人は知らないうちに、天職を生きている

「知らないうちに、人は天職を生きてるんですよ」

これは数年前、あるコーチが私に居酒屋でつぶやいた言葉だ。

最初聞いたときは「何を言ってるのだ?」と腹立たしささえ感じた。

私は記者職をしていて、日々の抜きぬかれに疲れて、教員や保育士に転職したいと考え始めていた。

その転職相談のときに言われた言葉だ。

私は受け入れられず、聞き流した。少しの腹立たしさを抱えながら。


それから数年後、私は教師に転職した。

しかし、会社をやめると伝えてから、恐ろしさが身を襲った。

震えとめまいが来た。

残りの日々を過ごすのも辛かった。

こんな優しい仲間に囲まれ、慣れた仕事をしていて何が不満だったのだろう。


育児との両立の葛藤はあったけれど、十分配慮してもらえていた。


教師がしたいという私の思いに会社は最大限答えてくれたが、私は辛かった。

コーチに連絡を取ると京都の五山送り火の山に登るよう言われた。名所らしい。少し気が晴れた。帰り道、無償で喫茶店で会ってくれた。そして、別れ際、握手をしてこう言われた。
「冒険の世界へようこそ」

私はその後、一年間教諭をして、ハードさ故に退職し、フリーランスのライターとなり、コーチングを学んでコーチをしている。

そう、今は今でつらい思いの人を支える活動が天職だと感じる。

人は知らないうちに天職を生きている。


だから何も心配することはない。

眼の前の仕事をしっかりして、歩んでいけばいい。

それが、嫌だろうとなんだろうと天職だと思う。

振り返れば記者も天職だった。

しかし、あるき出した先でも天職には出会えた。

悲観するべからず。

大丈夫。

天職は自然と導かれる。

雲間に現れる満月の輝きのように。