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溝口智子
2024年7月7日 23:10
あれはもう、数十年前。中高一貫カトリックの女学校に通っていた頃のことです。母校は近隣でお嬢様学校と言われていただけあって、体育祭も、学園祭も、父兄以外立入禁止でした。とくに、学園祭はチケット制で、生徒は一人2枚のチケットをもらいました。そのチケットを持った人しか秘密の花園に入ることはできません。たいていは親兄妹が来るのですが、彼氏を呼ぶつわものもいて、なかなかに楽しく、しかし静かな
2024年7月7日 18:07
もう十年ちかく昔のことだ。 週末を利用して熊本に旅行した。寒い日が続いていたので覚悟をしていたのだが、当日は小春日和。コートが邪魔なほどの陽気だった。 熊本に旅行するといえば熊本城に突進するというのが私の中でのお決まりだ。熊本城をこよなく愛しているのだ。 しかし今回は道連れがあり、連れのリクエストに答える形で水前寺公園に行くことになった。 水前寺成趣園というのが正式名称のこの観光スポ
2024年7月7日 17:39
アラームが鳴ってスマホを見ると七時、もう起きないと遅刻する。そう思って枕から頭を離した。「そうか、もう仕事行かなくていいんだ」 ぽふりと頭は枕に戻る。ぼんやりと天井を見つめる。白い天井に午前のゆるい光が届いてわずかな起伏がやわらかな影を産む。それが遠くに飛んでいくような眩暈を感じて目を閉じた。 次に起きた時には時刻は十一時を過ぎていた。いささか寝過ぎて頭が重い。起き上がり、途方にくれ
2024年7月7日 17:31
家を出てすぐに風に吹かれた。服を素通りしたかのように肌に直接、寒さが沁みた。もう冬のコートを出した方がいいようだ。 昨日、契約がきれて仕事を失くした。十月の終わり、秋の終わり。 「大きくなったら何になりたい?」 という問いに、子供の頃は無邪気に答えていたっけ。今は「この先何になりたい?」聞かれても答えられない。未来は茫洋として霧の向こうにあり、一歩先だって見えはしないのだから。 十