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本が好きだと町が楽しくなる

私は社会人になってから本を読むようになった。
本を読むようになってから変わったことはたくさんあるのだが、その中でもうれしかったのが、”町”が楽しくなったことだ。

本が好きになると、当然のように本屋に行く頻度が増える。
そうなってくると、行きつけの店、ちょっと遠いけどそれでも通いたくなる店、入るのにちょっと勇気のいる老舗というように、本を通した町との関わりができてくる。

最近、近くの町に小さな古本屋ができた。
その町は、私が住んでいるところからは何駅か離れており、普段は行く機会のない町である。
せっかくだからと休日、その古本屋に行ってみることにした。

電車に揺られ、知らない道に迷いながらもたどり着いたその店は、小さいながらも(いや小さいからこそ)店主の世界観がしっかりと出ていて、新しい世界を発見できるような古本屋だった。
白を貴重とした店内に、店主の経験と知識に裏打ちされた古本が整然と並んでいる。
初めて見る本が散見される棚を楽しみながら店内を歩き、3冊の本を手にとってレジに向かった。

そこで私が店主に開店祝いの旨を伝えたことを皮切りに、好きな本や町の本屋事情などの話に花が咲いた。
その後は店主に教えてもらった近くの喫茶店で買った本を読みながら、ゆっくりとコーヒーを味わった。
こんなふうにして、馴染みのなかった町が「あの店がある町」に変わり、休日の過ごし方がまた一つ増えたのである。

本を好きになるまでは、町とどう関わればいいのかがわからなかった。
私は東京に住んでいたことがあるのだが、そのときは観光客のように表面的な関わり方しかできていなかった。
初めのころこそスカイツリーだ雷門だと楽しめていたが、東京での暮らしが当たり前になると、途端に休日の過ごし方がわからなくなった。
地方からでてきたので友達もおらず、2年後には逃げるようにして実家に帰ったのは、苦い思い出である。

もっと早く本を好きになっていたら、とときどき考える。
当時は行くことがなかったが(というか気づくこともなかったのだが)、人の多い東京にはやっぱり魅力的な本屋もたくさんあるのだ。
休日にそんな本屋を巡る生活ができていたら、当時の暮らしもずいぶん違っていたように思う。

実は今住んでいる町も地元からは遠く離れた土地である。
でも今は本を通して町との関わり方を見つけることができた。
そのおかげもあり、東京のころと比べたらずいぶんと楽しく暮らすことができている。

今日は休日。
さて、このnoteを書き終えたらどこの本屋に行こうか。

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