神里雄大

作家・舞台演出家。http://okazaki-art-theatre.com

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    マガジン

    • イミグレ怪談の上演を前に

      2022年初演の「イミグレ怪談」に関連していろいろ書いてみます。

    • 戯曲

      これまでに書いた戯曲を公開しています。

    • 上演

    • アルゼンチンでのこと

      2016/10-2017/8 ブエノスアイレス滞在(文化庁芸術家研修制度) 2019/8 「バルパライソの長い坂をくだる話」東京公演のリハーサルのためブエノスアイレスに2週間滞在

    • プロフィール

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    #3 ゆらゆら

    初演が終わるまではやることが多すぎてとにかく忙しく時間が作れなかったが、終演後にもしばらくなにか書こうという気力が持てなかった。 那覇での初演の幕が開けて、終わって、10日以上経って、でも自分はまだ家に帰っていないせいもあり疲れがどうにも抜けない。 が、そろそろ体の活動を再開させないといけないという気に突如なったのでここに書いてみる。東京公演までに今回と、あと2回くらい書くのが目標。 作品のための稽古についてはすでに触れているのだが、それ以降も聞かれることが何度かあったので

      • #2 マンツーマン

        昨夜(9/19)はベイスターズが敗れて、ヤクルトの優勝マジックが6になった。 どういう種類であっても、数字が減っていくということにそわそわしてしまう。 昨夜で稽古4回目、いまは次の稽古のために沖縄に来ている。 今回のキャスト数は4人だが、そのうち1人は沖縄在住である。 通常、というか一般的に言えば、どこか一ヶ所にキャストが集まって稽古するものだが、今回はそれをしないことになった。 つまり、演出の立場である僕だけが移動し、それぞれマンツーマンでの稽古をする、というもの。 い

        • #1 村上のホームラン

          村上がシーズン55号のホームランを打って王貞治氏の記録に並んだのを、新作の稽古が終わって家に帰ってきて見た。 今日の稽古は2日目で、出演者の松井周さんとファン心理や「推し」のことについて話していた。 ぼくは中学生のときからヤクルトファンで、 だが演劇を始めたくらいから徐々にその動向を追わなくなり、 球場にもほとんど行かず、誰がチームにいるのかもよくわからなくなっていたから、ずっとファンだったとは言えない。 去年のペナントレース後半戦くらいからちょこちょこ見始め、日本シリーズ

          • ニオノウミにて

            一、夜更け外国人の釣り人が現われる。 朝が来ないうちに、済ませてしまおう。 人がいないこのときを見計らって外に出るのが、わたしの日課。 わたしの国では人は簡単に殺され、連れて行かれ、どのみち二度と帰ってこない。 人々は飢え毎日のように寝床は移動させられる。 わたしはそんな国を出てこの地にやってきたのです。 外国人は琵琶を見つける。 しかし、いったいこれはなんだろう? 釣り竿を置き、琵琶を手に取り、弾き方がわからないが弾いてみることにする。しばらくすると女がやってくる。

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            「+51 アビアシオン, サンボルハ」メキシコ・ペルーツアー所感

            2年前にこの作品はインドネシアで終わりを迎えたと思っていたので、今回メキシコとペルーでツアーすることになり、当初は時間の経過に戸惑っていたのが本当のところで、出演者だったひとりは俳優そのものをやめてしまっていて、固定の3俳優でずっと上演して回っていたので、ひとりだけ新キャストを迎え入れるというイメージが持てなかった。 そういうわけで、思い切って、総キャストを入れ替えることにしたのだが、集まった俳優は、東京、京都、沖縄とそれぞれ異なる土地を拠点に活動している3人で、このところい

            8.9〜8.13

            滞在9日目。今日もリハーサルは通し。昨日よりよくなっている。ぼくのコメントも具体的、かつ細かい修正になってきて、あとはうまくキャストが乗ってくれるようにサポートするだけ、、、とはなかなかいかないけど、すくなくとも初演よりは安定感、深みとも増しているはずだ。 リハ後は、チラの車でエドゥと3人でドライブして、そのあとまた肉を食べに行った。そのあと、前に住んでいた家まで行って、そこに住むベネズエラ人の友人と再会。ひさびさにサンテルモで飲んだ。1年弱とは言え、やっぱり「住んでいた」エ

            8.5〜8.8

            毎日リハ。 リハの様子を写真に撮ってSNSでシェアしてもらいたいとプロデューサー(舞台制作者)に言われたものの、 なにせ、衣装もなく、セットもないから、写真を撮っても代わり映えしない。さらに、スタッフ陣が来ているわけでもないので、リハをしながら演出家としての本来の仕事のほか、セリフのチェックやら音響操作やらも同時にやらなくてはいけないという状況で、 ようするに写真はすぐに撮らなくなってしまったよ、という話。 5日目。 リハのあと、家に戻って9時にエドゥとマリーナが家に来ると

