【シネマ歌舞伎】野田版 桜の森の満開の下
2023年10月1日(日)、シネマ歌舞伎の『野田版 桜の森の満開の下』を見ました。
上映期間は、9月29日(金)〜10月5日(木)までです。東銀座の東劇は、10月19日(木)まで上映しているようです。
DVDも出ているようなのですが見たことはなく、私は今回が初めてでした。一度は観てみたいと思っていた作品でしたので、良かったです。
■概要
もとになった作品は、坂口安吾の「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」です。この2つの作品を下敷きに、野田秀樹が戯曲『贋作・桜の森の満開の下』を書き下ろしました。
初演は、1989年の「劇団 夢の遊眠社」です。
その後、2017年の8月に、歌舞伎として歌舞伎座で上演されたようです。中村勘三郎さんと野田秀樹さんの間では、歌舞伎にしたいという話は以前から出ていたようですが、歌舞伎化されたのは勘三郎さんがお亡くなりになった後でした。
シネマ歌舞伎としては、この2017年8月の舞台を2019年に公開しています。今回、月イチ歌舞伎として取り上げられたこともあり、私も映画館で観ることが出来ました。
■あらすじ・配役
<今回の主な配役>
・耳男:中村 勘九郎
・マナコ:市川 猿弥
・オオアマ:松本 幸四郎
・夜長姫:中村 七之助
・早寝姫:中村 梅枝
・エンマ:坂東 彌十郎
・ヒダの王:中村 扇雀
■感想①:夜長姫について
あらすじを少し補足します。夜長姫と早寝姫は対照的な姉妹です。妹の早寝姫は宵の明星を見ると眠くなり、逆に、姉の夜長姫は夜通し起きていて、朝のひばりが鳴く頃に瞼が重くなります。
性格も異なっていて、夜長姫は残虐な面もあります。狂気をはらむ満開の桜の下、夜長姫の生命力あるキャラクターは際立っていました。あまり深く書くとネタバレになるので、詳しくは伏せます。
私は、そこまで歌舞伎役者の人に詳しくなく、且つ、事前に配役をおさえていなかったこともあり、この夜長姫を誰が演じているのだろうと思いながら観ていました。最後のエンドロールを見ると、中村七之助さんでした!(もちろん中村勘九郎さんの耳男はすぐにわかったのですが。)。すごく良かったです。
他方、この夜長姫については、毬谷友子さんの好演を何度も聞いたことがあり、七之助さんとの違いやそれぞれの良さなど、他の方のブログなどをこれから読んでみたいと思います。
そして、今回の写真は、観る前は、満開の桜の下に耳男が一人いる写真を使おうかな、と思っていたのですが、鑑賞後に、夜長姫と耳男の二人が写っている写真に切り替えました。それぐらい、二人の関係は微妙で、考えさせられる部分が多くありました。
■感想②:クリエイターに必要なものとは
今回、三人のヒダの匠の名人が腕を競います。何をものづくりに込めるのか、どうやって魂をいれるのか、芸術作品を生み出すには負の感情が必要なのか。各人の経験や心持ちなど。創作について、個人的に少し視野が広がったように思います。
そして、この「ものづくり」に、壬申の乱の時代に、中央集権的となる「くにづくり」も関わってきます。ヒダの匠の名人のうちの1人である「マナコ」は、舞台上で「俗物」と言われていましたが、その「俗物」がどのように歴史をとらえ、どのように行動していくかも面白い部分でした。
■最後に
今回の『野田版 桜の森の満開の下』のように、古典と現代演劇の融合というのは、面白いように思います。そして、最後になりましたが、原作の坂口安吾の小説も読んでみたいと思います。
本日は以上です。