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どう授業をデザインするか〜単元を貫く問い〜

【はじめに】
 今日は、私がいつもどのように(どのような手順で)授業をデザインしているかについて書きたいと思います😀。最近忙しさにかまけて授業準備がおろそかになっている自分へ、自戒の念も込めて筆を執ることにしました。

一つの単元をつくり上げる際の手順

 私が一つの単元をつくるときは、おおよそ以下の手順に従っています。

①単元を通して生徒に身につけさせたい力を考える。
②単元の目標を定める。
③”単元を貫く問い”を設定する。
④単元の評価計画を定める。
⑤単元の指導計画を定める。

 以下から、それぞれの手順を踏む時に私が何を意識し、何に注意しているのかについて書いていきます。

 また、あまりに抽象的な記事になってしまうといけないので、今回は高校国語の定番教材「羅生門」 を時折例に出して説明します。

①単元を通して生徒に身につけてほしい力を考える

 まずはこの単元を通して生徒に身につけさせたい力は何かを考えるところからスタートします。これ、当たり前のように感じますが、実は忘れがちなところなんですよね。

 えっ?授業を通して生徒にどんな力を身につけさせるか考えるのは当たり前のことなんじゃないの?教師としてやるべきでしょ?😒

という意見が聞こえてくるようです(グサッ😅)....。

 授業をするときに、生徒にどんな力がつけばゴールなのかを考えるのは、もちろん基本中の基本です。

 しかし、我々教員は(教員のみなさま、一緒くたにしてしまいすみません)、毎年同じ教材を扱うことも多く、特に生徒につけさせたい力が何なのか考えることなく、「去年と同じでいいや😓」という気持ちで深く教材研究をすることもなく授業に臨んでしまうことがあります。

 また、「定期テストの範囲だから」「教科書に沿って進めなければいけないから」「大学入試のためにとにかく知識を教えていかなければならないから」といった理由に縛られ、授業を無機質に進めてしまっている方も多いのではないでしょうか。

 こうして、生徒につけさせたい力を考えることもないまま授業を進めてしまうことが多々あるのです。

 しかし、授業には目標やゴールがあってしかるべきです。授業の目標を設定するためには、この単元を通して生徒に身につけさせたい力を明確にしておく必要があります

 だからこそ、単元を通して生徒に身につけさせたい力を考えるのが、まず授業をデザインしていく上でのファーストステップだと私は考えています。

 例)「羅生門」
 羅生門を読むことを通して、「人物の心情を的確に読みとる力」を身につけてほしい。

②単元の目標を定める

 生徒に身につけさせたい力を考えたら、次は単元の目標を設定します。この単元の目標は、先ほど考えた「この単元を通して生徒に身につけさせたい力」をベースに考えます。

 また、私はこの単元の目標を考えるときは、学習指導要領の指導事項を参考にしています。
 最初に考えた「生徒に身につけさせたい力」とリンクするような指導事項があれば、それをもとに単元の目標を決めることが多いです。

 例えば、「羅生門」を読むことを通して、生徒に「人物の心情を的確に読み取る力」を身につけてほしい、と考えたとします。学習指導要領の「読むこと」の指導事項の中に、「ウ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと。」というものがあるので、これをベースに、単元の目標を「文章に描かれた人物、心情などを表現に即して的確に読みとる」とする、といった具合です。

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 また、私はこの「単元の目標」を、必ず毎単元生徒に示すようにしています。小学校などでは毎時間目標を黒板に書くのは当たり前ですが、高校になるとそもそも目標を生徒に示すことをしない先生も一定数います。かくいう私も、これを意識しだしたのはごく最近のことです(お恥ずかしい😢)。

 生徒にどこがゴールなのかを示すことで、生徒は学習の見通しを持ちやすくなります。また、我々もどこを目指して授業をしていけばいいのか明確になりますから、単元の目標を設定することは絶対に忘れてはいけません

 この①②の手順を飛ばさずにじっくり考えることが重要です。

③”単元を貫く問い”を設定する。

 単元の目標を決めたら、次は「単元を貫く問い」を設定します。

 「単元を貫く問い」とは、単元を通して考え続ける問いであると同時に、この問いに答えることができれば、単元の目標を達成できたと言えるような問いです。また、単元で学んだ知識や考え方などを総動員して考える必要のあるような問いになっていなければなりません。

 個人的には、授業をデザインしていくうえで、この「単元を貫く問い」を考えるステップが最も重要だと考えています。

 この問いが単元の目標とかけ離れてしまっていては意味がありませんし、内容が具体的すぎて答えやすいような問いではいけません。かと言って、問いの内容が抽象的すぎて何を答えたらいいのかわからないような問いでもいけません。

 この問いを考えることで「学びが深まる」...そんな問いでなければならないのです。(自分で書いていて思いましたが、やはり単元を貫く問いを考えるのはものすごく難しいですね...。)

 この問いの良し悪しが、単元全体の良し悪しを決めていると言っても過言ではありません。それくらい私の中ではこの問いが重要なのです。

 では、先ほどから例に挙げている「羅生門」で実際に考えてみましょう。②の例で、単元の目標を「文章に描かれた人物、心情などを表現に即して的確に読みとる」としました。「この問いに答えることができれば単元の目標を達成したといえるような問い」を設定しなくてはなりません。

 この記事を読んでくださっているみなさまなら、どのような問いを設定するでしょうか?

