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6月博多座大歌舞伎初日観劇レポ② かぶきDOU其の62アフタートーク

番組では6月博多座大歌舞伎の昼の部と夜の部の初日観劇レポートをお伝えしています。今回は2回目です。6/10は休演日でしたのでご出演の皆様はリフレッシュされたのではないでしょうか?
本公演と演出やストーリーが異なる部分がありますが大まかな概略はかぶきDOUのバックナンバーでご確認いただけたら幸いです。


恋飛脚大和往来 新口村観劇レポ

まず昼の部から恋飛脚大和往来 新口村(にのくちむら)です。
ここは忠兵衛の故郷 新口村。雪景色の中、頬かむりをした中村梅玉さん勤める忠兵衛中村扇雀さん勤める梅川が寒さに肩寄せて2人一緒にゴザに体を包んでの登場です。
5/30に開催された船乗り込みでは小麦色の肌でワイルドな印象の扇雀さんでしたが、女方のこしらえになりますと本当に色っぽくてため息が出ました…✨
2人は身分を偽って昔馴染みの忠三郎を訪ねますがあいにく留守で忠兵衛の公金横領の噂が村じゅうに広がっていることを知ります。
忠三郎の女房おしげ(中村梅乃)の頼みで家の留守を預かっていると旅芸人がやってきます。
中村虎之介さん勤める万歳(まんざい)と中村玉太郎さん勤める才造(さいぞう)です。
たまたま通りかかった百姓の水右衛門(中村梅蔵)の長寿を祝って 忠三郎の家の前で舞を舞います。 その賑やかさと対比して家の中に潜む忠兵衛と梅川の逃避行のわびしさを感じさせます。
ここから忠兵衛は吹替えとなります。

※吹替え (ふきかえ) とは…

歌舞伎役者さんが何役も勤められる際に同じ場面に別のお役で出る間、他の役者さんがその役を勤めることを意味します。早替りでも吹替えが用いられます。

舞台から移動して早替りで花道から中村梅玉さん勤めるもう一つのお役 忠兵衛の父 孫右衛門の登場です。
吹替えの役者さんと変わっても忠兵衛と梅川の熱演はそのままで 障子越しから父 孫右衛門に手を合わせます。この時、互いの片手を合わせています!このシーンから2人の情愛が伝わります。

孫右衛門が梅川に下駄をすげ替えてもらいながらのやりとりの際、忠兵衛が父を思う気持ちをこらえきれず、子どものように飛び出そうとする場面があります。
しかし「今じゃない」といなす孫右衛門です。
梅川が機転を利かせて孫右衛門に目隠しをしてようやく二人は再会となります。さらに梅川が鮮やかな手つきでハラリと孫右衛門の目隠しを外します。ここで正真正銘の再会となり父と息子はかたく抱き合います。
捕り手が鳴らす太鼓の音が聞こえ屋敷前から舞台は雪景色となります。 深々とお辞儀をしながら梅川と忠兵衛は去っていきます。
孫右衛門は新口村の道しるべに寄りかかって、二度と戻らない愛しい息子とその恋人の姿を見送るのでした。
中村梅玉さんの余韻のある演技に捕まらない保証が無い二人を捕り手に突き出した方が良かったのか?孫右衛門は後生この苦しみに苛まれるのでは…とイメージが広がり胸が締め付けられました。
罪人の家族の在り方は現代にも通ずるテーマだと感じました…


身替座禅 初日レポ

続いては昼の部 身替座禅の初日観劇レポです。
坂東彌十郎さんが勤められた奥方玉の井の印象が今回はどことなく…あくまでも主観ですがNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で彌十郎さん勤められた北条時政の後妻 りくを連想しました。
宮沢りえさんの色っぽくもあり小悪魔的でピュアな「りく」を彌十郎さんの玉の井から感じました!
山蔭右京を勤める尾上松也さんは船乗り込みの式典で「彌十郎さんの胸をお借りして頑張りたい」とお話されていました。
松竹エンターテインメントの公式プロフィールで松也さんの身長が178cmと高身長!彌十郎さんは183cmですので身長差が5cmとあまり無い分、より彌十郎さん勤める玉の井が可愛らしくみえたのかな?とも思います。
そして、松也さんにとって山蔭右京は2013年08月の自主公演(挑む~傾く者の繋ぐ技量~)で勤められて以来の大役です。
初日は緊張されたかと思いますがしっかりと勤められていました。公演を重ねられて松也さん流の山蔭右京の「味」が出てくることに期待したいです!

