kalatva

Ensemble Organum, Ensemble Venance Fortuna,…

kalatva

Ensemble Organum, Ensemble Venance Fortuna, Schola Hungarica についてなど

最近の記事

古ローマ聖歌覚書Ⅱ 研究史

前回の記事で、古ローマ聖歌の主要録音である Ens. Organum のアルバム5種類を紹介しました。今回は古ローマ聖歌をめぐる研究史をみていきます。 古ローマ聖歌の語義 古ローマ聖歌 Old Roman Chant について、Wikipedia では次のように紹介されています。 こうした説明は標準的で、たとえば本邦でも「〔古ローマ聖歌がグレゴリオ聖歌以上に〕古い典礼伝統を示す」と言われてきました。ローマ聖歌〔グレゴリオ聖歌〕の成立は非常に長い時間をかけて展開してきたも

    • 古ローマ聖歌覚書Ⅰ 録音の紹介

      これまで何度か Twitter で Ensemble Organum 〔以下、 Ens. Organum 〕の古ローマ聖歌にかんする呟きをしてきたのですが、少し纏めておきたい気持ちがあったので、しばらく記事を投稿していこうと思います。今回はその導入として、 Ens. Organum の古ローマ聖歌の録音紹介をしていきます。 導入 グレゴリオ聖歌前史 古ローマ聖歌 Old Roman Chant とは、一般にグレゴリオ聖歌やローマ聖歌と言われる聖歌より古い時代に、主として

      • ロラン・バルトを読んだ時期

        バルトの本を集めた時期 バルトの本を集めた時期がありました。 それはコレクションしておきたい、という欲望からで、テクストへの溺愛ゆえではありません。とはいえ倒錯的な欲望でもなく、馴染の古本屋に大量にバルトが売り払われていたから、ざっと買っていったというだけのはなし。たくさん買えばお店への感謝にもなるだろう、という思いもあったはず。 『恋愛のディスクール』(1980年) 私が初めて読んだバルト。高校1年生の時だったと思います。 「恋愛にかかわるディスクール(言説)が今日、

        • 中世ハンガリーにおける復活の典礼劇.――謎の写本「Futaki Graduale 1463」とハンガリー土着の典礼歌――

          はじめに TwitterのTLにおいて(2022年10月10日)、復活やイースターの話題を投稿している方がたくさんおりました。これは本日付で放送されたラジオ番組「古楽の楽しみ」の影響のようです。私は朝の番組を聴かないため全く門外漢なのですが、自前のイースターに関する面白い話題があって、前々から note や Twitter で呟こうと考えていたので、今日を機会に投稿してみることとしました。 前回までコンポステーラの音楽について連載していたのですが、こういう事情をふまえて、今

        古ローマ聖歌覚書Ⅱ 研究史

        • 古ローマ聖歌覚書Ⅰ 録音の紹介

        • ロラン・バルトを読んだ時期

        • 中世ハンガリーにおける復活の典礼劇.――謎の写本「Futaki Graduale 1463」とハンガリー土着の典礼歌――

          コンポステーラの音楽: Dum Pater Familis

          はじめに コンポステーラの音楽。今回は「Dum Pater Familias」です。 前回につづき2回目となります。1回目の記事では「Kyrie」を扱いました。 「Kyrie」が全き聖歌であったのに対し、今回の「Dum Pater Familias」は些か謎に満ちた作品です。というのも、その音楽性もさることながら、発見までの経緯も含めて興味深いためです。また、魅力的な演奏にも恵まれた一曲で、たいへんオススメです。 前回同様、曲の簡単な説明と録音を紹介する内容となります。

          コンポステーラの音楽: Dum Pater Familis

          コンポステーラの音楽: Kyrie - Cunctipotens Genitor Deus

          はじめに コンポステーラの音楽と銘打って、コンポステーラにゆかりある音楽作品を紹介します。 本当はTwitterで呟く程度にするつもりだったのですが、改めていろいろと調べたり聞いたりしているうちに、note もはじめたことだし、ちょっと書いておきたいな、という気持ちに転じた次第です。 今回から数度、サンティアゴ・コンポステーラに関係する音楽作品と、その演奏・録音を紹介していくつもりです――専門的なことは一切語れません!——。 まず、Calixtinus写本に収録された「K

          コンポステーラの音楽: Kyrie - Cunctipotens Genitor Deus

          アンサンブル・オルガヌムとはなにか②: 結成秘話「支援者のネットワークづくり」和訳

          前回、アンサンブル・オルガヌムの結成秘話と題して「Une utopie musicale: comment se forme un ensemble?」(原書P15~20)を和訳しました。アンサンブル・オルガヌム結成につながるセナンク修道院での出来事、ドミニク・ヴェラールとのエピソードのほか、マルセル・ペレスのキャリアが明らかにされました。 今回はそのつづきにあたる「Créer un réseau de sympathies」を訳しました。出典は『Le Chant de l

          アンサンブル・オルガヌムとはなにか②: 結成秘話「支援者のネットワークづくり」和訳

          アンサンブル・オルガヌムとはなにか①: 「音楽的ユートピア: アンサンブルはどのようにして結成されたか」和訳

          初投稿です。 Twitterの開始と兼ねて、note もはじめてみた次第です。 私は宗教音楽、古楽、クラシカル、現代音楽等々聴きますが、特に好きなアーティストというものが、やはり存在します。そのひとつがマルセル・ペレス / アンサンブル・オルガヌムです。 このアンサンブルは日本でもよく知られていて、2022.07.02.にはNHKのラジオでも特集が組まれました。 1982年に結成して以来、今年で40年の節目を迎えるわけですが、私が常々感じるのは、アンサンブル・オルガヌム結

          アンサンブル・オルガヌムとはなにか①: 「音楽的ユートピア: アンサンブルはどのようにして結成されたか」和訳