 例えば「下人の心情は、場面ごとにどのように変化しているだろうか?」なんてどうでしょうか。この問いに適切に答えることができれば、先ほどの目標を達成できたと言えそうでしょうか。また、具体的すぎず、抽象的すぎず、生徒が単元で学んだ知識を総動員して考えることのできるような問いになっているでしょうか。

 まずは考え得る様々な問いをとにかくアイデアとして出してみて、上記のような視点で、単元を貫く問いを吟味していくことが重要です。

 また、私はこの単元を貫く問いを単元の最初と最後に生徒に投げることが多いです。そうすると、単元の最初に「今回の単元を貫く問い何なのか」を生徒に伝えることができますし、単元の最初と最後に同じ質問に答えることで、学びの深まりを可視化することができます。

 実際に私が授業で使用しているワークシートを参考までに載せておきます。

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 単元を貫く問いについては、今まで何度も失敗を繰り返しているので、後日授業実践の記事を書きたいと思います。

④単元の評価計画を定める

 単元を貫く問いまで決まったら、次は単元の評価計画を定めます。

 基本は観点別で評価をします。現行の学習指導要領での、国語科の評価の観点は以下の5つです。

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 ただし、「話す・聞く能力」「書く能力」「読む能力」すべてを1回の単元で育成するのは困難ですので、この3つのうちのどれか1つに絞るわけです。今回例として出している「羅生門」では、①②のステップでおわかりいただけたと思いますが、「読む能力」を育成する単元として扱います。

 つまり、例として挙げている「羅生門」を評価する際の観点は、「関心・意欲・態度」「読む能力」「知識・理解」の3つです。

 特に私は、「読む能力」(「話す・聞く」「書く」の場合も同じですが)の評価は、「単元を貫く問い」への解答をもとに評価しています
 先ほど私が実際に使用しているワークシートの画像を載せましたが、あのワークシートを回収し、A・B・Cの3段階で評価しています。(実際にはGoogle ClassroomとGoogle ドキュメントを使用して生徒にオンライン上で解答させ、オンライン上で回収→評価→返却を行なっています。)

 単元を貫く問いに解答させる前には、評価基準表(いわゆるルーブリック)を必ず生徒に提示するようにしています。(こちらもGoogle Classroomを使用してオンライン上で提示しています。いずれ記事にしようと考えていますが、だいぶ先になってしまうような気がするので、もし気になる方がいらっしゃいましたら本記事のコメントかTwitterにてご質問ください。)

 実際に私が授業で使用したルーブリックを参考までに載せておきます。(Google Classroomで作成したものをGoogle スプレッドシートにエクスポートしただけですので、見にくかったらすみません。)

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 これら3つの観点を、単元全体でどのように評価するか、それを定めるのが④のステップです。

⑤単元の指導計画を定める

 ⑤のステップは、⑤とは言っているものの、④と同時に行うことが多いです。単元全体を何時間で構成するのか、各1単位時間ではどのような授業を行うのか、など、目標を達成するために必要な指導計画を練ります。

 行き当たりばったりで授業をするのではなく、何時間で単元を構成して、各時間には何をするのかしっかりと計画してから授業に臨むことが重要でしょう。

【おわりに】
 ここまで私が普段どのように授業をデザインしているかについて書いてきました。
 本当のことを言うと、毎回毎回このように授業をデザインできているわけではありません。忙しいからという理由でろくに教材研究もできないまま授業に臨んだり、計画を立てないまま授業をしてしまったりすることもあります。

 しかし、私は「授業」に一番やりがいを感じています。もちろん、部活動や生徒指導にやりがいを感じている先生方もいると思いますが、私は、「授業こそが生徒を成長させる最善の方法である」と心の底から思っています

 だからこそ、忙しい日々の中でも、常に授業に向き合い、多くのことに挑戦して、授業を通して生徒と共に成長したいです。

 今回は「授業のつくりかた」という抽象的なテーマで記事を書きましたが、 次回からは、実際の授業実践での収穫や反省なども書いていくつもりです。

 少し長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。授業についてはまだまだ勉強不足で、多くの方々から勉強させていただく毎日です。もしお気付きの点、ご質問等ございましたら、お気軽にコメントしてください🙇‍♂️

 


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