            8.2〜8.4

            2日目、リハ初日。ピロヤンスキーとも再会。 ざっと流してみたいが、すぐに止まるので初演の映像を見ながら確認作業。時間が経過しているのでしっくり来ないところは、なるべく引き算してから足すこともしてみようと思う。 リハのあとに、エドゥとフロリダ通りに両替に行く。人が多い。前に使ってたところが見当たらないので、適当に路上の人間に声をかけて両替をした。2年前に比べて、ペソの価値が1/3くらいになっていて心配になる。ペソだけで見ると物価は2.5倍くらいになっていた。 夜、エドゥとマリー

            2017年ぶり

            約2年ぶりにアルゼンチン、ブエノスアイレスに来た。 7月は2週間、ペルー、リマの祖母の家に泊まっていて、そこから5時間のフライト。日本は猛暑らしいがこちら南半球は冬。リマも寒かったがブエノスアイレスはもっと寒い。マフラーをしても寒い。東京の12月くらいの感じ。 エセイサ国際空港に着くと、ターミナル内が新しくなっている気がした。「バルパライソ〜」の出演者で主役のチラが迎えに来てくれた。会うのは2017年11月ぶりだから1年半以上会っていなかったけど、ちょっとひさしぶりくらい

            『バルパライソの長い坂をくだる話』単行本収録の戯曲

            『バルパライソの長い坂をくだる話』が、今年の岸田國士戯曲賞を受賞しました。さまざまな関係者、観客・読者の皆様に感謝です。 受賞にあたり、単行本が出版されます。発売は4月20日のようで、いまもろもろ作業しています。単行本には、『バルパライソの長い坂をくだる話』のほか、『+51 アビアシオン, サンボルハ』『イスラ! イスラ! イスラ!』の最新3作を収録します。この3作品は2013年から2017年まで緩やかに続いた取材や旅行の経験により生まれたものです。 >>「バルパライソの長

            戯曲について考えること

             昨年秋に京都で発表した『バルパライソの長い坂をくだる話』が、ぼくにとって4作目の「岸田國士戯曲賞」の最終候補作になったが、前回候補になったとき(2016)の審査会でぼくのテキストについて、「これを戯曲と呼べるのか」というような議論が、その選評を読むかぎりどうもあったらしい。ぼくはいつも戯曲──というか演劇のためのテキストを書いているつもりなのでそう言われても困るのだが、そして審査員たちがこれを読むかはしらないが、今回の審査会のまえに、ぼくなりに戯曲を書くということについて思

            某氏へのメッセージ10

            1月24日 2014年にドイツのマンハイムで見た "ESCUELA" の作家 Guillermo Calderónの新作である"Mateluna"を、サンティアゴ・ア・ミルで見た。 その作品は "ESCUELA" の後日談のようなものだった。 "ESCUELA" は80年代のチリにおける、反体制左翼ゲリラの養成所を描いたもので、皆々が覆面をしてお互いの顔も名前もわからないまま、ゲリラになるための訓練をするというものだった。 少年時代にそれに参加したという Jorge M

            某氏へのメッセージ⑨

            1月18日 毎日、ここサンティアゴで舞台作品を見ている。 ほとんどの作品はオールドファッションといったところで、だから失望している。 「けれども、オールドファッションのなにがわるいのか?」 今日はコロンビアからの作品を見た。やっぱりオールドファッションだ。でもおもしろかった。ひとりの男の死とその家族の話。 ストーリーはとてもシンプルだった。観客はたくさん笑い、感動していた。 そういう彼ら観客を見ながら、なにがオールドファッションでなにがそうでないのかを考えていた。 自分の

            某氏へのメッセージ⑧

            1月11日 ブエノスに来てからの2ヶ月は、かならずしもいいものではなかった。 だが不思議なことに、どこか別の場所に行くとき、ブエノスが恋しくなっている。 住めば都。 それに日本の多くのニュースはギスギスしているように見える。いま。ぼくには。 明日は大規模な舞台芸術フェスティバルを見るために、チリはサンティアゴに飛ぶ。帰りはバスで30時間くらいかけて帰ってくるつもりだ。 人生山あり谷あり。 今年はぼくの残りの年月の始まりの年。 百聞は一見に如かず。 なんでも見て聞いて体験して

            某氏へのメッセージ⑦

            12月27日 ある町にて。 年末のにぎやかな人混み、強い日差し。果物や雑貨、乾電池などが積み上げられ、並べられているセントロを歩いて、かつてそこにやってきた異邦人のことを思う。 観光地ではないその町の、すぐ近くに国境はある。 人間には移動するということが遺伝子に組み込まれているのだろう。人の行き来がその町の活気を支えているように感じた。そして街角や店の前には、マシンガンを持った警官やガードマンが立っている。 バスに乗って海岸沿いへ行き、楽しい魚を食べた。そして夜、またバスに

            某氏へのメッセージ⑥

            12月20日 ブエノスアイレス*には、おおきくわけて2つの日系コミュニティがある。と、"Bonenkai"に行ったときに、沖縄系の移民者からそれを聞いた。 ひとつは沖縄系移民で、彼らは長い歴史を持っている。もういっぽうは、「内地」出身で、沖縄系コミュニティよりも新しいひとたちだ。沖縄系のひとたちの多くは、ペルーやブラジルのそれとおなじように、第二次世界大戦の影響もあって、日本語を話さない(話せない)。 安倍首相が11月に、ここアルゼンチンを訪ねたが、歓迎式典に出席したのは