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アンチワーク哲学【ホモ・ネーモ】

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「労働なき世界」を実現するため「アンチワーク哲学」を紹介するマガジン。なぜ、誰1人労働しない世界が可能なのか? を徹底的に考察しています。
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#書評

ワーキッシュアクトは労働なき世界への一歩となるか?【アンチワーク哲学】

ワーキッシュアクトは労働なき世界への一歩となるか?【アンチワーク哲学】

労働の廃絶を目指してアンチワーク哲学を提唱する僕だが、「誰も道路を整備しなくなればいい」とか「誰も老人のオムツを替えなければいい」などという破滅的な思想を唱えているわけではない。むしろ、そのようなエッセンシャルな機能が社会から失われつつある状況を打破するためにも、労働の撲滅を訴えているのである。

そういう意味では、エッセンシャルワーカーの人手不足と、それに対する打開策を提示するこの本は、僕の問題

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栗原康『超人ナイチンゲール』を読んで

栗原康『超人ナイチンゲール』を読んで

アナキストブームの立役者のうちの1人、栗原康によるナイチンゲール伝。

栗原康といえば、伊藤野枝や大杉栄といったぶっ飛んだ人物をぶっ飛んだ文体で語り尽くすスタイルで知られている。だが、個人的にナイチンゲールにそこまで「ぶっとび感」があるとは思っていなかったので、意外性を感じて読んでみた。

読後感はといえば、悪くないものの、煮え切らないものだった。

イギリス上流階級の良妻賢母の枠に押し込められる

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クリス・ミラー『半導体戦争』を読んで

クリス・ミラー『半導体戦争』を読んで

僕は見渡す限りにお花畑が広がるユートピアを夢見る左翼として自己像をブランディングしてきたが、こういう下世話な本もこっそり読んでいる。

これを喫茶店でおおっぴらに広げて読むのは少し気恥ずかしかった。あたかも僕が世界情勢の未来を予言し、めざとい投資とビジネス戦略で大金を稼ごうとする諸葛孔明気取りのおじさんであるかのような印象を持たれるかもしれないからだ。

残念ながら僕は諸葛孔明を気取りたいのではな

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グレーバー&ウェングロウ『万物の黎明』を読んで

グレーバー&ウェングロウ『万物の黎明』を読んで

「この本は、瞬く間に世論を席巻し、歴史を変えるに違いない」と確信する本に、これまで何度か出会ってきた。例えば『ブルシット・ジョブ』『Humankind』『ティール組織』などである。実際にこれらの本は、僕のようなごく一部の人々を勇気づけ、知的興奮に誘った。しかし、残念ながら瞬く間に歴史を変えるような事態にはならなかった。例えば、僕が自称読書家が集まる読書会で『ブルシット・ジョブ』を紹介しようものなら

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トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』を読んで

トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』を読んで

索引と注を除いても931ページ。税込価格で6930円。ピケティが想定する読者層である「市民」の大半は、この本を読むくらいならアニメONE PIECEを全話(約1000話)観る方を選ぶだろう。

しかし、その選択は賢明とは言えないかもしれない。ピケティの文体は読みやすく、グラフでの図解も多いため、想像以上にさくさく読み進められる。それに、知的好奇心を刺激するような描写も多く、アニメONE PIECE

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