殺人犯が書くミステリー!? 300万部超売り上げるベストセラー作家の殺人
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殺人犯が書くミステリー!? 300万部超売り上げるベストセラー作家の殺人

怪奇譚蒐集館

「本当にあったことしか書けないなら、僕なんか大量殺人犯ですよ~~」というセリフを聞いたことがあるに違いない。
推理小説家がよく言うセリフである。

日本において、本当に殺人を犯した人が書くミステリーは私の知る限り無いはずだが、世界には元殺人犯の推理小説家が存在する。

その名も「アン・ペリー」(Anne Perry)
300万部以上を売り上げ、2000年にはエドガー・アラン・ポーの名を冠したエドガー賞を受賞した実力のある作家だ。

映画化もされた、ペリーが犯した殺人の全貌とは?

1954年、15歳のころ、彼女はニュージーランドで暮らしていた。

彼女には結核の持病があり、より温暖な気候での静養が必要だったからだ。
学校にもあまり行けず、孤独だったはずのペリーの支えは1人の友達だった。

親友はポーリン・パーカーという女の子。彼女たちは2人だけの空想の世界を一緒に作り上げて楽しんでいたという。その世界ではジェームズ・メイソン、オーソン・ウェルズという有名俳優とも同居している設定だったらしい。(妄想がかわいい)

しかしこの頃、ペリーの父親は職を失い、母親は浮気をしていたことで、彼女の両親は離婚寸前だった。
そんな絶望的な時期にペリーは親友と引き離され、南アフリカで叔母と暮らせと両親から命じられる。

ペリーの母親は、ポーリンにペリーと一緒に行ってはどうかと声をかけたらしい。ポーリンの母親がどう答えたのかは分からないが、この結末を知っている限り、色よい返事ではなかったのだろう。
彼女らは、ポーリンの母親を殺すことさえできれば、ポーリンがペリーと一緒に南アフリカへ行くことが出来るのではないかと考えたわけだ。

別れたくなかった2人は、一緒に殺人の計画を立て始めた。

1954年6月22日。2人はポーリンの母親と散歩へ出かけた。

人気のない公園。
ペリーが輝く石を落とすと、ポーリンの母親は親切にそれを拾い上げようとした。

その後ろから、ポーリンがストッキングに入れた石で殴りつけた。
彼女らは1発で死ぬだろうと思っていたらしいが、人間とは簡単に死なないものだ。

結局20発以上も殴りつけ、本当に母親を殺してしまった。

事が済んだ後、彼女たちは何の後始末もせずに近くの家まで駆けつけ、母親が転んで死んでしまったと知らせた。

当然警察はすぐに真実を突き止め、2人は逮捕される。

あまりに若すぎたことから、死刑は免れ、別々の刑務所で5年を過ごしたという。
裁判が終わって以降、ペリーとポーリンは連絡を取り合っていないそう。

共依存? 淡い恋? 若い2人の関係性やいかに。

実はペリーの父親はかなりの実力者で、ロンドン生まれの科学者。リヴァプール大学の教授を務め、ニュージーランドのカンタベリー大学学長を任命された。

対してポーリンは労働階級の控えめな娘であり、身分違いの友人と言っても差し支えないだろう。

ポーリンは病弱なペリーに手紙を書き、助けてくれなければ自殺すると訴えていたという。

さらにポーリンは過食症気味であり、食べた後は吐いてしまうという心配になるような症状もあったらしい。

彼女らが性的関係を持っていたという噂もあるが、ペリーは否定している。

ポーリンの性格は推しはかりづらいが、ペリーの状況は何となくつかみやすい。

病弱なお嬢様、初めてできた友達。きっと失いたくないはずだし、どう接するべきかも分からないだろう。それに加えて、頼れるはずの家族も崩壊寸前だった。

真実は2人の中にしかないが、勝手な憶測ではポーリンが主犯だったのではないかしらと思ってしまう。

あくまで真相は分からない。お読みの皆さんがどう思うかはぜひ教えてほしい。

元殺人犯が描くミステリーはどんな話?

はてさて、そんな一筋縄ではいかない過去を持つペリーだが、いったいどんな小説を書くのか。

1番有名なのは、19世紀イギリスを舞台とした、トーマス・ピットシリーズ。

シリーズの内2作は日本でも翻訳が出ている。

スコットランドヤードで働く警部ピットと、家族の反対を押し切って彼と結婚したお嬢様シャーロットが2人で謎を解く本格ミステリだ。

特に浅羽莢子が訳する
『娼婦殺し』は大変読みやすく、お勧めだ。
https://www.amazon.co.jp/dp/4087603377

上流階級に容疑者がいるがために、ピットが介入しにくいという19世紀っぽい設定をぜひお楽しみいただきたい。

19世紀イギリスは、私のnoteでも触れた、ロセッティや『ドラキュラ』が生きた時代だ。

ぜひその息遣いを彼女の読みやすいミステリで感じてほしい。


・参考資料

・Neustatter, Angela. "I was guilty, I did my time", https://www.theguardian.com/books/2003/nov/12/crimebooks.features11

・https://en.wikipedia.org/wiki/Anne_Perry

・乙女の祈り
https://www.amazon.co.jp/dp/B000657KLG
こちらがこの殺人事件の映画化作品。この映画によって、アン・ペリーの前身が明らかとなった。

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