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新聞社LGBTちょっといい話

LGBTQという単語を目にすることが多くなって、昔の新聞業界の話を思い出した。

もしかしたら前にも書いたかもしれない。業界では有名な話で、私の好きな話だ。

私が真偽を確認したわけではない。あくまで噂話として聞いてほしい。


某新聞社のある支局長(男)は同性愛者だ、という話が業界に広まった。

マスコミ業界だけに、噂が広まるのは早い。

新人記者が支局で「襲われた」という、おそらく尾ひれのついた噂まで広がって、戦慄が走った。


かつての、というか、つい最近まで、新聞社は完全な「男社会」だった。女性記者はほとんどいなかった。

記者は全員支局に回され、そこでは男同士で寝泊まりもする。

同性愛者の「参入」は想定されていない。かつて軍隊で同性愛者が嫌われたのと同じ風土があった。


そのころ、海の向こうから「エイズ」の話が入ってきていたかどうかは定かでない。

記者たちは、

「襲われないように気をつけなきゃ」

と、冗談半分に言い合うものの、もし襲われたら、という恐怖は、誰の胸にもきざしていた。

当時は、LGBTどころか、セクハラの観念もない。

まして、職場で上司の同性愛者に襲われたらどうなるのか、想像もできなかった。


だが、幸い、新聞社の支局が「事件」の現場になることはなかったようだ。

そして、そのLGBTの支局長は優秀な人で、本社に戻っても出世を続けた。

最後は、役員に就任している。


月日が流れ、新聞社もいつまでも「男社会」ではいられなくなった。

某新聞社のライバル社は「進歩派」を気取っていた。世間体もあるので、業界ではいちはやく女性を役員に就けた。

女性役員の名前が目立つように書かれた人事が、ライバル社の紙面を飾った日。

それを見た某新聞社の幹部は言った。

「うちの方が進んでいる。うちにはホモの役員がいた」


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