社会人の悩みは、目の前の問題が「経験したことのない=教科書に載っていないもの」である事から生まれます。

つまり、勉強+「勉強以外の問題を考え解決する力」が最も重要なのです。
しかし生徒たちにとっては何を考えて仕事や社会で生きていけばいいのかの「基本」「コツ」がわからない。ベテランでさえも「基本」「コツ」が分からず、日々の生活に追われる中、もがき苦しんでいている方が多いのが現実です。

そこで重要なのが、「現状分析」「問題点洗い出し」「解決策を生み出す」事の大切さ。

これらは進路選択、部活やバイト先選択、友達選びや恋人選び、小さなところでは体調維持や心の健康維持など、人生においての様々な分野で重要となります。決して教科書では教えてくれない内容で、一人ひとり問題の種類、解決法、価値観さえも違います。

また、「自分のあーしたい」、「こーしたい」、でも・・を深く掘り下げて自問自答し、より自分軸で答えを見出すことが重要です。意外なことに、その半分も分析に至っていない生徒が多い印象です。
そして、そのような流れの原因、そうならないために捨てなければいけないのは「他人軸」です。大切な自分の人生の選択は小さなことから大きなことまで何度も何度もやってきます。今も昔も、特に日本人は誰かの意見に流されてしまいがちな人は多いものです。そんなときに他人に惑わされず「自分の本心と向き合う大切さ」を伝えていける先生は、生徒や保護者の方にとってとても頼りになる存在です。


未来を予測した職業選択

これまではとりあえずどこかの会社に就職すれば何とかなる時代でしたが、皆さんもお気づきの通りそうではなくなってきました。一年単位で世界は変わっていきます。そしてその変化のスピードは加速しています。

まず今分かっている代表的な未来のテーマは「人間とAIの共存」
身近なものがどんどんAI化されていく中、まずは「AI化されない職業」を選択し基盤を固めること、副業的に自分の好きなことや得意なことで時代に合わせたビジネスを展開し生きていくことが重要です。

また、1つの仕事だけでは年収300万程度で停滞し飛躍が望めない、日本では特にそんな社会情勢だということを理解しておくことも大切です。


社会に出てからしかできない体験をがっつり先取り!高校生による「商品開発」の有効性

自分に最も最適な職業を選択するために視野を広げることは必要です。
多くの職業について体験し、学び、視野を広げるための取り組みとして、「商品開発」はとてもシンプルかつ有効でした。
ひとつのブランド、いくつかの商品を作り展開するなかで様々な職業の根本的なシステムを学ぶことができます。どの職業についても知っておくことでかなりの強みになります。

「商品企画」「マーケティング」「原材料栽培」「デザイン」「広報宣伝」「製造工場体験」「販売店開拓」「プレゼンテーション」「商品販売体験」「企画について振り返り、分析」などが体験できることで、自分が何に向いているのか?興味があるのか?をリアルに考える機会となります。一般的な会社で行われているお仕事をすべてチラ見どころかがっつり体験してもらうことができました。

まっすぐやりたいことを探すのはもちろん、万が一離職し再就職などセカンドキャリア時の職業選択や、その時の生活の変化をイメージするなど視野がとても広がります。最も盛り上がったのは販売体験です。接客やコミュニケーションなどを、普段のアルバイトとは違う視点で学ぶことができました。何より自分たちで企画し、全行程に携わった商品を自分の手で売ることが嬉しく感じてくれた生徒が多く私も嬉しかったです。

最も伝えたかったのは「求められていること=需要」を考える体験です。全てのビジネスは需要と供給から成り立っていますが、実際体験しなければ机上の空論にすぎません。社会に出てから役に立つ大きな体験だと感じました。

人口減少はしていくが需要は必ずあります。人口減少=ネガティブではなくポジティブに捉えビジネスを開拓するワクワク感をこれからも伝えていく重要性を感じます。

高校生活は、生徒にとって将来像をより強くイメージしたり、社会で生きていくうえで必要なスキルを身につけていくための準備段階・試運転をしていく大切な期間となります。またここでの就職や進学の進路選択は、生徒たちの未来、スピーディーな飛躍につなげていける大きなチャンスです。

私自身ももちろん、多くの先生たちが一人でも多くの生徒たちの明るい未来を想像し、創造させてあげられるような取り組みを今後も続けていける事、それぞれのお人柄やスキルを生かし取り組んでいける教育現場が少しでも増える事を心から願います。

講演の最後では、生徒たちの成長に携わることができる「先生」という仕事の楽しさを実感してほしい。自己有用感を高めてほしい。それが社会に貢献している=生きがいにつながるということをまとめとさせていただきました。


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