トピナンブール(赤菊芋)のリゾット VS 炊き込みご飯 と バルコニーで育てるトピナンブールの話
トピナンブールが好きだ。
何よりまず花が好きだ。
繁殖力の強い雑草で線路脇や河川敷、運河沿いなどに群れになって生えていて、北イタリアでは9月後半から10月中旬くらいまで黄色い花を咲かせる。
ちょうどコスモスを黄色にしたような、可憐だけど逞しい花。
イタリアの秋の花の中で一番好き。
トピナンブール。。。名前の響きからなんだかずっと東南アジア原産のイメージがあった。
クアラルンプール、とかシンガポールとかと音が似ているけれど実は北アメリカが原産だという。
英名はエルサレム・アーティーチョーク。でも中近東とは無関係。
日本名は菊芋。そのものずばりな名前。
白菊芋と赤菊芋の2種類ある様で、ここでは赤菊芋を使っています。
イタリア名は南アメリカで「トピナンバ」と呼ばれていたのがフランスでトピナンブールTopinambourとなりイタリアに伝わって語尾だけイタリア風に変わってトピナンブールTopinamburとなったらしい。
ネットで調べると最近は日本でも、仏語伊語風にトピナンブールと呼ぶ人もいる様です。
他にも「カナダのひまわり」とか「ドイツのカブ」とか、世界各地でかなり適当な名前で呼ばれているようです。
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初めて根菜のトピナンブールを食べたのは十数年前だろうか。
マウロがバーニャカウダを作ってくれた時のこと。
バーニャカウダは塩漬けのアンチョビとニンニクをベースにした温かいソースで生野菜を食べるピエモンテの名物料理。(機会をみてレシピご紹介します。)
バーニャカウダで食べる生のトピナンブールはシャキッとした歯応えが気持ち良い。
他の芋類の3、4倍の値段なのでバーニャカウダ以外にあれこれ調理をしてみたのはバルコニーのプランターで育てて「こんなに沢山どうやって食べよう」と言う豊作だった2020年の事。
最初に試したのは和風の炊き込みご飯。
イタリア料理のレシピばかり掲載していますが。もちろん私も日本人なので和食も食べます。
リゾットは去年チェーザレが彼らのセカンドハウスの庭で取れたトピナンブールをリゾットにしたら美味しいとFBで公開していたもの。
この「リゾットVS炊き込みご飯」もリゾットにオリーブオイルだけで作った時は炊き込みご飯に軍配をあげていましたが、オリーブオイル半分をラードに置き換えると「引き分け」という感じです。
どちらも美味しく、おすすめです。
バルコニーで育てるトピナンブールの話はレシピの後に。
トピナンブールのリゾット
<材料> 1人前
・トピナンブール=菊芋 3、4個(約100-120g )
・エシャロット 1個
・リゾット用米 80g
・パルメザンチーズ 10g
*トピナンブールの味はデリケートなので野菜の味を壊さない程度に控えめに
<調味料>
・ブイヨン
・白ワイン カップ 1/3
・オリーブオイル 少々
・ラード 少々
・塩分はブイヨンとパルメザンチーズだけで私は十分ですが、好みで塩を加減
<作り方>
1・鍋にオリーブオイルとラードを半々熱する。
*多くのリゾットはオリーブオイルとバターで作られますが、昔から今ひとつ馴染めなかった。一度ミラノ風のサフランのリゾットのバターをラードに置き換えてみたら、やけに納得できる味になった。それ以来野菜系のリゾットではバターの代わりにラードを使うことにしています。
2・エシャロットはみじん切りにして1に加え弱火でよく炒める。
3・2を炒めながらトピナンブールを6-7ミリの角程度に切り、エシャロットがしんなりしたら2に加え3、4分中火で炒める。
4・トピナンブールに火が通ったら3にリゾット用米を加えて2、3分炒める。
5・4に白ワインをカップ1/3振りかける。一気にジャーと蒸発します。
6・5にお米の倍の量の水とブイヨンを入れます。
*一般的なリゾットの調理法だと通常お米の倍量の沸騰したスープを徐々に加えますが、は圧力鍋を使う場合お米の1.5倍程度の冷水でOK。別途スープを用意する方法に比べ、余計にお鍋を汚さずに済みます。
7・圧力鍋の蓋をして7、8分加熱後、蓋を開けたき具合を見て必要であれば少し加熱します。
*圧力鍋がない場合は12分前後、お米の種類により時間を調節。
8・火を止めたら、おろしておいた、または粉状のパルメザンチーズを混ぜ込み全体にならします。
9・熱々を食卓に運びます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー簡単菊芋の炊き込みご飯
