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シニアビジネスとシニアライフについて考える

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「親の雑誌」「つながりプラス」などを通じて、シニアビジネスやシニアとして生きることについての雑感を書きます。
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#連載小説

もしも村上春樹の小説の主人公が80歳だったら その3

もしも村上春樹の小説の主人公が80歳だったら その3

泥棒かサギ編

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やれや、と僕はおもった。

やれ、やれや。そこまでいったらやるだろう、普通は。これだからヤクルトスワローズは情けない。僕は朝起きて、昨日の試合結果を見ながらーもちろん昨日も生中継を見ているわけだけれどもーヤクルトスワローズに対しての憤りを覚えずにはいられなかった。

テレビを消そうかと思ったとき、電話が不機嫌な音をたてた。どうして家の電話は、いつも

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もしも村上春樹の小説の主人公が80歳だったら その2

もしも村上春樹の小説の主人公が80歳だったら その2

その1はこちら

蛍その時僕は78歳で、老人ホームでのボランティアを始めて1か月たったところだった。5月にしては珍しく暑い日に、僕は特攻隊と初めて言葉を交わした。
「ワ、ワタナベくんさ、ちょっとそこにある赤鉛筆をとってくれる?」

どうやら彼は以前から僕のことを知っているようだった。僕も彼のことは何度か遠くから見て気にはなっていた。何しろいつでも学生服を着ているので、この施設では異常に目立ってしま

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もしも村上春樹の小説の主人公が80歳だったら その1

もしも村上春樹の小説の主人公が80歳だったら その1

カード決済殺し編

やれやれ、と僕は思った。

どうして信用金庫の窓口というものは、灰色の壁土を食べた直後のような表情の行員で埋め尽くされているのだろう?

「先月もお勧めしたかもしれませんけど、この信託を続けるなら自動引き落としがお勧めですよ。」銀縁の眼鏡だけに自分の存在理由を認めているような女子行員が、無表情のまま僕に話かけてきた。グレーの制服に白いカラーシャツ。紺のニットベストが、かろうじて

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