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社会人のための教養:生産性とは何か?

皆さん、生産性という言葉は聞いたことありますか?

特に社会人の皆さんは、生産性という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか?

2018年6月に「働き方改革関連法」(正式には、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)が成立し、2019年4月から段階的に関連法が適用されています。

2019年4月から

・高度プロフェッショナル制度の創設

・フレックスタイム制度の拡充

・残業時間の上限規制(中小企業は2020年4月から)など

2020年4月から

・同一労働同一賃金(中小企業は2021年4月から)

これらの法律の大きな目的の一つは、労働環境を改善し、労働生産性を高め、ひいては日本の生産性を高めることにあります

ところで、皆さんは普段よく耳にする「生産性」という言葉について正確に理解をしているでしょうか?

生産性といわれるとなんとなく頭では理解できるけど、それを的確に説明できる人は少ないのではないでしょうか?

本日は、生産性についてできるだけわかりやすく説明したいと思います。

この記事がオススメな方
・企業で働くビシネスマンの方
・生産性という言葉を知っているけど、内容がよくわからない方
・生産性向上のメリットを知りたい方

生産性とは

ところで、生産性という言葉はいつから日常生活で使われるようになったのでしょうか?

生産性という言葉がよく使われるようになったのは、ごく最近で、2017年9月に安部元首相が経済政策の中核として「生産性革命」というメッセージを発信したのがきっかけだといわれています(宮川.2018『生産性とは何かー日本経済の活力を問いなおす』ちくま新書)。

そもそも生産性という言葉は「経済学」で使われている言葉で、経済学を勉強されている方以外にとってはあまり馴染みのない言葉でした。

では経済学ではどのような意味で生産性という言葉が使われているのでしょうか。

生産性とは、経済学では、生産要素(生産設備、原材料、労働など)を投入してどれだけの産出物や付加価値が生み出されたかを図る指標のことをいいます。

具体的には次の式で算出されます。

生産性 = 産出物(または付加価値)÷生産要素の投入量

つまり、生産性を向上させるためには、産出物(付加価値)を増加させるか、生産要素の投入量を減らすことによって達成することができるということになります。

労働生産性とは

皆さんにとってなじみのある生産性は、労働生産性ではないでしょうか?労働生産性を高めるために、本を読んだり、資格取得の勉強をしてスキルアップをしている方々はたくさんいるのではないでしょうか。

先ほどの生産性の式において、分母に生産要素があるのですが、この生産要素は次の3つに分けられます。

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資本生産性は、資本から生み出される生産量(または付加価値)をベースに算定された生産性です。

中間投入生産性は、中間投入(原材料など)から生み出される生産量をベースに算定された生産性です。

そして、労働生産性は、労働(労働時間)から生み出される生産量をベースに算定された生産性になります。

具体的に、労働生産性は次のような式で算定されます。

労働生産性= 生産量(または付加価値)÷総労働時間(労働者数×労働時間)

ちなみに個々の企業で労働生産性を簡便的に計算すると、

労働生産性 = 売上総利益(売上-売上原価) ÷ 従業員の総労働時間

となります。

つまり、皆さんが務めている会社の労働生産性を上げたいと思ったら、できるだけ少ない労働時間で、売上を増やす(売上総利益を増やす)ということになります。

労働生産性を向上させるメリット

ところで、労働生産性を向上させることでどのようなメリットがあるのでしょうか?

その最大のメリットは、賃金の上昇です。

単純化していうと、労働生産性が上昇するということは、その労働者が生産した量が増えることを意味するので、労働者1人当たりの売上が増加することになります。

もし売上の増加について労働者への分配率が変わらなければ、売上増加分の一部は給料に回されるので、労働生産性の増加とともに賃金も増加するはずです。

しかし、実際には、企業は競争しているので、労働生産性の向上の分を、製品価格の低下に回すかもしれません。そうすると、賃金の絶対額は上昇しないという意見もあるかと思います。

しかし、給料が変わらずに物価(物の値段)が減少するのであれば、それは実質的に賃金が増加したことを意味します。

実際にデータをみると、労働生産性が向上すれば、実質賃金も増加する傾向にあるようです(宮川.2018『生産性とは何かー日本経済の活力を問いなおす』ちくま新書p.48)。

労働生産性を高めるには

では、どうしたら労働生産性を高めることができるのでしょうか。

森川正之. 2016.「サービス産業の生産性と労働市場」『日本労働研究雑誌 』2016年1月号(No.666)によると、以下の点が労働生産性を高めると説明されています。

①プロダクト・イノベーション

特にサービス産業においては、プロダクト・イノベーションを行っている企業ほど生産性が高い。賃金で見ても,プロダクト・イノベーションを行っ
ている企業の賃金は高く,イノベーションの有無による平均賃金の差は製造業 6.6%,サービス産業 10.1%である。

※プロダクト・イノベーションとは、革新的な新製品・サービスを開発して、差別化を図ることを指す。

②ITの活用

IT が需要変動に応じた価格設定,精度の高い需要予測等を通じてサービス産業の稼働率向上をもたらしたことを示す事例や実証研究は少なくない。

③経営の質の向上

市場競争、企業の所有構造、ガバナンス、優れた労務管理(良好な人事管理、労働組合)などは経営の質の重要な要素である。例えば、家族企業―特に血族間で経営を継承した企業―の経営の質は平均的に低い。なお、経営の質の向上はワークライフバランスの改善にも寄与する。

経営者ならまだしも。会社員にとっては、実践することが難しい事柄になると思います。

社員の一人として、①何か新しいアイデアを提案したり、②少しでも仕事を効率化できるようなやり方を探して実践したり、③ITを活用して作業負担を減らす、ITを用いて収益を生み出しだりすることによって生産性の向上が少しずつ達成できる内容になるかもしれませんね。

本日のまとめ

本日は、生産性とは何かについて説明をしていきました。

生産性とは、生産要素(生産設備、原材料、労働など)を投入してどれだけの産出物や付加価値が生み出されたかを図る指標のことをいいました。

なお、労働生産性は、労働(労働時間)から生み出される生産量をベースに算定された生産性になります。

生産性を高める我々にとってのメリットは、賃金の増加でした。

生産性を高めるためには、

①プロダクト・イノベーション

②ITの活用

③経営の質の向上

がありました。

この記事が皆様にとって少しでも役立つと非常にうれしいです。

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参考文献はこちら

森川正之. 2016.「サービス産業の生産性と労働市場」『日本労働研究雑誌 』2016年1月号(No.666)

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