<材料> 1人前
・トピナンブール=菊芋 3、4個(約100-120g )
・生姜 ひとかけ
・日本米 80g
・水 100ml
・炒りごま
<調味料>
・みりん 大さじ1
・お酒または白ワイン 大さじ2
・醤油 大さじ1
・顆粒出汁 適量
*もちろん本格鰹出汁をとってもOK
<作り方>
1・お米は炊く30分前に洗って水、調味料を加えます。
2・トピナンブール=菊芋は皮を剥いて1、2ミリのスライスにする。
3・生姜は小さめの千切りにする。
4・1、2、3を混ぜてご飯を炊き上げる。
*私は少人数分でも美味しく炊ける炊飯用土鍋を愛用していますが、もちろん炊飯器でもOK
5・炒りごまをかけてあつあつをいただく。
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バルコニーで育てるトピナンブールの話
実は長いこと美味しい根菜のトピナンブールと大好きな秋の黄色いあの花が同じ植物である事が頭の中で繋がっていなかった。
同じ植物だとわかったのは(実は微妙に違うのだが)ランドスケープ建築家のカルロスがオリベッティ広場の設計で花壇の花にトピナンブールを選んだ時だった。
「あの大好きな黄色い花と食べて美味しいトピナンブールが同一の植物だと知ったの。来年はバルコニーで育ててみる。」と友人たちに宣言したら、早速パオラがトピナンブールを3つプレゼントしてくれた。
彼女らしく、包みもせずに、笑顔でサッとポケットから私のために買ったトピナンブールの根塊を3つ取り出し「はいっ」と渡してくれた。2019年末のこと。
2020年の春先にパオラにもらったトピナンブールを30 x 60 x h30cmの大きめのプランターの土の中に埋め込む。
その直後2月末新型コロナの第一波がやってきてロックダウン。外出禁止令。
我が家の下の週に2回立つ露天のメルシェが初めて閉鎖された。
メルシェの野菜に慣れていたので、スーパーマーケットで買う野菜は味が薄くて食べた気がしなかった。
そこでトマトの苗も植える。
トピナンブールとトマトは毎日馬の様に沢山水を飲んだ。
トマトは8月上旬でもまだ青く、ちょうど私の夏のヴァカンス中に熟し、大半は不在中の水やりを頼んだ管理人の胃袋に収まった。
一方トピナンブールは秋になっても花を咲かせない。
がっかり。
なぜだろうと思っていたら、ヴェローナのキアラが根菜のトピナンブールと花を咲かせるトピナンブールは種類が違うのだという。
そして花を咲かせなかったトピナンブールは11月に枯れた。
収穫期と言われる12月上旬にプランターを掘り起こしてみてびっくり。
土の1/5くらいが根菜のトピナンブールに化けている。
植えたのはたった3つの小さな根だったのに。
ちょっと魔法みたいだった。
ポケットを叩くと倍増していくビスケットの歌みたいに。
あるものを「これをどう料理しよう」と言うのが本来料理の基本のはず。
今では逆になって、作る料理に合わせて食材を買う方が普通になってしまっていますが。
その時に作った炊き込みご飯は、以来病みつきです。
塩とオリーブオイルでオーブンで焼いただけでも美味。
ネット上で見つけ一見美味しそうで試してみた「トピナンブールと粒マスタードのオーブン焼き」は、粒マスタードの酸味とトピナンブールが相性が悪く、一度きりでやめました。
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さて翌年はどうするか。。。
ヴェローナのキアラの言う事が正しいとなるとあの花を鑑賞するためには根菜のトピナンブールを放棄しなければならない。
花か団子か(花か芋か)、それが問題だ。
根菜のトピナンブールは買えるけど、花は売っていない。
野原に咲いているものを摘んで家に持ち帰っても3日で枯れてしまうけれどプランターで花をつければ1か月近く咲き続けてくれる。
そう考えれば自ずと、「団子より花」と言う選択になる。
10月に花の咲いていた。ミラノの北公園のさらに10kmくらい北の空き地まで行って、根を持ち帰ってくる。
トピナンブールは畑に植えたら二度と除去できないから要注意、と言われるほど繁殖力が強く、すくすく育ってその翌年は1か月以上大好きな花を楽しませてくれた。
花を咲かせたトピナンブールは12月上旬の収穫期にプランターを掘り起こしてみたら、根菜より細身だけど来年用の白い根が沢山ある。一部を来年用に植えて、残りを試しに食べてみると確かに根菜のトピナンブールと同じ味がする。根塊と違ってボリュームはないけれど2、3日分のご飯のおかずが作れる。