中村鷹之資さん勤める侍女の千枝(ちえだ)中村莟玉さん勤める小枝(さえだ)がとっても可愛らしいのですが物怖じせず右京に物申す姿が滑稽です♪
そして尾上右近さんのちょっと頼りない太郎冠者もハマり役でした。
修善寺物語からご出演の皆様は幕間およそ30分でご登場です💦
さらに夜の部東海道四谷怪談の消費カロリーを思うと本当に皆さん凄いスタミナです!
ぜひ大いに笑ってお楽しみいただきたいです♪


東海道四谷怪談 初日レポ


博多座で22年ぶりに通し狂言四谷怪談がかかるということで前回の放送では有名な場面 大詰から切口上までをお伝えしました。
今回は序幕から三幕目です。
序幕はストーリーの展開がとてもはやいです!情報量が多いかもしれませんので序幕は細かく区切ってご紹介します。


序幕 第一場 浅草観世音額堂の場

賑やかな浅草 浅草寺の茶店の場面から始まります。薬売りの大きなのぼり旗を掲げて颯爽と花道から直助 (坂東彌十郎)が登場すると客席から歓声があがりました!
ずっと横恋慕していたお岩の妹 お袖(坂東新悟)と再会しますがあっさりふられてしまいます。 しかし直助は、お袖の夜の仕事(女性が春を売る)地獄宿の話を耳にします。
お岩の父 四谷左門(片岡亀蔵)が絡まれているのを助けるのが民谷伊右衛門(尾上松也)です。
伊右衛門と左門はともに塩冶家に支えていた武士でしたが落ちぶれて今は浪人となっています。
舅の左門に、自分の子を身ごもっているお岩との復縁を願いますが行いの悪さから相手にされず仕方なく花道を戻る伊右衛門です。
そこで出会い熱い視線を送るのがお梅(中村莟玉)です。伊右衛門にメロメロで強い恋心を抱いています。片岡市蔵さん勤める伊藤喜兵衛(きへえ)も孫娘のお梅が可愛くて仕方ない様子です。しかし喜兵衛は塩冶家に敵対する高師直の家臣です。
そこに物乞い姿の奥田庄三郎中村虎之介)がやってきて手にしていた廻文状を落としてしまいます。そこには高師直 討ち入りのための段取りが記されています。 あわや伊藤家の人間の手に渡りそうになりますが尾上右近さんが三役のうちの一つ 小間物屋の佐藤与茂七で登場し廻文状をうまく取り戻します。与茂七と庄三郎はお互い塩冶家の同士であると気づくのでした。

客引き女 おいろ(尾上菊三呂)が与茂七に地獄宿への売り込みをかけます。今でいうキャッチですね。ちなみにお袖は「おもん」という源氏名で出ています。おいろの誘い文句が笑いを誘います♪


序幕第二場 按摩宅悦内の場

地獄宿に直助が客としてやってきてお袖は関係を迫られます。
そこに、与茂七が客引き おいろの案内で許嫁のお袖がいるとは知らずにやってきました。偶然の再会に喜ぶお袖と与茂七です。
お袖が戻ってこないので直助は騒ぎ出しますが全く相手にせずお袖と与茂七は花道へ向かいます。
直助は与茂七の格好を「目当ては提灯」と目に焼き付け激しい恨みを抱くのでした。


序幕第三場 浅草観世音裏地蔵前の場

高師直討ち入りの相談をする与茂七と庄三郎です。怪しまれないように衣服を取り替えて別れます。
これが直助の勘違いと、お袖の不幸のきっかけとなります。

伊右衛門が左門を追いかけ、お岩との復縁を頼みますが受け入れてもらえません。逆上した伊右衛門は左門に切り掛かります。



序幕第四場 浅草観世音裏田圃(たんぼ)の場

舞台上でほぼ同じタイミングで二つの殺人が起こります。
●直助が与茂七を見つけて襲撃
●伊右衛門が舅の左門にとどめをさして殺害

尾上右近さん勤めるお岩が父を探して登場です。お袖も与茂七を探してやってきました。姉妹は凄惨な現場を目の当たりにして悲しみに暮れます。
花道では伊右衛門と直助が何やら相談してしめしめ…という様子で姉妹の元に近づきます。
「敵討のため」と姉妹を騙して意のままにする伊右衛門と直助でした。



