『たゆたえども沈まず』
胸にしまっておきたい言葉を見つけた。それは「たゆたえども沈まず」。これは本のタイトルでもある。原田マハ著書の、パリを舞台にした物語。
19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界に浮世絵を知らしめた一人の日本人画商がいた。その名も林忠正。助手である重吉と共に、貴族相手に日本の美術品を売りさばいていた。
その浮世絵に大きく影響を受けたのが、当時は無名の画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。弟の画商、テオに支えられながら誰からも認められない絵を描き続けていた中での出会いだった。この浮世絵、そして林忠正との出会いが大きくゴッホの運命を変えるのだった。
彼らの生き様をまさに表した言葉が「たゆたえども沈まず」。これはパリ市の紋章に刻まれるほど、古くから伝わる名言でもある。
どんなに強い風が吹いても、
揺れるだけで沈みはしない。
セーヌ川の流れるパリが、氾濫に、戦火に襲われながらも立ち上がってきた心意気が感じられる。
この名言が、今の自分に響いた。
3度の休職を繰り返した。今回はもうダメかもしれないと思った。でも、自分の希望する通りに復職へと動き出している。
職場に通い始めた今も、不安に襲われて泣き出す夜を過ごしている。だけど、朝になればちゃんと職場へと向かう自分がいる。
「たゆたえども沈まず」
たとえ迷い、さまよい、揺れ動こうとも、沈まなければ大丈夫。波がおさまったらまた、動き出せばいい。
今はこの言葉の力を借りて頑張ってみようと思う。
この街をセーヌが流れている。その流れは決して止まることはない。どんなに苦しいことがあっても、もがいても、あがいても・・・・・・この川に捨てれば、全部、流されていく。そうして、空っぽになった自分は、この川に浮かぶ舟になればいい。ーあるとき、そう心に決めた。
たゆたいはしても、決して流されることなく、沈むこともない。・・・・・・そんな舟に。
(『たゆたえども沈まず』原田マハ)