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博多座9月大歌舞伎 暫 外郎売 観劇レポ かぶきDOU其の24アフタートーク

皆様今回もコミてんラジオ かぶきDOUをお聴きいただきありがとういただきました。13代目市川團十郎襲名披露、8代目市川新之助初舞台が博多座で公演中です。まず歌舞伎十八番の内「暫」についてご紹介いたしました。


博多座初上演!歌舞伎十八番の内 暫

番組で幾度もお伝えしておりますが、このたび歌舞伎十八番の内 暫が博多座そして九州で初上演となっております!
新版歌舞伎十八番によりますと、初代團十郎が「しばらくしばらく」声をかけて悪人を追い散らす演目があり、2代目團十郎が今のような形を作ったそうです。

主人公の鎌倉権五郎景政は弱きを助け強きをくじくスーパーマンです。しかしその実体はまだ元服前の少年です。「荒事は童(わらべ)の心で演じよ」という言い伝えもあるそうです。

麻布十番麻の葉さんの絵てぬぐい 暫
勇ましさの中に幼さがあります

かぶきDOU的例えで申しますと12代目團十郎さんの鎌倉権五郎は「生徒会長のような折目正しい強さ」で13代目の権五郎は「やんちゃでも絶対頼れるリーダー男子」です。歌舞伎の型は同じでも演者によって違いが出るのも醍醐味です。


暫のあらすじ


春うららかな鎌倉鶴岡八幡宮の社頭で中村芝翫さん演じる清原武衡(きよはらのたけひら)が関白の位を天皇から任命される日を迎えています。
武衡は藍色の隈取で、実は国を滅ぼそうと企てる大悪人です。
腹出しと呼ばれる赤い顔で大きなお腹が特徴的な家来達がずらりと並んでおります。
中村梅玉さん演じる加茂次郎(かもじろう)中村莟玉さん演じる桂の前(かつらのまえ)たちが捕えられています。
彼らは鶴ヶ丘八幡宮に額を奉納に来たところを武衡に捕まりました。実は加茂次郎の父親とのイザコザや、許嫁の桂の宮に横恋慕して拒否されたりと武衡は強い恨みを持っていたのです。
市川右團次さん演じる腹出しの成田五郎(なりたのごろう)を召集し、加茂次郎一行を処刑しようとします。
そこへ「暫く〜!」と声が聞こえてきます。花道より鎌倉権五郎景政13代目市川團十郎の登場です。その圧倒的なパワーに恐れおののく家来たちです。


鎌倉権五郎景政のこしらえ


歌舞伎メイクの隈取
白塗りの顔じゅうに赤い血管を浮き立たせた筋隈(すじぐま)で、眉はキリリと太く、メイクだけでもとてもパワフルな印象です。
衣装
ラジオでは詳しくご紹介しましたが暫のトレードマーク素襖(すおう)を着る前までの着付けを楽屋で行っています。体を大きく見せるため何枚も重ね着をして、継ぎ足と呼ばれる高さ30cmもの履物をはき、衣装は専属の衣装方とお弟子さん5人がかりで汗だくで行われるそうです。
通常は化粧が終わると鬘(カツラ)をつけますが暫は大掛かりな衣装のため鬘が後になるそうです。

髪型
角(つの)前髪に、両サイドに太く固めた毛が五本ずつあしらわれた五本車びんです。
頭の後ろで結んでいるのは大きな白い力紙。これは神様からの力を借りるアイテムで超人的なパワーと勇気を表しているそうです。
そこから移動をして仕上げです!花道の入り口の揚幕の手前の場所で素襖(すおう)を着ます。

◎暫の素襖とは
柿色で大きな三升の紋があしらわれた大きな袖。畳一畳分もあり素襖の中にはが通され、ピンと正方形の形ができています。
團十郎さんのお話では、意識的に両手を内側に向けていないと素襖の袖の張りの力の勢いで逆ハの字になってしまうそうです。

鎌倉権五郎の出の前に、市川右團次さん演じる腹出し成田五郎が花道から登場します。
成田五郎が花道から出た後でないと2m越えの大太刀を佩(は)いたり、こしらえの仕上げができないためスピードも求められます総重量60kgもある暫の衣装を支える裏方の皆さんのお力も超一流ですね


鎌倉権五郎景政 花道より登場!


アーリャー」「コーリャー」と聞こえてくるのは化粧声(けしょうごえ)です。役者さん達が主役をリスペクトするコールをかけて荒事の雰囲気を盛り上げます。
花道でのツラネも聴きどころ。主人公が花道で披露する長台詞のことです。内容が公演ごとに少し異なっていて一期一会のお楽しみもあります。
ツラネが決まると「でっけえ」と締めくくります。
鎌倉権五郎のあまりの迫力に家来たちが怯んでしまいます。
武衡の命で市川男女蔵さん演じる通称なまず坊主や、中村扇雀さん演じる女なまず 照葉が鎌倉権五郎に引き下がるよう掛け合いますが、けんもほろろです。
この掛け合いの中に権五郎の少年ぽさが出るセリフや所作があるのでご注目です!



