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異語り 052 記憶の町

コトガタリ 052 キオクノマチ

子供の頃、ほぼ毎日同じ街の夢を見ていた時期がある。
もちろん夢の内容は同じではない。
でも、舞台が一緒と言うか、いつも同じ街で遊んでいた。

現実の世界と同じ部分もあるが、当然違う部分もある街。
その同じ部分と違う部分が毎回同じなのだ(ややこしい)
あまりに何度も通っていたので、未だに簡単な地図なら描くことができるほどにはっきりと覚えている。

夢の中の街では、化け物が出たり怖い目にあうようなことはほとんどなかった。
不思議な体験は、むしろ現実の世界の方ばかりで遭遇していたと思う。
夢だから不思議を認識していなかった可能性もあるが、その街で怖い思いをした記憶はない。(別の夢では悪夢も見ます)

この夢の街は少しずつ拡張していくようで、自分の行動範囲が広がるに連れ、夢の中の街も行動範囲が広がっていった。
一番驚いたのは上京して数年が経った頃、不意に当時住んでいた東京の家の近所が夢に出てきたこと。
一度見るようになると以前ほどの頻度ではなかったが定期的に見るようになった。
街の匂いというか、癖のような雰囲気が地元の夢の街と同じなのだ。
八割現実と同じで二割くらいちょっと違う世界。
自分を追いかけてきたのか、自分の中で新しい認識が出来上がったのか。
数年というタイムラグが何か意味があるのか?

でもその時は気にもせず「あれ? またあの世界だ」ってすんなり受け入れてしまっていた。


その後旅に出て、数ヶ月ごとに住み込みで働いたりしていた頃はその世界の夢を見ることはなかった。


そして今。
現在地に住み着いて十年以上が過ぎた。
夢の街は5・6年前から見るようになっている。
そして最近、ついに家族が出てくるようになった。

もちろん昔の夢の街には最初から両親や弟がいた。
夫とは結婚して十六年になる(出会いはさらにその2年前)が夢の街に出るようになったのは子供たちと一緒に最近になってからのこと。
自分の中でやっと認識が固まったということだろうか?
それとも何かが自分を習って模倣しながら憑いてきてる?

夫と子どもがなかなか揃わなかったのだろうか?

もしかしたらどこかの平行線世界を覗いているのかもしれない。
なんてことを考えてみたりする。
以前よりさらに見る頻度が少なくなったので、何かしらの検証や実験を仕掛けるのは難しそうだ。


頻度が減ったということは繋がりが薄く(遠く)なってしまったのかもしれない。
京都から北海道はちょっと遠すぎたかな?

なかなか帰省もできてないしね。

まだしばらくはここに根を下ろしていることになりそうだから、また夢も濃くなってきたりしないかな?


現実よりも少し自然が多めの夢の街。
今は懐かしい故郷のように感じている。

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