見出し画像

子どもたちの練習ノートがもたらすもの

道場で子どもたちに「練習ノートを書いてみよう」と提案したのは先月のこと。いろんな狙いがあって始めた練習ノートだったが、少しずつその意味や効果を実感するようになった。

最初は技術向上や自己評価の一環として始めたこのプロジェクトだが、実際にノートを読み、子どもたちと話をしていくうちに、ノートが持つ可能性の広さに気づかされている。




・主体性を育てるツールとして

ノートを書くという行為には、自分と向き合う力を育てる効果がある。

練習でできたこと、
できなかったこと、
そして次にどうしたいか。

こうした振り返りを通じて、子どもたちは自分自身の課題を発見し、それにどう取り組むかを考える力を養っている。

道場で練習をしているとき、指導者が一方的に指摘をすることは簡単だ。
でも、最終的に技術を身につけるのは子ども自身であり、自分で課題に気づき、それに向き合う力がなければ、成長は一過性のものになってしまう。

練習ノートには、彼らが自分なりに考えた反省や対処法が記されている。その内容が具体的であればあるほど、「この子は次に向けて自分でPDCAを回しているな」と感心することも多い。

スポーツの技術だけでなく、人生のあらゆる場面で活かせるこの力を、練習ノートを通じて少しずつ育てていきたいと思う。


・見えない部分が見えてくる

ノートには、普段の練習中には見えない子どもたちの思考や感情が詰まっている。たとえば、「今日は負けて悔しかったけど、次はもっと頑張りたい」と書いている子を見ると、「そんなふうに考えていたんだ」と驚かされることがある。逆に、「今日の練習、あまり楽しくなかった」と書かれると、何が原因だったのかを一緒に振り返るきっかけにもなる。

ノートは単なる記録帳ではなく、子どもたちとのコミュニケーションツールとしても大きな役割を果たしているのだ。これまで話す機会が少なかった子とも、ノートを通じて「どうしてこう思ったの?」と会話が広がり、その子自身の考えや性格をより深く知ることができるようになった。


・書くことで得られるもの

子どもたちにはこう伝えている。

「ノートを書くのは強制じゃない。でも、書けば書くほど自分の成長が見えるし、自信につながるよ。」

たとえば、できなかった技ができるようになったとき。
その変化をノートに記録することで、努力の成果が目に見える形になる。これは、言葉では言い表せない大きな達成感をもたらす。さらに、自分で考えた課題を一つずつクリアしていく経験は、成功体験として自信を育てる土台になる。

また、ノートに記された内容をもとに指導者が的確なアドバイスをすることで、子どもたちはさらに成長への道筋を明確にすることができる。

ノートは子どもたち自身が「考える力」を鍛えると同時に、指導者にとっても彼らをより深く理解し、効果的にサポートするための重要なツールだ。


・ノートから見えてくる子どもたちの可能性

子どもたちの練習ノートには、その子の性格や成長の段階が垣間見える。ある子は、「今日の練習、がんばった!」というシンプルな一文だけを書いてくる。別の子は、「突きの動作を注意された。次回は足の位置を気をつける」と、細かく振り返りを書く。

その違いは、単なる性格の違いだけではなく、成長のヒントが詰まっている。「今日は楽しかった!」と書く子には、もっと達成感を得られるような課題を提示するべきかもしれない。「具体的に反省点を書く子」は、指導者が次に何を教えるべきかを明確にする手がかりをくれる。

そして気づくのだ。成績を残している子、試合で勝つ子たちは、自分の反省点や評価点を具体的に書いていることが多い。「今日は蹴りの角度が甘かった」「相手の動きをもっと見る必要がある」。

彼らのノートには、自分を見つめ直す力が詰まっている。


まとめ: ノートがつなぐ成長と対話

練習ノートは、子どもたちの技術向上や目標達成を支えるだけでなく、主体性を育てる場であり、指導者と子どもたちの間に新たな対話を生む道具でもある。ノートを通じて見えてくる子どもたちの思考や感情に触れるたび、「彼らは本当に多くのことを考えているんだな」と感動させられる。

道場での練習が終わった後、ノートを開いて反省を書き込む子どもたちの姿を見ると、彼らが自分自身と向き合いながら成長していることを感じる。その時間は、技術だけでなく、彼らの人間性を深める大切な一歩なのだ。

練習ノートという小さなプロジェクトが、子どもたちにとって「自分を知り、自分を育てる」場であり続けることを願いながら、今日も彼らと向き合っている。

2025.01.20
書きかけの手帖


いいなと思ったら応援しよう!