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カナダのレストランで、あなたにお酒を売るのをお断りします

なぜ、レストランでお客さんのお酒を売らないの?と思ったでしょう。

私はカナダの日本食レストランで、サーバー(日本でいうとホールスタッフ)をしています。仕事内容は、予約管理や食事の配膳、もちろんお酒の提供があります。

実は、カナダのレストランやバー、リカーショップで働く人は、お酒を販売するために資格を持っています。この資格がなければ、お酒を販売できません。

カナダでお酒を販売する人の資格

リカーライセンス(酒類販売業免許)は、日本やカナダもお酒を販売するお店は資格を持っています。さらにカナダでは、お酒を販売する人も資格が必要です。

資格は「ProServe(プロサーブ)」といいますが、カナダの州によってそれぞれ名前が違います。
トロントのあるオンタリオ州は、「Smart Serve(スマートサーブ)」、バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州は、「Serving It Right(サーブ イット ライト」となっています。

もし、違う州へ引っ越しをしてレストランで働く場合は、その州の資格を取得しなくてなりません。たとえば、アルバータ州の「ProServe(プロサーブ)」を持っていても、オンタリオ州のSmart Serve(スマートサーブ)を取得しなおします。

「ProServe(プロサーブ)」とは

カナダ・アルバータ州のレストランやバー、お酒の小売店で働く人が責任を持って販売するための資格です。お客さんが楽しんで、安全にお酒を提供するための知識や、酔っぱらったお客さんにお酒の販売を断るテクニックなどを学びます。

たとえば体のサイズの違いでどれくらいのお酒で酔っぱらうかや、酔っぱらった人とドラッグを使っている人の違いを見分けるということも学習する内容があります。

「ProServe(プロサーブ)」は、オンラインで学べるので、働いている私にはいつでも学べて助かりました。費用は、$26.25で5年後との更新になります。
資格をとるための学習時間は、4時間から6時間といわれています。知らない単語が多くでてきて、私の場合初めて学習したときは、丸一日かかってしまいました。「この単語って何?」って、調べながらの作業で苦労したのを覚えています。

レストランでお酒を断る主な理由は2つ

私が主にレストランでお酒の販売を断る理由は、以下の2つあります。

  • ID(証明書)の確認ができないとき

  • お客さんのお酒を飲みすぎているとき

ID(証明書)の確認ができないとき

カナダでは18歳からお酒が飲めます。お酒を販売するときに、必ず年齢確認をすると法律で決められています。
年齢の確認方法はID(証明書)で、政府の認定証明書、たとえばパスポート、カナダの運転免許証、永住者カードです。確認する部分は、写真とサイン、誕生日が書いてあること。

でもID(証明書)の確認は、「25歳までに見える人」と書かれています。しかし、私の働くお店では、「30歳ぐらいに見える人」を確認します。
なので、たまーに「年齢を聞いてみよう」と思った人が35歳以上だった、てこともあって、お客さんに「年齢確認をしてごめんなさいねぇ」なんて笑うときもあります。

もし写真付きのID(証明書)がない場合やID(証明書)をスマートフォンの写真で見せた場合は、残念ながらお酒の提供はできません。実際の年齢が25歳でも、お酒を飲むときに写真付きのID(証明書)がなければ、「ごめんなさいね」とお断りしています。

なぜ、レストランなどでID(証明書)がとても厳しいのかというと、未成年者にID(証明書)の確認をしなかった場合、$750の罰金や30日間の営業停止、お酒の販売許可の取り消し。
未成年者にお酒を提供した場合は、$2,000の罰金や80日間の営業停止、お酒の販売許可の取り消しなどがあるからなんです。

お客さんのお酒が進みすぎているとき

お客さんが飲みすぎていないかの確認も重要です。たとえば、お酒を飲んで顔が赤くなっていないか、ろれつが回っていないかの確認。さらにお客さんに何本お酒を飲んでいるかも、私は数えています。

レストランでお客さんが千鳥足になっている状況は必ずありえません。だから、酔っぱらってきたかなと思ったら、お酒の提供はそこでストップ!なのです。

カナダの州や政府がお酒を飲むときに推奨しているのは、グループで飲むときは、誰か一人はしらふの人がいること、家族が迎えに来る、またはタクシーで帰る仕組みを作るとされています。

しかし、それでも事故は起こります。3年ぐらい前に、バーで友達とお酒を飲んでいた20代の男性がいました。かなりお酒を飲んでいて、サーバー(ホールスタッフ)やお店の人は、男性が友達と帰宅したと思っていました。しかし、次の日にお店の外の駐車場に止められた車の中で亡くなっていました。季節は冬で、夜は-3度ぐらいまで冷え込んでしまったのが原因の一つになってしまったようです。

事故は日本でいえば、個人の過失になるかもしれません。しかしカナダでは、個人だけの問題ではなくて、サーバー(ホールスタッフ)とお店の責任にもなります。酔っぱらった人が、安全で確実に家に帰るための手段を提供することが責任であって、法律でも決められています。事故は裁判になって、お店の営業停止、サーバー(ホールスタッフ)も罰金を課せられています。

お酒を販売する人は、お客さんを守る責任がある

カナダでお酒を販売する仕事に携わって、お酒の知識を学ぶ機会があるとは思ってもいませんでした。お店の利益を優先するのではなくて、お客さんの体を守る責任があると感じています。

もしあなたがカナダのレストランやバーでお酒をたしなむときは、ぜひパスポートを持参してください。「私は、30歳ぐらいに見える!」思った人は、パスポートは必要ですよ。



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