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国税関係

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元国税職員による税務調査の記事や税務職員になるための情報を掲載しています。
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#税務

税務調査の話 その6 〜国税総合管理システム〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。今回は、国税総合管理システム(KSK)の現状と展望を記事にします。 これまでの記事 国税総合管理システム(KSK)とは全国の納税者が提出した確定申告書については、全てデータ化され、一つのシステムに集約されます。このシステムを国税総合管理システム(KSK)といいます。 以下、以前の記事にも書きましたので、既にお読みいただいている方は、次の項目まで読み飛ばしてください。 申告書の形式的な誤りについては、システムに入力した時点でエラーとし

税務調査の話 その7 〜非違事項別解説① 売掛金〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。今回から非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。いよいよ筆者の経験をお披露目するシリーズとなります。初回は売掛金について。 これまでの記事(税務調査の話その○) 売掛金の調査は基本中の基本駆け出しの国税職員(事務官)が最初に見方を覚えるのが売掛金の計上漏れです。 売上は、商品を引渡した時やサービスを提供したときなどに計上することなになっています。請求書をお客さんに送付しているかどうかは関係ありません。 小規模企

税務調査の話 その9 〜非違事項別解説③ 振込売上の除外〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は不正の一つである売上除外のうち、振込売上の除外を取り上げます。 今回の記事は長いですが、割と力を入れて書いたので最後までお読みいただけると嬉しいです。読むのが大変という方は、”筆者が経験した事案"という項目だけでもお読み下さい。 これまでの記事(税務調査の話その○) 振込売上の除外売上代金の回収手段として最も多いのが銀行振込です。社歴の浅い企業だと100

税務調査の話 その10 〜非違事項別解説④ 処分・認定賞与等〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は、少し毛色の異なる処分について取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 処分とは会計では、複式簿記を前提にしていますので、期末の売上の計上漏れを修正すると、その相手勘定である売掛金の修正も必要となります。仕訳で書くと次のとおりです。 税務上は、複式簿記を明示的に取り扱いませんが、同じような考え方をとります。 売上計上漏れの処分は何ですか?

税務調査の話 その14 〜非違事項別解説⑧ 外注費〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は外注費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 基本的には仕入と同じ小売業・卸売業以外では、売上原価の大きな割合を占めることが多い外注費ですが、商品や原材料等のモノの動きを伴わないだけで、不正の態様は仕入と同様です。仕入については↓を参照 外注費については、モノの動きが伴わないこと、一人親方等の個人に対するものも不自然ではないことなどから、

税務調査の話 その18 〜非違事項別解説⑫ 経費前編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は経費を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 基本は仕入・外注費と同じ不正の手口については、仕入・外注費と基本的には同じです。詳しくはこちらをご参照下さい。 本稿では、経費に特有の(特徴的な)非違事項について記述します。 個人的経費の付け込み法人の場合は役員個人の経費を会社の経費に計上し、個人事業主の場合は家事費を事業所得計算上の必要経費

税務調査の話 その20 〜非違事項別解説⑭ 経費後編〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は誤りやすい経費について取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 調査官からすると申告是認(何も指摘できないこと)は是非とも避けたいところです。そのため、過去の経験から誤りやすいと思われる処理を丹念に調べることが多いです。 本稿では、筆者がよくチェックしていたものをいくつかご紹介します。なお、これら以外にもたくさんあると思いますが、網羅性は意識

税務調査の話 その21 〜非違事項別解説⑮ 貸倒損失〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は貸倒損失を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 貸倒損失の正しい処理については、筆者の税務調査の経験上、税理士の中でもきちんと理解していない方が多かった印象です。それでは、税務調査の観点からみていきましょう。 貸倒損失が認められる場合法人税基本通達9-6-1〜9-6-3に規定されています。 1 金銭債権が切り捨てられた場合(9-6-1)

税務調査の話 その22 〜非違事項別解説⑯ 消費税の調査概論〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は消費税固有の非違を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 消費税の税務調査消費税を単独で調査することはあまり多くないです。というのも、通常は法人税や個人なら事業所得に連動する部分が多いからです。売上計上漏れが見つかったら、その分の消費税も追徴するというような関係ですね。 一方で、法人税の納税義務がない場合でも、消費税の納税義務がある者も存在

税務調査の話 その23 〜非違事項別解説⑰ 消費税固有の非違〜

元国税職員による税務調査のあれこれ。前回に引き続き非違事項(誤りや不正による要是正項目)別の解説をしていきます。今回は消費税固有の非違のうち課否判定の具体例を取り上げます。 これまでの記事(税務調査の話その○) 給与か外注費かコンプラに携わっている方だと偽装請負の話と思うかもしれません。実は大いに関係があります。 結論から言うと、外注費は(課税)資産の譲渡等に該当するため課税仕入になりますが、給与は資産の譲渡等に該当しないため課税仕入になりません(不課税仕入)。資産の譲

税務大学校の思い出

筆者の社会人としての振り出しは国税職員でした。国税時代の研修の思い出について書いてみました。 税務大学校のHPはこちら 高卒区分の普通科研修については、こちらをご参照ください。 専門官基礎研修国税専門官採用者は、採用直後から埼玉県和光市にある税務大学校(税大)で4か月間の専門官基礎研修を受けることになります。全国の国税局採用者が集められるため、敷地内の寮に寝泊りする人が大多数です。東京国税局や関東信越国税局採用者の場合、自宅から通勤(通学ではない)する人も多いです。基本

国税専門官になろう!番外編Q&A ~金時計を取りたい!~

税務大学校で金時計を取るには?という観点のご質問をいただきましたので、質問者様のご了承の下、Q&Aを掲載します。 これまでの記事はこちら 過去問の入手A 手続は一般の行政文書開示請求と同じです。国税庁については、こちらに案内があります。 行政文書の名称は正確でなくても特定できればOKなのであまり神経質にならなくて大丈夫です。 留意点としては、実際にコピーするのは税大本校の職員=先輩なので、身元がバレるのと手間を掛けさせることになります。私は卒業式の日に嫌味を言われまし

税務大学校・普通科研修について 〜高卒区分・税務職員採用試験〜

普通科の後輩(女性)に記事を書いてもらいました。高卒区分の税務職員採用試験を考えている方や内定者は参考にしてください。 普通科研修の公式HPはこちら 研修は1年と長期に及びます。 生活について全寮制です。研修所(採用された国税局ごと)やその年度の人数によっても違うかと思いますが、私の時は2人一部屋で2-3ヶ月に1度部屋替えがありました。風呂・トイレは共同で、部屋には備え付けられていません。 1日のスケジュールは細かく決まっていて、7時のラジオ体操で始まり、掃除、朝食、

会計監査と税務調査の違い

両方経験した筆者が思いつくままに書きましたので、ご興味があればお読みください。 目的会計監査は、財務諸表(決算書)に全体として重要な虚偽の表示がないことを証明する手続です。”重要な”の程度は、投資家の投資意思決定に影響があるかないかで決まります。そして、財務諸表の適正性を会社から独立した立場の監査人が保証します。保証という言葉がとても大事です。重要な虚偽表示を看過した場合(粉飾決算の見逃し)、監査人の責任問題となります。 税務調査は、納税者の申告内容に誤りがないことを確認