暫は後見も大奮闘

鎌倉権五郎は花道、七三あたりに滞在する時間が長いです。その間背後にはピッタリとお一人の後見がサポートに付きます。
さらに茶後見と呼ばれる役者さんがいます。團十郎さんの口に湯呑みを直接運び、お茶を飲ませる役目です。今回は12代目の部屋子の市川福太郎さんが勤められています。花道が暫の衣装の大きさで狭くなっている上に、権五郎の化粧や衣装が崩れないように口に運ばなければならないですので大変なお役です!
その際、團十郎さんが両手を前にして素襖を押さえ込んでいる形から、右手の素襖だけをスッと花道に平行に沿うようにして茶後見を迎える所作がとてもかっこいいです!
さらに後見さんの奮闘が垣間見られるのは花道から舞台中央へ移動しての最も有名なシーン「元禄見得」の場面です。
舞台上で、後見やお弟子さんが4人がかりで素襖を脱がせていきます。
團十郎さんが後見の腕をグッとつかんだ状態で勢いよく素襖を真下に引き抜きます。激しく見えますが團十郎さんが衣装の重みでよろけないための工夫だそうです。なおかつ素襖を傷つけないように細心の注意が払われます。
客席に背を向けた状態ですが、あえて披露することで観客もドキドキ感を味わえるエンターテイメント性を感じます!

元禄見得が決まりますとそこからは鎌倉権五郎の独断場です。
大太刀で一気に家来たちの首を切り落とします。しかし残虐さは全くなく家来たちの首元に大太刀がくると家来が頭を着物に引っ込め同時に後見が生首の人形をゴロリと投げ出すのがおかしみです。
そして、なまず女こと照葉は、実は権五郎側のスパイで武衡の悪事を全てさらけ出し万事解決となります。
鎌倉権五郎は大太刀を振り回し荒事の掛け声「やっとことっちゃうんとこなあ」で花道に引っ込みフィナーレです。見終わった後の爽快感がたまりません!

暫を勤めるには超人的なパワーが必要です。團十郎さんには千穐楽まで頑張って頂きたいです!
荒事中の荒事と評されます、歌舞伎十八番の内「暫」を博多座襲名披露夜の部の観劇レポートを交えてお伝えしました。


博多座昼の部 歌舞伎十八番の内 外郎売


続いては博多座9月大歌舞伎昼の部の観劇レポートです。
お待たせいたしました外郎売です!
外郎売は新之助さんの祖父12代目團十郎さんが復活され曽我物のストーリーを取り入れて薬売り実は父の仇討ちというの荒事の要素も加えられました。
昨年歌舞伎座での8代目市川新之助襲名公演に引き続き初の地方公演となる博多座でも主役の外郎売実は曽我五郎を新之助さんが勤められています
花道から外郎売の出で立ちで登場。名前を聞かれて「8代目市川新之助」と名のるところで客席がどっと湧きます。花道から肩を揺らして舞台に来る所作が12代目を思い出させてくださいました!
外郎売の言い立ての前にご挨拶です。まず工藤祐経(すけつね)役の中村梅玉さんからお言葉があり、新之助さんからも大変立派なご挨拶を伺えました!
12代目團十郎さんが外郎売の言い立てを復活される際に2代目團十郎を意識して作られたそうです。特に「チリカラチリカラ ツッ、タッポウ」の部分、ツッで息を入れてタッポウを大きく張って伸ばすように気をつけていたそうです。新之助さんは祖父の意思を継ぎ、素晴らしい言い立てとなっております!
その後は曽我五郎の正体を表し新之助さんの大立ち廻りとなります。
前半は喋りっぱなし、後半は激しい立ち廻りですがパワフルに舞台いっぱいに大きく体を広げての見得は素晴らしかったです!

團十郎さんは7月の会見で、お父様からの教えで大切にされているのが「歌舞伎十八番すべて出が大事ということ」だそうです。
13代目の暫、そして新之助さんの外郎売ともに素晴らしい出を披露されております!千穐楽まで残りわずかではありますが、歌舞伎界で歴史的なイベントです。ぜひ多くの方に足をお運びいただけたら幸いです。

次回は千穐楽の様子を観劇レポいたしますお楽しみに!



縁の一曲 市川團十郎さん


歌舞伎役者さんに縁の曲をご紹介します縁の一曲のコーナーです。今回は13代目市川團十郎さんでした。
2016年平成28年 海老蔵時代テレビ東京のドラマ石川五右衛門」で主役の五右衛門を勤められました。歌舞伎演目でも石川五右衛門はお馴染みですがその舞台、京都南禅寺でドラマロケを行ったことでも話題となりました!

博多座襲名披露公演昼の部「景清」で共演の上妻宏光さんがドラマ主題曲を手がけられています。
今回の博多座の景清では、上妻さんは舞台上手の雛壇で、連中の皆様とご一緒での演奏でした。衣装が上妻さんのみ、上が白で下が濃紺の凜とした袴姿でした。生の舞台で拝見して改めて、津軽三味線と荒事歌舞伎との親和性を感じました!
月夜の影〜石川五右衛門のテーマ〜をお届けしました。



めでてえなぁ 9/6-9/12

お誕生日を迎えられる歌舞伎役者さんをご紹介する「めでてえなあ」のコーナーです!お名前と、所属 屋号をご紹介します。五十音順となっておりますのでご了承ください。9/6から9/12がお誕生日の皆さまでした。

9/6松本幸蔵さん
高麗屋 

9/7片岡進之介さん
松嶋屋

9/7 中村祥馬さん
成駒家

9/10中村歌之助さん
成駒屋

9/11 中村好蝶さん
中村時蔵一門

9/12 市川猿四郎さん
澤瀉屋

9/12 中村莟玉さん
高砂屋
莟玉さんは博多座の舞台でお誕生日を迎えられました。
暫「桂の前」は輝くほどの美しさです!


今回は7名の皆様でした。お誕生日おめでとうございます!



次回は9/19㈫午前10:00〜10:25 FM77.7MHzコミてん生放送です。ラジオ局公認無料アプリListenRadioやコミてんYouTubeでも生配信しております。お楽しみに!

9/12番組アーカイブはこちらからご覧いただけます

※権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりません。音声だけの配信となりますのでご了承ください。



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