二幕目

お岩は伊右衛門の子を出産しましたが産後の肥立ちの悪さで衰弱しています。着物の衿元からもやせ細っているのがわかりました。
伊右衛門は手際よく内職の傘張りをしていますが育児と生活の苦しさに苛立っている様子です。
尾上右近さん勤める下男の小仏小平が伊右衛門の家に代々伝わる薬「そうきせい」を盗んでしまいます。小平はすぐに捕まり伊右衛門たちからリンチを受け押入れに閉じ込められます。
取り返した「そうきせい」は金貸しの利倉屋に5両(およそ50万円)で伊右衛門の借金返済のカタとして渡されました。
江戸時代の庶民にとって薬は貴重品だったそうです。
伊藤家から出産祝いと称して、お岩を伊右衛門と別れさせるための策略で毒薬が渡されます。
そうと知らずに一粒も残さぬよう大切にお岩は感謝しながら飲み干します…するとどんどん体の異変を感じるようになりお岩は床に伏せます。障子越しに、お岩の苦しむ声が響きます。
お岩の毒の計画のことは知らなかった伊右衛門でしたが、敵対する高家での出世と交換条件で、お梅との祝言を決めて家に戻ってきました。

伊右衛門の色悪(いろあく)


ここから伊右衛門の色悪の本領発揮です!
伊藤家の毒薬で顔が醜くなったお岩に酷い言葉を浴びせます。さらにお岩の着ている古い着物や赤子を病気から守るための蚊帳すらもお梅との祝言の支度金の足しにしようと奪っていきました。
お岩がこんなにもひどい仕打ちをされても耐えるのは、父を殺害した相手の敵を伊右衛門に討ってもらう為でした。許嫁の与茂七を殺害した相手への復讐のために、嫌がるお袖を説得して直助と仮の夫婦になるよう説得したのもお岩です。

お岩 鏡を前にして

しかし、あん摩宅悦(市村橘太郎)から真実を告げられ毒薬で醜くなった姿を鏡で確認するように促されますが、お岩は自分の顔を鏡でみることを拒みます。
「騙された自分が恥ずかしい」と嘆くお岩に武士の娘としてのプライドを感じました。そして醜くなってしまったことを受け入れたくない切ない女心も伝わってきました…
伊右衛門の裏切りを知って怒りが頂点に達したお岩は、伊藤家に乗り込もうと鏡をみながら身だしなみを整え始めます。母親の形見の櫛で抜け落ちる髪を眺めるシーンは大変有名です。お歯黒もぬりますが、そのとき赤子が泣き出します。宅悦に「赤子をみとけ!」と顎で指図するシーンがあります。それまで子供が第一だったお岩が「完全に伊右衛門を切った」瞬間に感じました。

そして二幕目のクライマックスでは絶命して怨霊になったお岩の呪いで伊右衛門が初夜を迎えたお梅と喜兵衛を斬殺してしまいます。



二幕目は上演時間が100分あります。「長いけど大丈夫かな?」という不安なお声を序幕終わっての休憩中に耳にしました。しかし、伊右衛門の非道っぷりや怨霊になる前のお岩さんの悲しくて凄みのあるシーンなどで逆に「あっという間だったねー」というお声を耳にしました。
私も右近さんのお岩に感情移入してどっぷりハマって観ていましたので長く感じませんでした。
そして三幕目も戸板返しや、だんまりなど東海道四谷怪談の名シーンが続きます。
さらに先週ご紹介しました大詰から最後のご挨拶 切口上(きりこうじょう)となります。
最後までサプライズ満載の東海道四谷怪談、ぜひ皆様も実際にご覧いただきたいです!

いかがでしたでしょうか?
長文になってしまって恐縮ですが6月博多座大歌舞伎の昼の部と夜の部の初日観劇レポートをお伝えしました。
博多座公式サイトにはダイジェスト動画もアップされていますのでぜひそちらもご覧ください↓


めでてえなあ 6/5-6/11


お誕生日を迎えられます歌舞伎役者さんをご紹介するめでてえなあのコーナーです。6/5から6/11がお誕生日の皆さまです。
お名前と所属 屋号をご紹介します。五十音順となっておりますのでご了承ください。


6/5 市川升三郎さん
成田屋

6/6 中村東三郎さん
加賀屋
☆博多座夜の部にご出演中です!

6/7 市川瀧二朗さん
市川門之助一門

6/9 澤村國矢さん
紀伊国屋

6/10 大谷廣太郎さん
明石屋

6/11 大谷桂三さん
十字屋

今回は6名の皆様でした。お誕生日おめでとうございます!



6/11アーカイブはこちらからどうぞ

次回は6/18(火)午前10時〜FM77.7Mhzで25分の生放送です。博多座千穐楽のレポをお届け予定です!
※権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりませんのでご了承ください

※麻の葉さん手ぬぐい 新口村
博多座売店で数量限定販売でしたが
完売となりました!

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